第三章 バミュール邸での密議 2-2
「仕方がないではないか、大公ではなくなったが、カーラム家はいまでも大きな力を持っている。そのカーラム家にザンガリオス、ワルキュリア両家までもが加担しているんだ。逆らえばわがウェッディン家も、どんな目に遭わされるか分からんじゃないか。ヒューガンがどういう性格かはお前も知っておろう」
伯父ジョージイーが、なだめるように父へ説明していた。
「わたしは納得できませんぞ、大公殿下を裏切るなど死んでも出来ぬ。それでは一族を滅ぼしてまでサイレンのために尽くしてくれた、クローネ殿とバラン家に対して申し訳が立たん」
「ご舎弟さまのおっしゃられる通りですジョージイーさま。なんとかお考え直し下され」
家令のアルファーも主人へ諫言した。
「兄上、この謀をすぐに大公殿下にお知らせしましょう。そうして宮廷と相諮って事前に手を打ち、きゃつらめの陰謀を打ち砕くのです。その先方をサイレンの名を冠するわがウェッディン家が果たしましょうぞ」
父が伯父に迫った。
「もう遅い、既にわたしはヒューガンと盟約の誓書を交わしてしまったのだ。いまさら約束を反故にしても、あの誓書がある限りわたしは宮廷から裏切り者として罰せられよう。言い逃れはできん、もう後には退けんのだ」
伯父はどこか開き直っているように見えた。
「なんと浅はかな、兄上あなたはなんと愚かな方なのですか。わたしやアルファーに一言の相談もなく、そのような大事なことを──」
父はがっくりと肩を落としていた。
「何故そんな軽々と誓書などお書きになったのですか、思慮が足りなさ過ぎますぞ。仮にもウェッディン・サイレン家のご当主ともあろうお方が、あまりにも情けのうございます――」
アルファーはあまりに考えのない主人の行動に、涙を流していた。
「其方たちはわたしを馬鹿にするのか、わたしがウェッディン家の惣領ぞ。弟や家臣の分際でこのジョージイーを軽く扱うでない。わたしとてただでそんな誓書を交わしたわけではない、この密議が成就したあかつきには、このわたしが新大公に就任することが条件なのだ。ヴィンロッドはそう約束してくれたのだ。ウェッディン家からの大公就任など六十年以上なかったことだ、どうだ驚いたであろう」
さあどうだと言わんばかりに、伯父は衝撃の言葉を口にした。
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