Episode2【新たな生命の息吹】
月が欠けるたび、記憶の輪郭も削られていく。
忘れたくない声ほど、夜に溶けてしまう。
――それでも、人は明日を迎える支度をするのだ。
狩りの支度、祈りの支度、そして別れの支度。
ゲンゾとミコト、ひとつの夜がふたつの心を裂く。
その裂け目から、“紅闇”が静かに覗いていた。
Episode2【新たな生命の息吹】
――CHRONICLE0 歓びとの葛藤。
倅から授かりの報を受けた時には新たな“命”に涙がこぼれ落ちるほど喜んだ。
それからの月日は早いものだった。
澱んでいた世界が晴れるかのようにも感じていた……。
そして……生誕の無事を家族で喜んだ。
それだけではなく共に生き抜いている近隣の仲間たちも喜んでくれた。
それが何より嬉しかった。
倅は『親父に名前をつけてほしい』という。
「親父が涙する姿なんて初めて見た。驚きしかなかった。それなら……」と、女房から聞いた。
それが理由だった。
『そうだったな……。これからはあいつにも。』
あとに紡ぐ言葉は心に馳せた……。
――やがて幾日が過ぎ……“命”を紡ぎ希うという意味を込めて“ミコト”と名づけた。
ミコトはこの世界の中でもすくすくと育ってくれた。
家族や近隣の仲間たちからも、ミコトはたくさんの愛情を注がれた。
赤子のミコトを見た時から感じていた……生まれ持ったあの感覚。
そんな幼子はとにかく儂に懐いた。
どこへ行くにも小さな手足でついてこようとし、ウサギや鹿の狩りから戻れば、仲間の一人が抱っこしようとするも儂を見つけたミコトは真っ先に駆け寄る。
月を見上げていると、いつの間にか儂の袖を握っていた。
倅の達治が抱き上げれば泣きじゃくるくせに、儂が抱くと不思議なほど静かに涙を引っ込め、はにかんだ笑みを見せる。
そんなに儂の顔が面白いのかと思ったが……どうやら似たような感覚をミコトも感じていたのかもしれない。
ミコトが泣きじゃくると家族は『じいちゃん呼んで!』と、儂を呼ぶ習慣が当たり前になってた。
家族は『ほんま、じいちゃん子やなぁ。』
と、言えば仲間たちは『ゲンゾの孫やけぇな』と笑う中で、チョウさんだけは少し……言葉を失っていた。
自分の足で立ち、走り回ることが日常になった頃、周りの大人たちの行動と仕草や表情を真似するのが楽しくなっていた。
儂が湯飲みを片手に外で月を見ていると、横にチョコンと座り何も入ってないプラスチックのグラスを反対に持ち顔を上げ月を見ている。
仲間が儂の事を『源造、源造』と呼ぶとミコトは真似をして『ゲンゾ、ゲンゾ』と言ったり、女房が腰に手を当てて叱る姿をそのまま小さな腰に手を当てて再現する。
洗濯物の洗いをしている近隣のおばさんたちの背中を覗き込み、わざと水を跳ねさせて笑う。
ミコトが皆を元気にし、笑顔にもした。
誇らしさを胸に、ミコトは自ら手を伸ばす子になった。
狩りに行こうとするタイミングがわかるのか……ミコトが「ぼーぐ、ゲンゾ」と言って道具を運ぶ。
チョウさんが先に手を伸ばすが、ミコトは源造にだけ持っていく。
後ろでチョウさんが「お〜、今日もじいちゃんが大好きだな」とニヤリと笑っていた。
毎日の笑い声とちいさな手足の足音は、やがて力強さを増しいつの間にか、儂を見上げる瞳は幼さの奥に芯を宿し、その視線に「役に立ちたい」という色が混じりはじめていた。
本作をお読みいただき、ありがとうございました。
登場人物たちが抱える痛みや願い、そしてそれでも前へ進もうとする心を、物語を通して丁寧に描き続けたいと思っています。
この物語はまだ続きます。
次の章でまたページを開いていただけたら、とても嬉しいです。
この作品について
本作『Roots-紅の夜明け-』は、執筆の過程においてAIアシスタント C.O.T.O.H.A. の補助編集を受けています。
ただし核となるプロット、構成、セリフ、細部表現などはすべて作者 雁ヶ音むすび が考案・改変しています。
読者の皆さまには、どこまでがAI出力で、どこからが作者の筆かを味わっていただければ幸いです。
雁ヶ音むすびwith C.O.T.O.H.A




