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末っ子王子は貧乏令嬢を見初める ~御令嬢は実は凄腕冒険者でした~  作者: 秋月真鳥
二章 高等学校二年生の王子

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30.僕の十四歳のお誕生日

 ロヴィーサ嬢が王城の厨房で料理を作っている。


「今日はエド殿下のお誕生日なのですから、エド殿下は手伝わないでください。わたくしが一人でやります」

「見ていてもいいですか?」

「国王陛下やお兄様方とお話ししたいのではないですか?」


 ロヴィーサ嬢は僕が父上やエリアス兄上やエルランド兄上と話しているように気を遣ってくれているようだが、僕はロヴィーサ嬢が料理をするのを見るのが大好きなのだ。


「ロヴィーサ嬢が料理をするのを見たいのです。何が出来上がるかわくわくしながら見ているのが、僕にはとても楽しいのです」


 僕が自己主張すると、ロヴィーサ嬢はそれ以上僕に父上たちのところに行くようには言わなかった。

 ロヴィーサ嬢がジャガイモを剥いている。剥いたジャガイモを茹でて、その間にミンチと玉ねぎと人参を炒めて、潰したジャガイモと混ぜていく。混ぜたジャガイモには形を整えて衣をつけて油で揚げる。

 こんがりときつね色に揚がった俵型のそれに僕は釘付けだった。


「これはなんですか?」

「コロッケです。ソースをかけて食べても美味しいし、そのまま食べても美味しいのですよ」

「味見したいです」

「一個だけですよ」


 口の中に唾が溜まっている僕に、ロヴィーサ嬢がコロッケを一つ小皿に乗せて差し出してくれる。揚げたてのコロッケを吹き冷まして食べると、外側の衣がサクサクで、中のジャガイモがほろりとしていてとても美味しい。


「今日はチーズ入りも作ろうと思ってます」

「これにチーズが入るのですか?」


 それは絶対に美味しい。

 確信していると、ロヴィーサ嬢はそれ以外にも茄子を斜めに大きく切って、その間に味付けをしたミンチを挟んで、衣をつけて揚げている。


「こっちは何ですか?」

「茄子のはさみ揚げです。油を吸った茄子がとろりとして美味しいんですよ」

「食べたいです!」

「エド殿下、お誕生日会が始まる前にお腹がいっぱいになってしまいますよ」


 ロヴィーサ嬢に止められたので我慢したが、僕は早く茄子のはさみ揚げが食べたくてたまらなかった。

 それ以外にもロヴィーサ嬢は豚肉に衣をつけてトンカツを作ったり、鳥の唐揚げを作ったりしていた。

 美味しそうな料理が山盛り出来上がって、僕のお誕生日会の会場に運ばれていく。食材の毒素は抜いてあるので、他のひとが食べても安心だったが、ロヴィーサ嬢が作ったものなので、一応僕とお誕生日に来てくれるダミアーン伯父上とロヴィーサ嬢が主に食べるものとして、テーブルは分けてもらっていた。


 お誕生日会の会場に入る前に、僕は着替えを済ませる。

 今日のために新調したスーツは水色で、夏向きの涼しい布地になっていた。ロヴィーサ嬢は薄紫の小花柄のドレスを着ている。後ろが編み上げになっていて、背中のラインがとても美しい。


 お誕生日会の会場である大広間に入ると、僕は貴族に囲まれてしまう。

 最初に挨拶に来たのはハーヤネン家のご両親とヘンリッキだった。


「エドヴァルド殿下お誕生日おめでとうございます」

「これからもヘンリッキのことをよろしくお願いします」

「エドヴァルド殿下、これからも仲良くしてくださいね」


 挨拶をされて僕は笑顔で答える。


「私のお誕生日にいらしてくださってありがとうございます。ヘンリッキと私の友情は生涯続くものだと思っています。こちらこそこれからもよろしくお願いします」


 続いてやってきたのは、エクロース家のご両親と嫡男とハンナマリ嬢だった。

 これまでは遠巻きに見ていることが多くて、ミエト家やハーヤネン家には顔を出さず、王城で開かれる僕のお誕生日でも少し挨拶をしただけですぐに姿を消してしまっていた。


「王子殿下、お誕生日誠におめでとうございます」

「ご健康で十四歳の年を迎えられたこと、心よりお喜び申し上げます」

「これからもエクロース家とミエト家の友好が続きますよう、よろしくお願いします」


 ハンナマリ嬢は僕の前に出るのがバツが悪そうだが、ご両親と嫡男はしっかりと僕に挨拶をした。これは今までになかったことだ。

 ハンナマリ嬢のことがあって、僕が知らずに脅しのようなことを手紙に書いてしまったので、エクロース家は僕に頭が上がらなくなってしまったようだ。

 これはこれで、ミエト家には利益となるので、そのまま勘違いさせておくことにする。


「お祝い、ありがとうございます。エクロース家とミエト家の友好が長く続くことを私も願っています」


 答えていると、僕は父上とエリアス兄上とエルランド兄上に呼ばれる。エクロース家のご両親と嫡男に頭を下げてそちらに行けば、ヒルダ姉上とカスパル義兄上も合流していた。カスパル義兄上はミルカを抱っこしている。


「エド、ヒルダが来てくれたよ」

「エド、お誕生日おめでとうございます。これからもたくさん食べて、たくさん学んで、大きくなるのですよ」

「はい、ヒルダ姉上!」

「ヒルダ姉上、その言い方ではエドが小さな子どものようですよ」

「わたくしにとってはいつまで経っても可愛い弟です」

「ヒルダ姉上には敵いませんね」


 エリアス兄上とエルランド兄上は苦笑しているが、僕はヒルダ姉上から小さな子どものように扱われるのも嫌ではなかった。


 料理を取りにテーブルに向かうとダミアーン伯父上も料理を取っていた。コロッケを食べてダミアーン伯父上が微笑む。


「ロヴィーサ嬢の料理は本当に美味しい。今日の料理も絶品だな」

「そうでしょう? 僕のロヴィーサ嬢は最高なのですよ」

「エドヴァルド殿下、恥ずかしいです」


 頬を染めるロヴィーサ嬢に、僕は胸を張って料理を取った。茄子のはさみ揚げを取って食べると、じゅわっと中のミンチから肉汁が出て、茄子も油を吸ってとろりとなっていて、口の中でそれが合わさる。美味しくてあっという間に食べてしまったが、二個目を取っていると、ダミアーン伯父上も茄子のはさみ揚げを取っていた。


「それ、すごく美味しいですよ」

「それは楽しみだ。いただこう」


 ダミアーン伯父上とはモンスターの肉や魔力のこもった食材で作られた料理を一緒に味わえるのだと嬉しくなる。

 ダミアーン伯父上と一緒にいると、アルマスが近付いてきた。

 僕はダミアーン伯父上に伝えなければいけないことがあるのを思い出した。


「アルマスが新しい技術を開発したのです。アルマス、ダミアーン伯父上に説明してくれる?」

「モンスターの肉や魔力のこもった食材から毒素を抜くのと同じ方法で、普通の食材を魔族の方でも害なく食べられると研究で分かったのです」

「それは本当か?」

「もちろん、魔力のこもっていない普通の食材から魔力を得ることはできません。ただ、害にならないようになることだけは確かです」


 大人になればそれほど気にしなくていいのだが、魔力が必要な成長期に普通の食べ物は魔力を満たすどころか、枯らせてしまって魔族の体には害になる。それを中和できる方法が開発されたとなると、魔族の国にとっても大きな利益なのではないだろうか。


「外国から来た人間との間に生まれた子どもは、親と食事を別にしなければいけない。それは子どもの心に影響があるだろうとずっと思っていた。親の方も子どもと同じ魔力のこもったものを食べられると同時に、子どもの方も親と同じ魔力のこもっていないものを食べられるようになるのだな」

「その通りです」

「アルマス殿、そなたは我が国のために本当に素晴らしい技術を開発してくれる。我が国で飢饉が起きた際には、魔力のこもっていない食事で命を繋ぐこともこれからは考えられるようになるだろう」


 ダミアーン伯父上が本当に喜んでいるのは明らかだった。

 そんなダミアーン伯父上をちらちらとアンニーナが見つめている。自分から話しかけられる身分にないことをアンニーナはロヴィーサ嬢の教育で学んでいた。


「アンニーナ殿、そなたの兄上の技術で我が国は救われるかもしれない」

「わたくしも、兄のアクセリも、研究を手伝いました」

「素晴らしい。これからもマンドラゴラ研究の第一人者の兄弟として頑張ってくれ」


 励まされてアンニーナは深く膝を折ってお辞儀をしていた。


 これで僕も十四歳になる。

 もうすぐ来る来年度に期待をしつつ、お誕生日を祝われていた。

これで二章は完結です。

エドヴァルドとロヴィーサの成長はいかがでしたでしょう。

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