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第二章 草原の戦い 2-6



「ペッティーソン、いま残っている六勇将をすべてここに呼べ」

 バッフェロウが部下に下知する。


「おいヴィンロッド、ワルキュリアの風神・雷神は動かせるか」

 傍らの同僚に訊く。


 ワルキュリアの風神・雷神とは、ヴィンロッドの旗本隊を指揮する双将軍のことである。


「キンデルは上の警護に当たらせているから、動かせるのは雷神シュベルタ―だけだ」

「シュベルタ―か──、出来ればキンデルの方が残っていて呉れればよかったのだが」


「馬鹿を言え、あのお方たちの所へシュベルタ―を行かせられるはずなどなかろう」

「ふううむっ、それもそうだな。騒動が起きるのは火を見るより明らかだ」


「それよりどうしたのだバッフェロウ、いよいよお前が動くのか?」

「このへんで本当のケリをつける、俺が自らイアンの首を取る」


〝サイレンの英雄〟の異名を持つザンガリオス鉄血騎士団総騎士長バッフェロウ・ド=サッカルズ伯爵が、自ら戦場に出ることを決めたようだ。


「イアンの回りには副将である〝白亜のオリヴァー〟を始めとした各大隊指令たちが付いていよう。さらには旗本隊の〝百鬼無双のクルーズ〟がいる。こちらも駒を揃えねば互角には戦えん」


「なにも自分がやらなくとも、数で押せばそのうち討ち取れるではないか。危険を冒す必要はあるまい」

 相変わらずヴィンロッドの言葉は冷静そのものである。


「いいや、それでは多くの将兵たちの命が無駄に損なわれることになる。俺がこの手で斃すのが、一番兵を犠牲にしなくて済む。それにイアンほどの男を一兵卒の槍や弓で殺したくない、それが武人としてのせめてもの情けだ」


「いかにもお前らしいな、だが反対に自分が討たれぬようにしろよ。万が一ということもあるからな」

「ははは、俺に万が一はない。心配は無用だ」


 やがてバッフェロウの前に、将軍たちが居並ぶ。

 ザンガリオス鉄血騎士団六勇将の筆頭将軍ウォーホーを頭に、フロイ、レリウス、ロッテダムの四将が主の前で揃って立っている。



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