CHRONICLE1 声にならぬ想い
その夜、紅く滲む月が静かに現れ、運命の歯車が音を立てて動き始める。
――CHRONICLE1 声にならぬ想い
幾月が過ぎたある日の夜、次の日の狩りに備えて準備を始めた。
いつも当たり前のようにそばに居るはずのミコトが居ないのだ。
そばにいる事に慣れていたせいか少し寂しさを覚えていた。
手早く準備を終え外に出るとミコトが座って待っていた。
いつもは気安く「ゲンゾ」と呼び近づいてくるのだが、この日のミコトは違った。
『ゲ……。』と言いかけ、はっとしたように自分の頬を叩いた。
普段の呼び方を慌てて正そうとしている。
『……おじいちゃん、僕も狩りに連れてって。』
決意ある眼差しでこちらを見ている。
『どうして行きたいんじゃ?』
ミコトの目をじっと見る。
『おじいちゃんが熊に襲われたら……次は僕が助ける。』
源造の胸がわずかに痛んだ。
あの日の光景――
ミコトに伝えた“熊に襲われた”という話。
それは半分の真実にすぎなかった。
『……駄目だ。お前はまだ連れていけない。』
冷たく言い放つ。
ミコトの瞳が揺れる。
『なんで!?』
声が震えている。
『……駄目と言ったら駄目じゃ……危険すぎる。』
声が跳ねた。すぐ、己の荒さに気づく。
『なんで!?僕はもう子どもじゃない!ただ守られるだけなんて嫌だ!』
ミコトは拳を握り、言葉を飲み込む。
源造は視線を逸らし、沈む月を仰いだ――。
しばらくの沈黙。
夜風が二人の間を通り抜ける。
『おじいちゃんが一人で行ってお父さんみたいに怪我して帰ってきたらどうするんだよ!!』
語気は強いが優しさも滲む言葉が心に打ち響く。
『帰ってこれないかもしれない!そんなの嫌だよ……ねぇ……。』
ミコトの瞳に涙が零れ落ちる。
その雫が、月明かりにひときわ強く光った。
返す言葉は喉で凝り、夜風だけが通り抜けた。
『なんでダメなの……おじいちゃん。』
涙声で呟いた後、ミコトは小さく震えながら口を噛む。
『ゲンゾ……どうして。』
その呼び方に、源造の胸はさらに締め付けられた。
あの夜――達治と“あの影”が脳裏をよぎる。
真実を告げられぬ……。
もどかしい気持ちを抑え
『……駄目だ。』
声は、自分でも驚くほど震えていた。
『おじいちゃんのわからずや!』
ミコトは拳を握りしめたまま、視線を合わせることなく背を向けた。
足音が夜風に紛れて遠ざかっていく。
――ミコト……。そう、口を動かしていた。
だが……喉の奥に詰まった言葉は、月を仰ぐだけで溢れていかなかった。
それから幾日が過ぎたある日……源造は達治の部屋へ向かう。
達治の額からタオルを取り、水に沈め、絞る音が響く。
冷たさが掌を抜け、再び額へ戻す。
ミコトの足音は、もう聞こえない。
その夜はやけに長い。
――おじいちゃんの力になりたい。
――お父さんみたいに怪我したらどうするんだよ!
――帰ってこれないかもしれない!
あの叫びが繰り返し胸を打つ。
全力でぶつけてくれた気持ちを、思いやれなかった。
――ただ、ただ……。
『アレでえぇよな……達治。おまえの息子まで同じ目に合わせるわけにはいかんのよ。』
スッと立ち上がり、静かに部屋をあとにした。
夜気が胸に刺さる。
空を仰ぐ――息を整えようとしたが、そこに広がっていたのはあの月夜だった。
『……やはり、現れるか……。紅闇。』
本作をお読みいただき、ありがとうございました。
登場人物たちが抱える痛みや願い、そしてそれでも前へ進もうとする心を、物語を通して丁寧に描き続けたいと思っています。
この物語はまだ続きます。
次の章でまたページを開いていただけたら、とても嬉しいです。
この作品について
本作『Roots-紅の夜明け-』は、執筆の過程においてAIアシスタント C.O.T.O.H.A. の補助編集を受けています。
ただし核となるプロット、構成、セリフ、細部表現などはすべて作者 雁ヶ音むすび が考案・改変しています。
読者の皆さまには、どこまでがAI出力で、どこからが作者の筆かを味わっていただければ幸いです。
雁ヶ音むすびwith C.O.T.O.H.A




