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末っ子王子は貧乏令嬢を見初める ~御令嬢は実は凄腕冒険者でした~  作者: 秋月真鳥
三章 王子と母の思い出

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15.新年のパーティーでの父上の重大発表

 新年の朝ご飯、僕はロヴィーサ嬢と早くに厨房に立っていた。

 ロヴィーサ嬢は大きなお椀にお汁を注いで、そこに煮た大根、お餅、菜っ葉などと、里芋を煮たものを入れて、魚を煮たものも入れて一品作っていた。

 それ以外に細々と料理の入った重箱も作っている。

 重箱には海老や黒豆、イクラや黄色い魚の卵、卵焼きやかまぼこや、野菜と鶏肉を煮たものが入っている。

 王家の食卓に並んだそれを見て父上もエリアス兄上もエルランド兄上も興味津々だった。


「これは何だ?」

「汁物がお雑煮と言って、重箱に入っているのがお節料理と言います。どちらも異国でお正月に食べられるものです」

「ロヴィーサ嬢は異国の食べ物をよく知っているのですね」

「曾祖父がどんな国、どんな世界からも料理のレシピを召喚する魔法を使えたのです」

「どれから食べるか迷いますね」


 父上もエリアス兄上もエルランド兄上も意欲的にロヴィーサ嬢の料理を食べている。ロヴィーサ嬢の料理が美味しいと分かっているからだろう。

 僕もお雑煮から食べてみたが、お出汁がとても美味しい。お餅も溶けるように柔らかく煮てあって、お出汁の沁み込んだ野菜がとても美味しく、微かにゆずの香りがするのがまた素晴らしく旨味を引き立てる。

 お節料理は僕の好きなものばかり入っていた。


 イクラを取って、卵焼きとかまぼこも取って、野菜と鶏肉の煮物も取って、ふとロヴィーサ嬢に聞いてみる。


「この黄色いつぶつぶしたものは何ですか? 魚卵ですよね?」

「数の子です。ニシンの卵ですよ」


 説明されて食べてみると、こりこりぷちぷちとした食感がとてもいい。味も程よくて、僕はお代わりして食べてしまった。

 エリアス兄上もエルランド兄上も男性で、よく食べる。

 お雑煮もお節料理もあっという間になくなってしまった。


「お雑煮はお代わりがありますよ」

「お願いします」

「私もいただけますか?」

「私も少し欲しいな」


 ロヴィーサ嬢に遠慮がなくなって来たのか、エリアス兄上もエルランド兄上も父上もお椀を差し出している。

 ロヴィーサ嬢はそのお椀にお雑煮のお代わりを丁寧に入れていった。


「僕もいいですか、ロヴィーサ嬢」

「はい、エド殿下。エド殿下でおしまいですね」


 僕にもお代りがあって、僕はホッとする。

 お雑煮もたっぷり食べて、僕は着替えて新年のパーティーに参加した。


 新年のパーティーは昼食時に行われる。

 ロヴィーサ嬢が作った料理が王家のテーブルに並んでいた。

 それ以外のテーブルでも、魔族の食べるものから毒素を抜いているので、僕が食べてしまっても問題はない。


 貴族たちが集まってくると、父上が挨拶をする。


「今年はめでたい年になりそうだ。ヒルダが第二子をお腹に宿しておる。エリアスは春に結婚する予定だ。どうか皆でヒルダとエリアスを祝ってやってほしい」


 壇上で父上が挨拶をしてから、エリアス兄上の方を見る。エリアス兄上も壇上に上がって挨拶をする。


「私は愛するユリウスと結ばれます。これまでの道のりは長かったけれど、ユリウスと二人でこの国を治めていけるように努力していきたいと思います」


 手招きされたユリウス義兄上も壇上に上がって二人で深々とお辞儀をしていた。


 新年は魔族の国でも、隣国でも祝われるので、ダミアーン伯父上もヒルダ姉上もここにはいない。

 ダミアーン伯父上がいないことも、ヒルダ姉上がいないことも、僕は少し寂しかった。やはり僕は末っ子で甘ったれなのかもしれない。


「エドヴァルド殿下、どうなさいましたか?」


 こんなときにロヴィーサ嬢は気付いて声をかけてくれる。

 僕は泣きそうになりながらロヴィーサ嬢に説明する。


「ダミアーン伯父上とヒルダ姉上がいないのが寂しいのです……。僕は甘えっ子なのでしょうか」

「エドヴァルド殿下はそれだけ、愛されて育ったということですよ。ヒルダ女王殿下からも、ダミアーン王太子殿下からも愛されていたからこそ、寂しくなる。当然のことです」

「僕を情けないと言わないのですか」

「情けなくないですよ。エドヴァルド殿下は愛しいわたくしの婚約者です」


 情けないことを言って泣き付いてもロヴィーサ嬢は優しく受け止めてくれる。僕はロヴィーサ嬢の手を取った。手を握られてロヴィーサ嬢は恥じらうように目を伏せている。


「隣国にも行きましょうね」

「そうですね。ヒルダ女王殿下はお元気そうでしたが、妊娠中ということもありますので、お生まれになってから行った方がいいかもしれません」

「はい。魔族の国にも行きましょう」

「行く前にダミアーン王太子殿下の方から、エドヴァルド殿下に会いに来てくださる気がしますよ」


 ダミアーン伯父上は自国の行事があるから今回は参加していないだけで、魔族の国の王太子殿下と思えないくらい我が国によく来ている。

 それを思えばロヴィーサ嬢の言う通り、行くまでもなくダミアーン伯父上は来てくれる気がした。


「ロヴィーサ嬢と話していると落ち着いて来ました」

「それはよろしかったです。何かお召し上がりになりますか?」

「食べたいです」


 王族の料理のテーブル近くに移動して、僕は料理を選ぶ。

 天むすがあったのでそれを食べることにした。

 おにぎりの中にぷりぷりの海老の天ぷらが入っている。噛み締めるたびにお米の甘さと天ぷらの旨味が滲み出る。

 エルランド兄上も天むすを食べていた。

 エリアス兄上はユリウス義兄上と一緒にホットドッグを食べていた。ひとが食べているのを見ると僕も食べたくなって、ホットドッグも食べたが、ザワークラウトとソーセージが挟んであって、粒マスタードとケチャップで味付けしてあって、スパイシーで美味しい。


 パーティーの最後には父上から重大発表があった。


「今年の夏を最後に私は国王の座を退き、隠居しようと思っている。結婚したエリアスと伴侶のユリウスに国王を任せる。もちろん、若い二人なので、補佐には入ろうと思っている。それまでにエリアスをユリウスをしっかりと教育するつもりだ」


 父上が国王陛下の座を退く。

 それはエリアス兄上が国王陛下になるということだった。


 この国が変わっていく。

 新しい国王陛下の元で新しい体勢が作られるだろう。

 ミエト公爵家もその波に乗って行かなければいけない。


 今年の夏からは慌ただしくなりそうだと思っていた。


 ミエト公爵家に帰ると、着替えてリラックスできる格好になる。ロヴィーサ嬢もドレスからワンピースに着替えていた。


「国王陛下がエリアス王太子殿下に国王の座をお譲りになるのですね」

「父上はずっとそうしたかったのだと思います」


 僕には心当たりがあった。

 父上は母上を失ってから、ずっと心に穴が空いたような状態だった。

 自分のお誕生日を貴族たちに祝ってもらわずに、家族だけでひっそりと行っていたのも、母上の喪に服すためだった。

 父上はずっと心に決めていたのかもしれない。


「エリアス兄上は研究課程を卒業します。それに合わせて退位を考えたのでしょう」

「エリアス王太子殿下はまだお若い。苦労することもあるでしょう」

「そこは父上が支えると思います。エルランド兄上もいますし、僕もいます」


 僕もできることがあるのならばアリアス兄上のために何でもするつもりでいた。


「宰相閣下は変わらないのですね?」

「はい、変わらないと思います。それだけは安心できます」


 父上が王位を退いても宰相は変わらずエリアス兄上を支えてくれるだろう。そのことが僕にとっても、この国にとっても救いだった。


「父上にはゆっくりとしてもらいたい気持ちがあります。これまで一人で頑張って来たのですから」


 母上を失ってもうすぐ十五年になる。父上はその期間を一人で王位にいた。

 隣りに座る母上の姿がないということは、とてもつらかっただろう。隠居してからは父上は穏やかに暮らすのかもしれない。


「エリアス王太子殿下をミエト家は支持していきましょう」

「お願いします、ロヴィーサ嬢」


 決意を固めるロヴィーサ嬢に僕は頭を下げた。

読んでいただきありがとうございました。

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