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第43話「その日常、崩壊開始」

カンナ:平凡な日常を愛し、平凡から嫌われた女。今作のヒロイン。

アオ:私自身は平凡なんだけど周りが放置してくれなくて。全ての元凶。今作の保護者。

ネネ:生まれたときから平和なんてどこにもない。最凶の女にしてカンナの友人。

ヴァン:お嬢様がいれば平和なんぞいらない。不憫枠一号。


 赤、朱、紅。全てが赤に包まれている。熱い赤、濡れる赤。魔力走る……朱。


「どう……して……」


 次々と俺の知る人達が倒れていく。なんの抵抗もなく、叫び声を上げることなく。途方もなく広がる魔力で大きく膨れ上がった呪いは無情に人の命を奪っていく。

 どうしてこうなった。どう考えても、どう思い出してもその理由が全くわからない。わからないが、この状況で一つわかっていることがある。


 ここは、地獄そのものだ。


 ****


「ね、ねぇアオ〜。本当にその王子様大丈夫なのぉ?」

「だーかーら大丈夫だって言ってんだろ。しつこいぞ」


 いやいや、だってわたしの魔力で解呪したって言ったって本当にできたかどうかなんてわたしにはわかんないもん。


「そりゃ、まだまだ魔法の使い方がなってないからな。もっと修行すれば呪いも祝福も視認できるし、完璧に祓うことができるだろうよ」

「それはもはや聖女の域よアオ。カンナには難しすぎるわ」


 ねぇ誰か一人でもいいからわたしに優しくしてくれない? たしかに無理だけどもさ。


「大丈夫だ、ちゃんとこの男は起きる。それよりもこの男を連れてどこに行くか。カンナの実家に戻ってもいいが男連れや私のことの説明まだしてないんだろ?」

「うん。というか何も説明できないと思う」


 特に突然鬼悪魔の執事ができたとか、空白の歴史の産物そのものを連れてるとかね。もうヤダ本当に、どうしてこうなっちゃったの。答えは鬼悪魔のせいです。知ってた。


「うーん、じゃあやっぱり起きるまでダンジョンの中で……」

「絶対に嫌だ何を言ってるんだふざけんな」

「めっちゃ早口でウケる」


 ウケる、じゃないんだよ! あそこに戻るぐらいならわたしの家のほうがまだマシだ!


「じゃあどうするんだ」

「では、私の家はどうです?」

「「……え?」」


 ****


 いやね、ネネさんが公爵令嬢だって言うことは勿論覚えてましたよ?

 たしかに最近そういう設定が活かしきれなくて普通にダンジョンもぐったりしてましたけどね? 最初なんて金と権力をフル活用して人さらったりしてましたもん。覚えてますって。


 でも、だからといって、これは……。


「デカすぎじゃない!? 家、デカすぎじゃない!?」

「そうかしら? 普通だと思うけど」

「これで普通ならわたしの家は犬小屋レベルですけど!?」


 やばいよ、思っていた以上にセレブだったよ。セレブ過ぎてここが王宮なんじゃないの? って誤解しそうになるぐらいデカい豪華だよ。この石畳にある石一つとってもわたしのご飯代より高いんじゃないの??


「ここが、公爵家本邸か」

「いえ違いますよ、アオ。ここはネネお嬢様の邸宅です。本邸はこの先にあるアレです」

「……城しか見えないぞ??」

「それですね」

「それですね???」


 こっちをアオが見てくる。大丈夫、ヴァンくんが指差す先にあるでっかくて黒っぽい感じの城しかわたしも見えない。

 というかこのでっかい屋敷がネネの邸宅、つまりは別邸が個人のお家?


「公爵家パネェ」

「久々にこのリッチさを感じたわ。マジ貴族パネェよ」


 いやわたしの家はもう少しおとなし目だから。みんながみんな城とか別邸とかすぐにポンポン建てられるわけじゃないからね? 勘違いしないで。


「失敬ね。そんなにすぐにポンポンしろなんて建てたりしないわよ。アレは今の当主の3代前に立てた城よ」

「あ、そうなんだ。じゃあの別邸は」

「アレは私がクリスマスプレゼントにねだったものよ」

「割とポンポン建ってんじゃん!!」


 このお嬢様例に漏れずブルジョワだぞ! あ、ほら後ろにいるアオが引いたような顔をしてるよ!


「もういいからさ、早く部屋に行こうぜ。もう疲れたんだけど」

「アオ別にダンジョン攻略してなかったじゃん。お菓子ずっと食べてたじゃんっ」

「ぴゅ~」


 あ、こいつ何素知らぬ顔をしてるんだ。嫌なことにはいち早く逃げて!


「待てアオ! 絶対に許さん! わたしにもお菓子をよこせ!!」

「どこで怒ってんだ!」

「先に行くからね。行くわよヴァン」

「ハイお嬢様」


 さっさと先に行こうとするネネとヴァンくんにわたしは必死で追いかける。待って! 勝手にいなくならないで! ここで逸れたら絶対に迷うから!!


 ****


「なんじゃと、それは本当なのか?」


 静かで暗い夜をそのまま招き入れたような部屋に一人の男が驚くような声をあげる。


「はい、公爵家の令嬢による情報網のせいで規制された情報しか手に入りませんでしたが、確かにあのグリモワールに封印されていた悪魔がダンジョンに向かったようです」

「巨大迷宮『栄華の夢魔』……。わざわざそんなところに向かうにはなにか裏があるに決まっておろう。……あの小娘め、惑わされおったか」


 どこからか男とは別の声が聞こえながらも驚かない男。それもそのはず、それらは王家直属の諜報員であり、その男こそこのトーラ王国の王だからだ。

 そして王が今最も関心を寄せる、いな警戒しているのは復活した悪魔。アオのことだった。


「引き続き悪魔の動向をさぐれ。それと、公爵家もな」

「はっ」


 暗い部屋の中で一人、気配を消す。ようやく一人になった部屋で王は長いため息を吐く。今までになかった未曾有の事件。二百年前の厄災が蘇ったことに冷や汗が止まらない。


「どうして、どうしてワシの時代になって……」

『――大丈夫。大丈夫よ坊や』

「その声は……」


 頭に直接響くような不可思議な声。何十にもエコーを掛け、聞くだけで思考が鈍るような優しい声に王は寄っていた眉間のシワを伸ばす。


「本当か? ワシは平気なのか?」

『ええ、あの悪魔が未だに暴れていないのであればこの国を滅ぼす気はないということ。そうしないと言うことはあの事がバレているわけじゃないという事よ。貴方に危害なんて加えないでしょう』

「そ、そうか……そうか」


 怪しさしか無いのに信じてしまうような何処か意識を酩酊させるような声に男は安堵する。それもそうだ、あの悪魔が暴れるなら封印が解けた瞬間に暴れるはず。であれば、なにか別の理由があるに違いない。

 そうこの国の王は安堵するようにソファに持たれた。


『いい子ね、坊や。大丈夫、わたくしの言うことさえ聞いていれば何も問題ないわ』

「ああ、そうだな。お前はいつも正しい……」


 そいつは安心感をほしいままにそのまま眠りにつく王を、それは侮蔑したように、そしてペットでも愛でるように愛玩の目で見つめて嘲笑う。愚かな人間、いや人形と。


『――しかし、面倒な存在ね。早めに手を打つしか無いようだわ。…………次はあなたも同じように殺してあげるわ、アオ』


 悪意の言葉によって日常は崩壊の音を立てながら崩れ始めた。それをカンナたちが知るのは手遅れになったときだ。



みんな大好き鬼悪魔編です。是非お楽しみください。

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