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第二章 草原の戦い 1-7



「デオナルド殿、気持ちは分かるがそう力任せに突き入ってもどうにもならん。後続の本隊と連携して、再度陣形を組みなおそう」


 第八大隊の副指令レミキュスが、遮二無二前進しようとするデオナルドの前に、自分の馬を回り込ませる。


「そこをお退きください、例えこの身がどうなろうと兄の仇は必ずこの手で討つ。代々武門として生きて参ったアイガー家の矜持でございます。館の父や母、兄嫁のヴァイオレッタさま、可愛い子らの姿を思えば、わたしがこの手で仇を討たねば面目が立ちません」


「さすればこそ尚更ここは冷静にお成りなされ、このまま突っ込めば討ち死には必定。仇どもを目にすることも叶わず死んでしまうだけだ。兄上に続き貴方まで失われたら、それこそご両親の嘆きはいかほどになろうか。無駄死には武人の本懐に非ず、意地を通すだけではなく勝たねば意味はございませんぞ」


「・・・・・」

 それまで緊張と怒気で固まっていたデオナルドの顔が、さっと緩んだ。


「まるで兄上に諭されているようです。その通りですね、兄ならばここは一旦陣を再編することを選んだでしょう。わたしも郎党たちも怒りで回りが見えなくなっておりました、ご忠告ありがとうございますレミキュス殿」

 素直に頭を下げる。


「おいデオナルド、とうとう本隊のイアンさまが出陣なされたぞ。戦場に大騎士団旗が挙がった、いよいよ最後の決戦だ。俺たちもこのままじゃ埒があかん、なにせ相手の数が多すぎる。一旦退いて本隊に加わろう」

 親友である第八大隊騎馬将校のジェイムズが、駈け寄ってくるなりレミキュスと同じことを言う。


「先に突撃した、玄象騎士隊たちはどうしているだろうか──」

 思い出したかのようにデオナルドが呟く。


「恐らくあの勢いでは敵中深く入り過ぎて、いま頃は全滅しておろうな。死に花を咲かせることが出来て、あ奴らも本望であったろう」

 レミキュスが遠くを見るような目つきで、敵本陣の方を振り仰いだ。


「いきさつはどうあれ、潔い奴らであった。武人としての死にざまは見事、出来れば初めから味方として顔を合わせたかったな」

「うむ・・・」

 ジェイムズの言葉に、複雑な面持ちでデオナルドが頷いた。


「よし、ジェイムズ兵たちを一旦後退させろ。第五大隊にも同じく伝えるんだ、イアンさまと合流する」

 レミキュスが指示を与える。


「はっ早速に、では後程本隊でお会い致しましょう」

 ジェイムズは各将兵にそのことを伝えるために、駈け去って行く。


「いよいよ最後の戦いですね、できればワルキュリアのヴィンセントの首をこの手で取りたいものです。その後はイアンさまとともに討ち死にするも本望、見事叛逆者どもに武人の散り際を見せてくれましょう」

 デオナルドが、悲壮な覚悟をレミキュスに告げる。


「いやいや、わたしはまだ敗けるつもりも死ぬつもりも毛頭ございませんぞ。戦とは最後の瞬間までなにが起こるか分からぬもの、わたしはこの戦に勝つつもりでおります。いまさらなにをと笑われますかな、デオナルド殿」

 一瞬デオナルドは啞然とした表情で、目の前の年上の武人の顔を見詰めていた。



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