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第31話「その悪魔、相談役失格」

アオ:恋愛系の相談は自分では向いていると思っている。今回のことで二度と相談役はしないと誓った。ふざけんな。

ヴァン:お嬢様マシンガントークで6時間ぶっ通しで話したことのある猛者。お嬢様は俺の全てです。


 前回のあらすじ。ネネとカンナが二人っきりでデート。残ったヴァンとアオは2人で喫茶店に入った。


 私の名前はアオ・クロード。いや、家名に意味などないな。アオでいい。私はピチピチ200歳超えの悪魔だ。つまりこんなに年を取っていたのならば粋も甘いも噛み分けた立派なオトナということになる。


「……」


 眼の前の少年はヴァン。私と同じくシーレント学園に従者として通ういわゆる従者仲間。そしてなんとびっくり、このヴァンという少年。どうやら猫かぶり令嬢ことネネに惚れているらしい。一体何があったらそんな隕石が当たるよりも難しいことが起きるのかわからんが、ここは大人として暖かく見守りそしてさり気なく導いてやらないとな。


「で、そのマスクは取らないわけだ。ここ個室だぞ?」

「いえ、お気遣いは結構で」

「年上が年下を見守らんでどうする? 別に惚れるわけでも引くわけでもねぇ。飲み物も来たんだし外してしまえ」


 マスクを頑なに取らないヴァン。裏稼業のアサシンとしての顔をバレるわけにもいかない理由でつけているとしたら、私だって諦めただろう。でも眼の前の男はそういうものではないような気がする。恥ずかしいか、もしくはそういうのがカッコイイと思う年頃か。このぐらいの年頃ならあり得るかもしれんが、こうも取らないとなると意地でも外したくなった。


「さぁ、どうぞ?」

「……ふぅ」


 私が引かないことを察したのか、一瞬の殺意の後に諦めたようなため息をヴァンがつく。無駄な戦いをしないか。賢い選択だな。


「まぁ、あなたに見られたところで問題はないでしょう」


 マスクに手がかかる。するりと外された黒い布から現れたのは、口元に広がる焼印の跡だった。


「……なるほど。すまんな、無理やり」

「構いません。が、復活したばかりなのに意味がわかるのですか」

「そういう輩はみんな似たようなもんをつけるからな。それは奴隷紋だな」


 そう、ヴァンの口元に痛々しく付けられた焼印。それは奴隷が皆わかりやすい位置につけるとされる奴隷紋だった。この時代でもまだそんな物があったなんて。昔と違い、奴隷はもうこの時代では禁止されているはずだが。


「……国外用の奴隷ってわけだ」

「そうです、この国では違法奴隷の所持は重罪ですから」

「禁固刑……もしくは死刑だな。まぁ、それぐらいしたほうがいいだろうよ」


 しかしヴァンにそんな過去があったとは。なるほど惚れた理由、というよりネネと関係がある程度推測できる。


「それがきっかけで惚れたのか?」

「っ、ゲホゲホ!!」

「うわっ、こっちに吐くなよ」


 むせるように南からの輸入品であるコーヒーを吹き出すヴァン。もったいない真似をするなぁ。


「ゲホッ、な、なぜそんな……っ」

「なんだ、違うのか?」

「ちがっ、……違わない、ですけど!」

「というかあれで隠しきれると思ってたのかよ。ネネの頭をちょっとなでただけで殺気飛ばしてたくせに」

「あれは! ……自分が未熟であることは認めますよ」

「別にそういう意味でいったわけじゃないが……。ふふーん、なるほど」


 反省しながらも顔を少し赤くさせたヴァン。うわっ、青春だなぁ。いいじゃないか恋愛。若者はこういう経験を通して大人になっていくのだ。


「アイツのどこがいいんだ? 顔か?」

「何を言っているのですか。そんなワケないじゃないですか」


 ジト目でそう返してくるヴァンの呆れ。冗談じゃないか。たとえ顔が良くてもあんな何を考えても腹黒いことしかしないような女は、普通のやつじゃ相手として務まらんて。


「恩……でしたよ、最初は」

「助けてもらった?」


 やはり、私の想像通りならこの男はネネに奴隷から開放してもらったのだろう。そこから忠誠でも誓った。といったところかな。なんだ、ネネにもいいところの一つぐらいあるじゃねぇか。


「ええ……本当に、聞く気ですか? アオ様」

「ん? だからそう言っているだろう」

「そうですか……ならば」


 ドンッと机の上に置かれる紙の束。その表面の紙には「ネネお嬢様の良いところ No.1」と書かれていた。……え、ナニコレ。


「それでは、じっくりたっぷり聞いていただきましょうか。アオ様」

「あ、ちょ、まっ――」


 どうやらこのアオ、迂闊も迂闊。自分でパンドラの箱でも開けたようだ。


 ****


「おい、聞いたか。あの話」

「あ? 何がだよ」


 どこかの酒場で、見知らぬ男たちの喧騒が響く中その囁く声は紛れていた。


「何って、お前なぁ。俺達冒険者にとって情報は命だぜ? 知っといたほうがいいって」

「うるっせぇな。酒の席で説教はやめろよ」


 冒険者。この世界には魔物と似たような生き物が存在する。しかし、それらは普段から地上に現れているわけではない。魔物は《《ダンジョン》》と呼ばれるある特定の条件下で出現する遺跡にしか生息しておらず、その上魔物はそのダンジョンの中でしか生きられない。


「それで、話ってなんだよ?」

「ああ、それがよぉ。もう驚くもなんのって」


 ではなぜ冒険者が存在するのか。それはダンジョンに存在する魔力を含む石、魔石や魔力を封じる魔鋼という貴重なアイテムを手に入れるためだという。他にも魔法が練られた魔剣や、新たな魔術が書かれた魔導書などが存在し、それらすべては高値で買い取られる。

 危険な仕事であり、全て自己責任の冒険者。だがそれらの数が一定数から減少しないのは、その宝がどれだけ高値であるかを知っているからに他ならない。そんな冒険者のほんの端くれの男たちが、情報交換といい酒を飲みに来る酒場は様々な話が飛び交う。嘘も真も混ざる情報。しかしそれも楽しんで冒険者なのだ。


 そんな嘘混じりの多い話の中で、それらは異質を放っていた。


「中央の北。つまりノース領近くの鉱山村。そこの村から人っ子一人消えちまったらしいぜ」

「はぁ? それまじかよ。その村って確か相当数の鉱夫がいたよな?」

「ああ、そいつ等も残らず全員だってよ。もう不気味なほどに誰もいなかったらしい」

「ま、魔物の仕業か? ダンジョンも近くにあったよな?」

「なわけねぇだろ。魔物はダンジョンの中でしか生きられねぇって。確かにこの国の王都近くに王国最大のダンジョンがあるとは言え、ダンジョン外に魔物は出られねぇ。それこそ悪魔や鬼じゃねぇんだぞ」


 男の怯えたような言葉に鼻で笑った男は、生ぬるいエールを仰いだ。怯えていた男もその話を聞いて冷静さを取り戻したのか、同じくエールを飲み干す。


「それもそうか……それじゃぁ、なんでだ」

「さぁな、唯わかることはこういうことも珍しくないだろ。この国ではさ」


 そろそろ他の国に行くかな、なんて冗談交じりな言葉に飲み仲間である男も笑いながら同意を示す。


「そう言えばそうだったな。この国、ちょこちょこ人が消えていたよな」


 木樽ジョッキの中身はすべて飲み干され、隣には銅貨3枚が置かれていた。

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