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末っ子王子は貧乏令嬢を見初める ~御令嬢は実は凄腕冒険者でした~  作者: 秋月真鳥
二章 高等学校二年生の王子

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6.アルマスがマンドラゴラを選ぶ

 アルマスの頼みで、僕とロヴィーサ嬢は馬車を出してアルマスの家に行ったのだが、マンドラゴラを選ぶとなると僕もロヴィーサ嬢も困ってしまった。

 マンドラゴラの違いがよく分からない。


 僕が飼っている蕪マンドラゴラのエーメルと、アルマスが飼っている大根マンドラゴラの大根一号と人参マンドラゴラの人参二号と蕪マンドラゴラの蕪三号は、明らかに艶々として大きいので分かるのだが、他のマンドラゴラはどれも大きさも変わらないし、特徴があるようには思えないのだ。


「どれにラインダンスを躍らせたらいいと思う?」

「正直どのマンドラゴラも同じにしか見えないんだよね」


 僕が答えると、アルマスの声に力が入る。


「この大根マンドラゴラはカモシカのような脚をしている!」

「うーん、違いが分からない」

「人参マンドラゴラの美脚を見てくれ」

「隣りの人参マンドラゴラとどう違うの?」

「この蕪マンドラゴラの赤ちゃんのような可愛さ……これをバブみと言わずして何と言おうか!」

「バブみって何ー!?」


 アルマスがこういう性格だったなんて僕は全く知らなかった。

 驚きつつも突っ込んでいると、アルマスががっくりと肩を落とす。


「エドヴァルド殿下なら分かってくれると思ったのに……」

「お兄ちゃん、やっぱり誰も分からないよ」

「お兄ちゃんは変なんだって」


 アクセリとアンニーナはアルマスに厳しい。

 僕はアルマスを慰めることにした。


「アルマス、マンドラゴラの差を見分けられるのはアルマスの能力なんだと思うよ。それだけマンドラゴラを大事に育ててきた証だよ。それに、僕、よく考えたらカモシカの脚を見たことなかったし」

「そうか……俺だけなのか。それなら、俺が責任をもって選ばないといけないな」


 話していると、アルマスの大根マンドラゴラの大根一号と人参マンドラゴラの人参二号と蕪マンドラゴラの蕪三号が動き出していた。

 それぞれに別れて、収穫の終わった畑の上で自由に踊ったり走ったりしているマンドラゴラたちに声をかける。


「びぎゃぎゃ!」

「びぇいびぇびゅ!」

「びょいびぇ!」


 呼ばれて反応した大根マンドラゴラは大根一号のところに並んで、人参マンドラゴラは人参二号のところに並んで、蕪マンドラゴラは蕪三号のところに並ぶ。

 並ばないで遊んでいるマンドラゴラと、並んでいるマンドラゴラは顔付きが違う気がした。


「素質のあるマンドラゴラを選んでくれたのか! さすが大根一号と人参二号と蕪三号だな」


 褒められて大根マンドラゴラの大根一号と人参マンドラゴラの人参二号と蕪マンドラゴラの蕪三号は誇らし気に青々とした葉っぱを揺らしている。

 整列したマンドラゴラだけが選ばれて、声を聞かずに遊んでいるマンドラゴラは出荷する箱に詰められた。


「エドヴァルド殿下、ロヴィーサ嬢、ありがとうございました」

「いいえ、わたくしは何もしていませんわ」

「僕も何もしてないよ」

「ダミアーン王太子殿下のいらっしゃっているときに訪ねて申し訳ありませんでした」

「それは僕が教えていなかったのがいけなかったんだし」

「アルマス様のせいではありません」


 僕もロヴィーサ嬢も、ダミアーン伯父上の訪問とアルマスの訪問が被ってしまったことに関しては、仕方がなかったと思っていた。アルマスに罪はない。

 マンドラゴラも収穫したらできるだけ早く売りに出さなければいけないから、アルマスも焦っていたのだろう。


「明日の高等学校で、ヘンリッキと話してみよう」

「そうだな。よろしく頼むよ」


 アルマスに挨拶をして僕はミエト公爵家に戻った。

 ミエト公爵家に戻る頃には晩ご飯の時間になっていて、ロヴィーサ嬢と一緒に晩ご飯を作る。

 ロヴィーサ嬢は大きな海老のモンスターの殻を剥いていた。


「海老をどうするのですか?」

「今日は、これをフライにしようと思います」

「海老のフライ!」


 食べたことのない海老のフライに僕はワクワクしてくる。

 殻を剥いて頭を取った海老に衣をつけてロヴィーサ嬢が揚げていく。僕はその間、野菜と塩漬けの豚肉でポトフを作っていた。


 ポトフとキャベツの千切りとエビフライの晩ご飯。

 エビフライにはたっぷりのタルタルソースが添えてある。

 大きな海老なので噛み付くと口いっぱいになってしまう。ザクッと衣を噛んで身に歯が到達すると、ぷりっとした食感に甘みも広がってとても美味しい。

 タルタルソースをつけると尚更美味しかった。


 お行儀が悪いと分かっているのに口いっぱい頬張ってしまう僕を、ロヴィーサ嬢は咎めたりしなかった。

 ロヴィーサ嬢はナイフとフォークで切って上品に食べている。僕もそうするべきなのだろうが、美味しさに食べる手が止まらない。


 大きな海老のフライを二本食べ終わって、ポトフとキャベツの千切りを食べると、お腹はいっぱいになっていた。


「とても美味しかったです、ロヴィーサ嬢」

「よかったです。いい海老が手に入ったら、絶対に作ろうと思っていたのです」


 海老を手に入れるためにロヴィーサ嬢は魔窟に行ったのだろうか。この付近で海産物が手に入るのは魔窟くらいしかない。


「魔窟に行ってくださったんですか?」

「びしょ濡れで帰って来て、急いで着替えたんですよ。ダミアーン王太子殿下が来られる前になんとか間に合いました」


 ロヴィーサ嬢は自分が濡れるのを気にしない。

 水の中にでもざぶざぶと躊躇いなく入っていく。

 その姿が格好よくて惚れ直してしまうのだ。


「髪を乾かすのがよく間に合いましたね」

「爺やさんにお願いして、魔法を使っていただきました」


 爺やは髪を乾かす魔法も使えるようだ。

 僕の知らない爺やをロヴィーサ嬢が知っていることと、ロヴィーサ嬢と爺やが仲良くしていることに、僕は胸の底がちりちりと焦げるような感情を覚える。

 どちらに嫉妬しているのか。どちらともに嫉妬しているのか。


「爺や、僕の髪も乾かして!」

「はい、いつでも乾かします」


 これからは爺やに僕の髪も乾かしてもらう。

 それで僕は納得することにした。


 僕の髪は十二歳のときには肩くらいまで伸びていたが、今ではもっと伸びている。髪を切らないで伸ばしているのは、ダミアーン伯父上が長髪で格好いいから真似したいのだ。

 僕の髪は銀色でさらさらとしたストレートで、赤い鳥の髪飾りで後ろを纏めて、右横を三つ編みにしている。右横を三つ編みにする髪型も、魔族の国の風習で、ダミアーン伯父上とお揃いだった。


「ロヴィーサ嬢は泳げるのですね」

「本来は泳げなかったのですが、鬼の力の指輪を使うようになってから、身体能力が上がって泳げるようになりました」


 服を着たまま水の中に入っていくロヴィーサ嬢は、服に身動きを封じられて、動くこともままならないのではないかと心配していたが、ロヴィーサ嬢には鬼の力の指輪があった。

 鬼の力の指輪で身体能力が上がっているので、濡れた衣服もものともしないのだろう。

 鬼の力の指輪の有効性を改めて感じると共に、潔いロヴィーサ嬢の行動に尊敬の念が湧いてくる。


「怖くはなかったですか?」

「最初は怖かったです。慣れると、水の中でも動けるようになりました。落ち着いていれば、水面に顔を出して呼吸をすることもできるし、気を付けていれば危険はありません」


 最初はやはりロヴィーサ嬢も水の中に入るのは怖かったと言っている。


「大型のモンスターが水の中に入って逃れようとするのを、見過ごしてはおけませんでしたからね。逃せば、被害が広がります」


 特に手負いのモンスターは楽に食べ物が手に入る人里に留まりやすい。傷を負っているので気も立っているし、気付かずにひとが近寄れば危ない。

 それを考えてロヴィーサ嬢は思い切って水の中に入ってみたのだという。


「ロヴィーサ嬢は勇気があります」

「エド殿下に褒めて頂けると、とても嬉しいです」


 頬を赤らめるロヴィーサ嬢に、僕は何かできることはないかと考え始めていた。


 部屋に帰ると爺やに聞いてみる。


「僕もロヴィーサ嬢を乾かしたり、そもそも濡れなくしたりできる魔法が使えないかな?」


 そういう補助魔法が爺やは得意だし、それができればロヴィーサ嬢も少しは狩りが楽になるのではないか。


「練習してみますか? エドヴァルド殿下に能力があるのか分かりませんが」

「お願い、爺や」


 僕は新しい魔法の習得を考えていた。

読んでいただきありがとうございました。

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