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末っ子王子は貧乏令嬢を見初める ~御令嬢は実は凄腕冒険者でした~  作者: 秋月真鳥
一章 王子と冒険者の出会い

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18.ロヴィーサ嬢の指輪が盗まれる

 僕の部屋にエキストラベッドを入れてもらって、僕とアルマスはシャワーを浴びてベッドに寝転んだ。

 今日一日で色んなことがあって、僕は眠くなっていたがアルマスは楽しそうにベッドの上で踊っている大根マンドラゴラと人参マンドラゴラと蕪マンドラゴラを見ている。


「こいつら、増やすことはできないかな? こいつらがラインダンスしたら楽しいと思わないか?」


 家庭菜園に植えてあるマンドラゴラ全部を抜けばラインダンスくらいはさせられそうだったけれど、あの家庭菜園のマンドラゴラは僕と爺やとロヴィーサ嬢で食べるものだ。アルマスには上げられない。

 マンドラゴラには基本的に毒はないのならば、アルマスが農地の端で育てることも可能ではないだろうか。


「アルマス、マンドラゴラを育ててみる?」

「育ててみたい!」

「ロヴィーサ嬢に相談して、マンドラゴラの種を分けられないか話してみるよ」

「ありがとう、エドヴァルド殿下!」


 大根マンドラゴラと人参マンドラゴラが美脚でラインダンスをして、蕪マンドラゴラが小さな手足を一生懸命動かしている姿を想像すると、僕も見たくなってくる。


「マンドラゴラは薬効があるから、アルマスの家で売ったら、家計が助かるんじゃないか?」

「そうだな。育て方が難しくないのなら、育てて売るのもありだな」


 アルマスの前では僕は堅苦しい敬語を使わなくていいし、アルマスも気軽に答えてくれるのでとても気持ちが楽だ。公の場ではアルマスは僕に敬語を使わなければいけないので、練習してもらわなければ困るのだが、二人きりのときはこのままでいい。


「マンドラゴラのラインダンスを劇場で見せても収入になると思うけど」

「マンドラゴラには可能性がいっぱいだな。可愛いし、賢いし、栄養はあるし」


 うっとりと呟くアルマスの前で、大根マンドラゴラの大根一号と人参マンドラゴラの人参二号と蕪マンドラゴラの蕪三号がポーズを取っている。

 マンドラゴラの育成には詳しくないが、植えて普通に水やりをして、害虫を取り除いていれば育つようだとは分かっていた。


 僕に緑の指があるからかもしれないが、冬のこの時期でも家庭菜園は収穫物がある。収穫物をロヴィーサ嬢が調理してくれて、僕は新鮮な野菜や香草を食べられている。

 王城にいた頃は痩せていた身体も、少しお肉がついてきた気がしていた。


「明日はアルマスと何をしようか」

「夕方まではいられるからな。エドヴァルド殿下はカードゲームは好きか?」

「僕はカードゲームをしたことがないよ」


 アルマスが言ってくれるカードゲームを、僕はしたことがなかった。病弱だった僕にできたことは、安静にして本を読んでいることくらいだった。

 兄上たちと姉上も僕に遠慮して僕の前でカードゲームをしたことがない。


「ロヴィーサ様も一緒にすれば三人でできるな。もう一人くらい欲しいけど。知能戦で楽しいぞ」

「カードを出していくだけじゃないの?」

「既にどのカードが出たかを覚えておいて、自分のカードで場を勝たせることができるかを、常に計算しておくんだ」


 カードゲームは遊びでそんなに深い策略があったなんて知らなかった。

 これは勉強になりそうだ。

 僕は明日を楽しみにしながら目を閉じた。


 悲鳴が聞こえたのはそのときだった。

 ロヴィーサ嬢の部屋の方からロヴィーサ嬢の声が聞こえてくる。


「待ちなさい! 何者ですか!」


 ロヴィーサ嬢が廊下を駆けて来る前方には、見知った相手がいた。

 アルマスに嫌がらせをしようとしてことごとく失敗した貴族だ。確か公爵だった気がする。


 僕の愛するロヴィーサ嬢の部屋に夜に入り込んだのも許せないし、ロヴィーサ嬢に悲鳴を上げさせたのも許せない。


「止まれ、貴様、何をしている!」


 自分でも信じられないような怒号が口から出た。

 僕に怒鳴られて公爵家の子息はへなへなと座り込んでいる。

 駆け寄ったロヴィーサ嬢がその手から鬼の力の指輪をもぎ取った。


「鬼の力の指輪を外して、枕元に置いて、シャワーを浴びに行っていたのです。部屋に戻ったら、枕元のアクセサリー入れをこの男の子があさっていました」


 ロヴィーサ嬢の証言に、公爵家の子息が言い訳をする。


「アルマスに唆されたんだ」

「へ? 俺?」

「アルマスがしろって言ったんだよ。俺は悪くない」


 どうやら公爵家の子息のやりたいことが分かって来た。

 公爵家の子息は、僕が入学してきたときには遠巻きに見ているだけだったのに、アルマスと僕が仲良くなった後で学友に相応しいのは自分だと言ってきた。

 高等学校でもアルマスに嫌がらせをしていたが、それをことごとくアルマスに無視されていた。

 今回はアルマスを陥れようとミエト侯爵家にまでやってきて、ロヴィーサ嬢の鬼の力の指輪を盗んだ罪をアルマスに擦り付けようとしている。


 鬼の力の指輪はロヴィーサ嬢にとってお母上の形見で、モンスターを狩る際に必須の大事なアイテムである。

 それを盗んだ挙句に、アルマスに罪を擦り付けようとしたなんて許せない。

 何よりもロヴィーサ嬢の部屋に無断で入ったことが許せない。


 僕もまだロヴィーサ嬢の部屋に入ったことがないのに!


 ぐるぐると怒りと嫉妬で頭の中が熱くなってくる。

 僕の周りに竜巻のような風が起こり始めたのに気付いて、ロヴィーサ嬢が僕の元に駆け寄って来る。


「エドヴァルド殿下、相手を傷付けてはなりません!」

「許せない! ロヴィーサ嬢の指輪を盗んで、その罪をアルマスに擦り付けようとして、挙句、ロヴィーサ嬢の部屋に入ったなんて! 僕も入ったことがないのに!」

「エドヴァルド殿下はお部屋にお招きしますわ!」

「こいつはアルマスに嫌がらせをしようとしたんです。僕は見ていました」


 絶対に許せないと風の魔法を発動させようとする僕の前で、腰を抜かした公爵家の子息が泣き出している。

 風の魔法が発動する前に、アルマスが公爵家の子息と僕の間に入った。両腕を広げて公爵家の子息を庇っている。


「アルマス、何で庇うの? そいつはアルマスに嫌がらせをして、鬼の力の指輪を盗んだ罪をアルマスに擦り付けようとしたんだよ!」

「どっちも、俺は実害を(こうむ)ってないし、気にしてないよ」

「ロヴィーサ嬢の指輪を盗んだのは許せない! ロヴィーサ嬢の部屋に入ったのも!」

「ロヴィーサ様もだけど、俺も、エドヴァルド殿下にこんなやつのせいで手を汚して欲しくないんだ」


 真面目に告げるアルマスに、僕が生み出していた竜巻が消えた。

 赤毛に緑色の目のアルマスは、じっと僕を見つめている。


「エドヴァルド殿下が手を汚す価値もない相手だよ。モンスターは倒したらエドヴァルド殿下の血肉になるけど、こいつはそんなこともない」

「その通りです。エドヴァルド殿下、思いとどまってください」


 親友のアルマスと大好きなロヴィーサ嬢に言われると僕も落ち着いてくる。

 僕は自分の斜め後ろを見た。

 当然のように爺やが控えている。


「父上と兄上たちにこいつがしたことを伝えて、公爵家から処罰が行くようにしてくれる?」

「心得ました、エドヴァルド殿下」


 公爵家の子息は爺やに連れて行かれた。

 公爵家の子息が尻もちをついていた当たりの床が濡れているのは、怖くて漏らしてしまったからだろう。

 ロヴィーサ嬢が使用人に言って、片付けさせている。


「エドヴァルド殿下、わたくしのために怒って下さってありがとうございました」

「僕、怒るとあんな感じになるんですね。ロヴィーサ嬢怖くなかったですか?」

「格好よかったです」


 ロヴィーサ嬢に可愛いではなくて格好いいと言われた。

 僕は嬉しくてうきうきしてしまう。


「お休みなさいませ、エドヴァルド殿下」


 ロヴィーサ嬢が僕の前髪を上げて額にキスをしてきた。

 僕は顔を真っ赤にしてそれを受ける。

 アルマスは目を逸らしておいてくれた。

読んでいただきありがとうございました。

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