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第二章 草原の戦い 2-1



「無理をしてまで相手に当たらずともよい、兵を分断せよ。逃げる兵は追う必要はない、わが騎士団の損傷は最少に留めるのだ」

 犬狼龍騎槍兵団の騎士長である、アンティーヌ伯カーゾフが部下に指示を出す。


 ウェッディン・サイレン家に仕える、四十代の壮年騎士だ。

 主が不在のために、代わって犬狼騎士団の指揮を任されている。


 ジョージイーの弟の、バミュール候フェリップの家老も兼ねている人物である。

 今日はここまで戦闘には直接参加していなかった、この最終決戦で初めて兵を動かしている。


「カーゾフ、なぜ戦場にわが殿はお見えになっていない。いつもなら殿がウェッディン家の総指揮をお執りになるはずではないか。おぬしなにか知っておるのではないか」

 犬狼重歩兵団指揮官のラインフォート伯ミュールヘムが、隣に馬を寄せ訊いて来る。


 本来「バミュール犬狼騎士団」の総指揮官は、ウェッディン家の次男であるフェリップが務めている。


 重歩兵団、軽歩兵団、重騎士団、軽騎士団、竜騎槍兵団、弩弓兵団、旗本隊の七兵団からなる総勢八千騎という大軍勢なのだが、今日この戦場に来ているのは申し訳ていどの重歩兵団、竜騎槍兵団の一部である千五百騎のみであった。


「しかもこんな消極的な戦い方しかせぬし、おぬしおかしいぞ」

「ミュールヘム、大きな声では言えんから耳を貸せ」

 カーゾフが同僚に囁く。


「殿は仮病を使い館に籠っておられる、上洛軍の諸侯とはなるべく距離を取りたいとお考えだ。そもそもこの戦自体殿は望んでおられぬのだが、当主であるジョージイーさまが、次期大公就任という甘言に乗せられ此度の叛乱に加担なされた故、しかたなくわれら犬狼騎士団を参加させられたのだ。殿から言われているのは、戦で武功など上げずともよい、なるべく将兵の命を守れ、そして敵の損害も少なくせよとのお達しだ。出来ればイアン殿をはじめ、敵の諸将の命を兵ともども一人でも多くお助けするよう申し付かっている」


「そ、それは一体どういうことだ──」

「しっ声が大きい、殿はヒューガンさまを信用してはおられん。戦に勝ってジョージイーさまが大公になられたとしても、ゆくゆくはウェッディン家とカーラム家は、争うようになると踏んでおられるのだ」


「なんと、大公家同士の争いなど信じられん」

「ここだけの話しだ、まだ誰にも言うなよ。戦が終わればやがて知れてしまう話しだが、ジョージイーさまとヒューガンさまとの間の密約では、いまの大公アーディン殿下を強引に退位させ、その後で一連の騒動の首謀者として処刑、リム家は根絶やしと決まっているらしい」


「そんなことが出来るのか、大公殿下を処刑・・・、三公家の一つを滅ぼしてしまうなど」

 ミュールヘムの顔がみるみる青褪めて行く。



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