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第二章 草原の戦い 2-7



 ワルキュリア鉄血騎士団の「雷神シュベルタ―」は麾下の三将、霹靂のゴード、閃光のフォース、雷光のヴォンを引き連れゆらゆらと体を揺らしている。

〝酔虎将軍〟の異名通りに片手に酒の壺を持ち、時折ぐびりと口をつける。


「これから敵将イアンの首を取りに行く、諸将にもわたしと共に出陣してもらう」

「これはお珍しい。久しぶりに殿の〝日月神鉾・九文蛇〟の冴えを拝見出来ますな」

 色黒の顔を綻ばせ、ウォーホーが笑みを浮かべる。


「相も変わらずシュベルタ―殿は酒が好きなようだな、酔い過ぎて後れを取らぬようにお願い致すぞ」

「ご心配には及ばんよ大将軍殿、これが俺の日常だ。酒の一壺、二壺くらいで酔うものではない。景気づけに体が温まって丁度良いくらいだ」


 苦言を呈すバッフェロウに悪びれもせず、左手に持った鉄扇を閉じたまま目の前で振り、惚れ惚れするような満面の笑顔で応える。

 飄々とした二枚目で、戦場で酒を呑んでいるような輩のはずなのだが、どうにも憎めない不思議な所がある。


「おい、ヴィンロッドよ、戦が終われば参政権を貰うそうだな。念願が叶って良かったじゃないか、せいぜい俺や麾下の将兵たちにもおすそ分けを期待しているぞ」


「分かっている、お前には悪いようにはせん。だから皆の前では少し口に気を付けてくれぬか、わたしはお前の主なのだからな」

 自分を呼び捨てにするシュベルタ―に苦笑しながら、やれやれといった風に言葉遣いを注意する。


 このようなことには人一倍厳しいはずのヴィンロッドが、なぜか怒りもせずに逆に気を遣っている感じすらある。


「十小刻(カルド)後に出陣とする、各々兵を整え待機するように」

 バッフェロウの言葉に従い、各将軍たちが自陣へと散って行く。


「お前はここに残るのだろう」

「ああ、わたしは殺し合いにはなんの役にも立たん。ここからお前たちが戻って来るのを待っているよ。くれぐれも油断するなよ、相手は死を覚悟している」

「お前に心配してもらえるとは思っても見なかった。ありがたく忠告を受け賜わって置くとする」

 そう言い残して、バッフェロウが家臣の待つ陣の方へ去って行く。



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