第八十一話*《七日目》戦闘は計画的にっ☆
ボスっぽいイソギンチャクのアネモネと戦闘中のリィナリティですが、みなさま、戦闘は計画的に☆
意図せず巻き込まれたら知らないですけど!
えぇ、私のことですよ!
それにしても、なんであそこで異空間に繋がって、私はこんなところに連れて来られたのでしょうか。
やっぱりキースがキーになったのかしら?
もしそうならば、キースは私のやらかしを助長させる存在ってことですね!
そうでなければ、ここに連れて来られてないと思うし!
きっかけはみんととすみれなんだけど、このふたりはキースとフーマに助けられたらしい。
……やっぱりキースが布石してるじゃないの!
ということは、キースのレベルと私のレベルを平均したらどうなる?
キースの正確なレベルは知らないけど、簡単にするために仮に四十としよう。私は十四。足して五十四。二で割ると、二十七! ちょっと適正を超えてるかもだけど、ボスだと考えれば、ま、まぁ、妥当なレベル?
ま、まさかそんな計算……してないよね?
してないと言い切れないところが怖いっ!
なんで平均レベルでクエストが発生するのよっ! おかしすぎでしょ。
……もしかしなくても、またもやこの突発クエスト、エクストラクエストなんて……言わないよね? よねっ?
も、もしかしてシステムさん、私に楽して経験値をってことっ?
いや、全っ然! 楽ではないですけどねっ?
ま、まあ、前みたいにこれでこんなにレベルが上がっていいの? ではないからいいといえばいいけど。かなり複雑な気分だけど!
それはともかく。
アネモネのHPですが、見る限りではあまり減っているように見えない。
ううむ、どうしたものか。
なにか策は……。
スキルはどれも効かないとはいわないけど、あまり効果はない。アイロン台召喚で召喚したアイロン台は相変わらずアネモネに絡んでるけど。
追加しておくか。
「『アイロン台召喚』!」
どちゃっとアイロン台が出てきて、アネモネに体当たりしてくれてる。だけどさすがはアイロン台。ダメージはほぼない。絡んで行動を阻んでくれてるくらいだ。
その間になにか有用な手はないか考えよう。
アイテムは……そういえば、買い物をしたことがないことに気がついた。
冒険者としてそれって失格じゃない?
所持金はいつの間にか増えてるけど、これはラウのときのクエストとこの間の災厄キノコでのクエスト報酬と分配金のおかげだ。
あ、あとはドゥオが稼いでくれたモンスターからのドロップ金もあるのか。
うむ、なんかどれもやらかしですね。
ということは、だ。
アネモネをどうにか倒せばやらかしでも苦労した! と少しは胸を張れる、と。
となると。
使えるもの……使えるもの……と。
あ、そういえばキノコのタマゴなんて謎のアイテム。
「な、なんじゃこりゃああああ!」
「な、なによ! いきなり大きな声を出さないでよ! ビックリするじゃないっ!」
とサラの苦言が聞こえたけど、無視っ!
今はサラに構っている場合ではないのだ!
あのですね、私のインベントリには『キノコのタマゴ』がふたつ入っていたはずなのですよ。
なんですけど、今、確認したら。
『災厄キノコの子ども』が二匹もインベントリにいるのですよ。
えと?
生き物ってインベントリに入れられるんだっけ?
いや、そこも疑問なんだけど、このタマゴ、いつゲットした?
そもそもこれ、災厄キノコの目玉だったよね? それがタマゴになったのもアレだけど、さらにインベントリで孵化してるって。
……こ、これは取り出したら最後、また倒さなければならないって……こと、に……なるのよね?
「うぎゃぁぁぁっ!」
「あんた、さっきからうっさいわよっ!」
そうはいっても、タマゴ……ではなくて! 災厄キノコの子どもたちがっ!
「か、勝手に出るなああああっ!」
今、孵化したばかりなのか、私が災厄キノコの子どもたちを認識したからなのか、そこは定かではないけど、インベントリから災厄キノコの子どもたちが飛び出たっ!
うわぁぁ。
ボスであると思われるアネモネとそのアネモネに群がるアイロン台。さらにそこに災厄キノコの子どもたちが加わって、カオス加減が止まらないのですが。なにコレ状態だ。
しかもしかも! 災厄キノコの子どもたちの放つ胞子がアネモネの表面に付着してダメージを与え始めていた!
ちょ、ちょっと待ってぇ!
なんで子どものクセして胞子出してんのっ?
あんなにリアルにこだわっているフィニメモさんのやらかしぃ?
「きのっ♪」
「のこっ♪」
しかもなぜかキノコの周りに音符まで浮いている。
いや、この音符が胞子になるの?
「きのぉ♪」
「のこぉ♪」
気合いを入れているようなんだけど、音符がついているからか、まったく気合いが入っているように見えない。
しかも音符が可視化されていて、なんか変な感じだ。
災厄キノコの子どもたちだけがフィニメモらしくないというか。
その音符なんだけど、まっすぐにアネモネに向かって飛んでいき、器用にアイロン台を避けてぶつかっている。ぶつかると胞子があたりに散り、それがアネモネの皮膚に触れると体力が削れていっているようだ。
「『乾燥』っ!」
アネモネの表面に乾燥を掛けると、胞子が発火してとんでもないことに。
『きゅわぁ』
アネモネは妙にかわいらしい声をあげているけど、騙されないっ!
それにしても、乾燥って使い方によると燃えるのね。気をつけよう。
そういえば、乾燥は使い方によっては戦闘で使えるって言われたのを今さらだけど思い出した。
対等のモンスターには無敵状態だものねぇ。ほんと、チートだわ。
アネモネの表面の一部で燃えていた火は漂っていた胞子に燃え移り、バチンバチンと爆ぜだした。
うん、これはマズい。
「サラ、アネモネからできるだけ離れて!」
「言われなくても離れてるわよ!」
うん、あいかわらずのツンだ。
私はサラの近くに行くのが正解なのか、離れた場所にいるのが正解なのか。
アネモネは今のところ動かないけど、HPが減ったら動きが変わる可能性があるから、サラを巻き込まないように離れておこう。
癒しの雨もいつの間にか止んでいたので、またもやかけておいた。雨のカーテンがアネモネの火を阻んでこちらに来ないようにと思いながら。
ちなみに、災厄キノコの子どもたちはなぜかアイロン台の上に乗って、即興ライブを開催していた。
キノコが陽気に歌い、音符が踊ってアネモネに当たるとバフンと胞子が舞い、胞子がアネモネに当たるとバチバチと音を立てて爆ぜている。
その音が演奏となり、キノコたちはますます高らかに歌い上げる。歌詞は「きの」と「のこ」なところが笑えるけど。
……なにこれ。
やらかしたを通り越して、なんと言えばいいのだろうか。
そのおかげ(?)もあって、アネモネのHPは半分まで削れていた。キノコの胞子、半端ないな!
それにしても、自分の攻撃が効かないのがとても悔しい……!
結局のところ、アイロン台とキノコたちに助けられたってのが納得いかないというか。
レベルが足りてないのだから仕方ないといえばそうなんだけど、それでも悔しいのだ!
強くなりたいって願うのは、こういうときなのだろうか。
キノコたちの即興ライブはますます盛り上がり、アイロン台が二段になっていた。
とそこで、気がついたことがある。
キノコたちの歌、アネモネにダメージを与えてない?
気のせいか、アネモネのHPが歌に合わせて削れているようなのだ。
「キノコたちの歌、継続ダメージがあるの?」
災厄キノコと戦ったとき、途中からずっと横倒しにして戦ったため、本来ならどんな攻撃を受けたか分からないのだ。もしかしたら歌があったのかもしれない。
もしなかったら、災厄キノコの子どもたちの歌はまたもややらかしなのか!




