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[超短編] 5分でクスッ♪

ランドセルの自由

作者: まえのそら

来年、小学生になる花南は、父と母と一緒にランドセルを選びに来ていた。

色々と目移りしていく中、花南が最終的に選んだランドセルはどんなものだったのか。


結末は、ちょっとだけ切なくて、なぜかクスッと笑ってしまうかもしれません。


「みなさんは、何色がお好みですか?」


「みなさんは、派手な物とシンプルなもの、どちらがお好みですか?」


来年小学校へと通う6歳の花南かなは、両親に連れられ大きなランドセル売り場に立っていた。


立っていていたというより、ピョンピョンと跳ね回り、まるでサーカスでも見にきているかのように、あちこちを見回している。


「お父さん、お母さん、あっちの方が可愛いのいっぱい付いてるー♪」


花南かなは、2人の手を引っ張りながら動き回る。

母親は、値札を見ながら父親に言った。


「値段は、全く可愛くないね……」


花南かなの表情とは違い、両親の顔は曇りがちに見えた。


それも当然だった。


両親が子供の頃には、男の子は黒、女の子は赤がほとんどで、価格も1万円ほどだった。

それが近年みるみるうちに価格は上がり、今ではオーダーメイドになると、10万円を超えるものも少なくない。


しかし、それはある程度仕方がない事だった。


多くの場面で、B5サイズからA4サイズが支流となり、学校のプリントや大きめな教科書が入るようにと、サイズアップを余儀なくされたからだ。


それに伴い、耐久性アップ、背負い心地、多彩な色使い、細部にまで施させる刺繍を施された結果、現在の価格へと落ち着いたのだ。


「お母さん、やっぱりあのリボンのキラキラが付いてるの!」


花南かなは、1番上に飾られた、紫色のランドセルを指差した。

すでに、候補のランドセルを父親は2つ抱えていたので、3つ目は母親が手に取り、花南かなに背負わせてみせた。


「これ! 絶対、これにするー!」


花南かなの心は決まった。

売り場で1番と言えるほど、キラキラと輝く装飾が施された人気モデル。


両親も娘の喜ぶ顔に、まんざらでもない様子だったが、最後に母親が、指差しながら冗談めかして言った。


「お母さんは、やっぱりあれが良いと思うなー」


売り場の隅に追いやられた小さなスペースには、赤くてシンプルな、昔ながらのランドセルが置いてあった。


そう、それが私。


もう散々迷い、やっと娘が決めたのだから、今更、私をそんな冗談に使うのはやめてほしい。


「私の自由はどこにあるのだろうか?」


結局、花南かなは、キラキラのランドセルを背負い、それ以上にキラキラのランドセルカバーを買い足して帰って行った。

少しでもお楽しみいただけましたでしょうか?

よろしければ、ページ下★★★★★

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