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末っ子王子は貧乏令嬢を見初める ~御令嬢は実は凄腕冒険者でした~  作者: 秋月真鳥
三章 王子と母の思い出

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19.エリアス兄上の結婚とエルランド兄上の婚約

 エリアス兄上の結婚式が行われる。

 王子として、弟として出席する僕は、スーツを新しく誂えていた。ロヴィーサ嬢もドレスを誂えている。

 ロヴィーサ嬢はいつも薄紫系統、僕は青系統のスーツを着ているが、それが貴族たちの中では噂になっている。


 婚約者の色を身に着けるということで仲睦まじいという意見もあれば、流行を全く知らない田舎者だという話も聞こえてくる。


 誰が何と言おうと僕はロヴィーサ嬢の美しい青い目に心奪われたのだ。青い色を着続けるつもりだったし、ロヴィーサ嬢も薄紫系統のドレスを着続けるだろう。


 王城までは魔法石で飛んで、僕とロヴィーサ嬢は王家の控室に入った。

 お腹の大きなヒルダ姉上とカスパル義兄上も、父上も、エルランド兄上も同じ部屋で寛いでいる。

 ダミアーン伯父上が入ってきて、父上に何か耳打ちした。

 父上は難しい顔をしている。


「父上、私は本気ですよ」


 エルランド兄上が口を開いて、ダミアーン伯父上と父上の話に入って行っている。

 何の話かと耳を澄ませていると、エルランド兄上が心奪われた魔族の国の宰相閣下の御令嬢の話のようだ。


「魔族の国からお祝いも兼ねて彼女が来ている」

「ダミアーン殿、その女性と会うことは可能か?」

「こちらに呼ぶのはよくないな。エルランドとの仲を勘繰られる可能性がある」

「応接室に移るか」

「その方がよさそうだ」


 王家の人間とその関係者だけしか入れないこの部屋に、まだエルランド兄上との関係が確定していない魔族の国の宰相閣下の御令嬢を入れることはできない。

 ダミアーン伯父上と父上の意見は一致しているようだ。


 場所を応接室に移すとなって、僕はロヴィーサ嬢を見た。


「エルランド兄上の恋の行方が気になります。僕も行きます」

「わたくしは……」

「ロヴィーサ嬢は僕のそばにいてください」


 応接室に向かうと、ダミアーン伯父上が長身の令嬢を連れて来ていた。

 ダミアーン伯父上も父上より年上だというのが分からないくらい若い姿なのだが、その御令嬢もとても若く見える。ダミアーン伯父上よりは年下だと聞いているが、父上よりもギリギリで年下なくらいだろうか。

 白銀の髪に薄い紫色の目で、どこかダミアーン伯父上とも僕とも似ている気がしていた。


「セシーリア・リンネと申します」


 優雅にお辞儀をして名乗る彼女、セシーリア嬢に、ダミアーン伯父上が説明をする。


「宰相家と王家は親戚で、セシーリア嬢は私の遠縁にあたる。髪の色や目の色が似ているのはそのせいだ」

「ダミアーン王太子殿下には、小さい頃に遊んでいただきました。その縁で婚約を父と国王陛下が考えていたのですが、ダミアーン王太子殿下はお断りになりました」

「結婚を考える相手ではなかっただけで、セシーリア嬢は美しい淑女になったと思っているよ」


 セシーリア嬢とダミアーン伯父上は小さい頃からの知り合いで、気心の知れた仲のようだ。そんな相手に婚約を断られてしまったら、セシーリア嬢はもう結婚はしないと心に決めるのも分からなくもない。


「我が息子、エルランドはセシーリア嬢に心を寄せている。セシーリア嬢はどう思っているのか?」

「わたくしは、王子殿下は可愛らしい方だと思っておりますよ。わたくしに花や手紙をくださるのです」

「セシーリア嬢、私と婚約してください」


 父上の問いかけにセシーリア嬢が答えると、エルランド兄上は本気の顔で婚約を申し込んでいる。

 父上は困った顔でダミアーン伯父上を見ている。


「そちらの宰相はなんと言っているのだ?」

「ずっと結婚する気のなかった娘が、興味を示している相手がいるということで乗り気だよ。だから今日、この国に結婚のお祝いを口実に送り込まれてきたわけだ」


 結婚しないつもりだったセシーリア嬢はエルランド兄上には態度を緩めている。エルランド兄上もセシーリア嬢に完全に夢中になってしまっている。

 父上は考えた末に答えを出した。


「セシーリア嬢、我が息子、エルランドと婚約してくれるか?」

「お受けいたします」


 セシーリア嬢はエルランド兄上との婚約を受けると明言した。


「魔族の国の宰相に手紙を書かねばならないな。ダミアーン殿、話を通しておいてくれるか?」

「心得た、エンシオ殿」


 年の差があっても、種族の差があっても、結婚をお互いが望んでいるのならば認める。父上の方針は一貫していた。


 エリアス兄上とユリウス義兄上との結婚式が始まる。

 白いタキシード姿のエリアス兄上とユリウス義兄上は、父上の前で誓いの言葉を述べた。


「私、エリアス・ナーラライネンはユリウス・ニスラと生涯を共にし、苦しみも喜びも分かち合って生きていくことを誓います」

「私、ユリウス・ニスラは、エリアス・ナーラライネンと病めるときも健やかなるときも、死が二人を別つまで共に生きていくことを誓います」


 エリアス兄上とユリウス義兄上の誓いを聞いて、父上が深く頷いている。


「国王の名において、二人の結婚を認めよう。エリアスは夏にはこの国の国王になる。ユリウス殿、エリアスをしっかりと支えて、二人でこの国をよりよい道へと導いて欲しい」

「全身全霊を懸けて取り組みます」

「エリアス様を支えます」


 父上の言葉にエリアス兄上もユリウス義兄上も深く頭を下げていた。

 結婚式の式典が終わると披露宴で食事会が開かれるのだが、ヒルダ姉上はお腹が大きいこともあってカスパル義兄上と共に隣国に帰って行った。

 僕は出された料理をロヴィーサ嬢と一緒に食べる。


 会場で出される料理は、全て魔族の食べる料理から毒素を抜いたものだった。僕もダミアーン伯父上もセシーリア嬢も安心して食べられる。

 披露宴の席で、父上はエルランド兄上を促してセシーリア嬢とのことを発表させた。


「私、エルランド・ナーラライネンは、魔族の国の宰相閣下の御令嬢、セシーリア・リンネ嬢と婚約することとなりました。近々婚約式を開く予定です。どうぞよろしくお願いします」


 ダミアーン伯父上を介して、セシーリア嬢のお父上に手紙が届いて、返事が早々と来たようなのだ。

 セシーリア嬢のお父上である魔族の国の宰相閣下はこの婚約に乗り気のようだった。


 料理を食べる僕の手は止まりがちである。

 ロヴィーサ嬢の料理を食べるときには、掻き込んでしまうこともあるし、口いっぱいに頬張ってしまうようなお行儀も悪いこともあるのに、今はそれほど食べたいと思わない。


「ロヴィーサ嬢の料理が食べたいです」

「帰ったら作って差し上げましょうね。何がいいですか?」

「かつ丼!」


 元気よく答えると、トンカツがお出汁を吸って、卵とじにされた味を思い出して口の中に唾が出て来る。

 上品な王城の料理は、決して不味くはなかったが、僕には物足りなかった。

 残すのは失礼なので一応全部食べはしたが、お代りはしなかった。


 デザートのアイスクリームが出て来たときに飲み物を聞かれる。

 紅茶と答えようとして、僕は思い切って別の答えを口にした。


「コーヒーを! ミルクを添えてください」

「それでは、わたくしもコーヒーにしましょうか」


 ミルクがあればコーヒーも飲めるだろうと思っていたが、出されたコーヒーのカップに対してミルクの容器がとても小さい。

 これではミルクが少なすぎてコーヒーを美味しく飲めないかもしれない。


 僕がミルクの追加を頼もうと考えていると、ロヴィーサ嬢が僕の様子に気付いて耳打ちしてくれた。


「コーヒーにミルクアイスを入れると美味しいですよ」

「え! そんな食べ方が?」

「溶けないうちに食べてくださいね」


 ロヴィーサ嬢に言われた通りにコーヒーにミルクアイスを入れて、溶けないうちに食べていく。半分溶けたミルクアイスとコーヒーが混ざってとても美味しい。

 残りのコーヒーも溶けたミルクアイスでマイルドになっていた。


「とても美味しかったです」

「アイスクリームにコーヒーをかけるデザートがあるのですよ。それを思い出して助言させていただきました」

「ありがとうございます、ロヴィーサ嬢」


 お礼を言うとロヴィーサ嬢は目を伏せて微笑んでいる。

 ロヴィーサ嬢の控えめなところも僕は大好きだった。


読んでいただきありがとうございました。

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