第三章 バミュール邸での密議 4-3
「お前ダイレナのために──、いや、その前にわたしがヒューガンの言葉を聞き流していたら、こんな事態にはなっていなかった。すまないバラード――」
「いや、多分それは切っ掛けに過ぎなかったのだろう。日頃からの自分の出身に関するあれこれの誹謗中傷が、心の中に溜まっていたんだ。その鬱憤をつい暴力という安易な方法で晴らしてしまった、所詮は自分で自分を律することが出来なかったんだ」
「いや、わたしのせいだ。わたしのしたことはヒューガンとなんら変わらない、サイレン大公家という権力を背景に、我を通していただけだ。お前は人からなにを言われようと耐えていた、あの頃お前からは愚痴の一つも聞いたことはなかった。それに引き換えわたしは正義を振りかざして、自分の心のままに振舞っていたんだ。これでは軽蔑していたヒューガンとなんの変わりもない、その結果がお前の一生を台無しにしてしまった。あの日ヒューガンの言葉を黙殺していたら──、バラード、わたしはどう償えばいい」
「いまさらそんなことを言ってどうする、あの日のことがなくても、遅かれ早かれわたしは我慢の限界を超える時が来たはずだ。これはわたしが自分で仕出かした人生だ、お前が気に病むことはない。もしお前がどうしてもわたしに償いをしたいというのなら、此度の戦をわたしたちに協力して、トールン軍に勝たせてやってはくれんか。ご子息の情報ではお前も叛乱上洛軍のやり方には反対していると聞いた。とにかく話しを聞いてくれ、互いの利害が一致するのならば手を取り合えるはずだ」
クエンティの目に強い光が宿り、旧友フェリップに語り掛ける。
「まずはお前がどんな策で今後に臨もうとしているのかを知りたい。正義とは程遠く、間違ったことかも知れんと言ったそうだが、お前はなにをしようとしている」
友の言葉に頷きながら、重たい口を開く。
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