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ゲームのレア職業を当てましたが、「洗濯屋」ってなにをするんですか?  作者: 倉永さな
《一日目》木曜日 *正式サービス開始

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第八話*【楓真視点】さすが莉那、やらかしてくれた!

 俺の一つ年上の姉の莉那は、なかなかマイペースだ。


 別におっとりしているわけではないし、空気が読めないわけでもないし、周りに合わせることも出来るのだが、気がついたらいつの間にか、莉那のペースに巻き込まれている。

 それは俺だけかと思っていたのだが、どうも話を聞くとそうではない。

 だけど、だれも莉那のことは悪く言わない。むしろ、助かっている人が多いようだった。

 この莉那のマイペースのおかげで救われたのは俺だけではないようだ。そして、俺がどれだけ救われてきたのか、莉那本人は分からないだろう。


 それは無意識のうちにやっているようで、莉那はいつもニコニコしながら首を捻っている。


 そのせいで、自他ともに認める重度のシスコンだ。


 彼女に振られてもそれほど落ち込まないのは、莉那のおかげである。


 リアルも知るキースに言わせれば、俺は色々と重症過ぎて手の施しようがないというが、仕方がないだろう、女神のような存在が身内にいるのだから。


 姉のことを女神とか言う時点で俺も終わっているという自覚はある。

 あるのだが、何度も言うが、仕方がないのだ。


 自分で言うのもなんだが、俺は優秀だと思う。

 高飛車だとか生意気だとか言われるが、それ相応に努力はしている。

 『努力できるのも才能だ』という言葉があるが、まさにそのとおりだ。

 見た目もよく産んでくれた両親には感謝しかない。


 その点、莉那は同じ遺伝子を持っているのかと思うほど、なにもかもが平均的だ。

 勉強もスポーツも見た目も、なにからなにまで、それこそ意図してやってるのかと疑うほどにだ。

 とはいえ、莉那があまりにも可愛すぎたらもてまくるだろうから、見た目はこのままでいい。


 ただ、非凡さは中身に発揮されてしまったようだ。


 前述のように、莉那は無自覚に人を巻き込む。

 さらには、ゲームにおいて、なにかとやらかしてくれる。


 俺がまだ小さいころはそれほどVRが普及していなくて、据え置き型かポータブル型のゲーム機が主流だった。

 両親もゲームが好きということで、俺の周りにはゲームがあふれていた。

 だから自然にやっていたし、莉那も一緒だ。

 とはいえ、莉那は自分がやるよりも人がやっているのを横から見るのが好きだったようだ。

 俺が実家にいたころは俺がゲームをしているとどこからともなく現れて、いつもニコニコしながら静かに見ていることが多かった。


 そんな莉那だが、たまにとんでもないことを口にしてくれる。

 とあるゲームでは、ゲームシステムを使ったとんでもプレイを見つけたり、ボスを瞬殺する技を発見したりと、ゲームの穴というか、斜め上のプレイというか、そういうものを見つけるのが得意だった。


 莉那、すごいな! と俺が言うと、はにかみながらそうでもないと言うのは、弟の俺から見たら、なんかズルいと思ってしまう。

 そんなこんなで俺の理想の女性は莉那のような人、になるのだが、これは蛇足だから置いておこう。


 莉那がすごいというのは知っていたが、俺が思っている以上にとんでもない発見の数々だったと知るのは、大学生になってゲームの動画配信をはじめてからだった。


 俺の動画投稿の頻度はまちまちで、はまったら毎日配信とかやっていたが、ネタがなければ何ヶ月も空くことなんてざらだった。

 だけど、動画の投稿を続けるうちにそこそこ名前が知られるようになり、いつの間にかスポンサーがつくようになると、それまでの気まぐれ投稿ではダメだと思い知る。


 とはいえ、そうそうネタはない。

 だからネタがないときは莉那の許可を取ったうえでだったが、昔にやったゲームのことをネタにすることがあった。

 莉那の見つけたネタの動画は、いつものプレイ動画とは比べものにならないくらいの再生数をたたき出した。

 一本目のときは偶然だろうと思ったのだが、二本目、三本目と続けていくうちに、疑惑は確信へと変わった。

 どうも莉那の見つけたこれらはほとんど知られておらず、実はとんでも情報だったのだ、と。


 結果、莉那のおかげでかなり名の知れたゲーム動画投稿者になれたわけだ。

 そんな姉なので、女神と思っても仕方がないと思うのだ。


 そして、VRがだいぶ普及してきて、動画の収入とスポンサーのおかげで機器を購入できるようになり、投稿できるゲームの幅も広がった。


 高校の時に知り合った二つ上の先輩のキースとは大学が違っても交流が続いていて、俺も人のことは言えないが、キースもかなりの廃人なのと、気があったのもあり、徐々につるむ機会が増えた。


 そうしてフィニス・メモリアのβテストのことを知り、二人してテスターになることができた。

 ここに莉那もいたらきっと、彼女はまたとんでもなことを発見してくれるだろうなと思っていたが、さすがにVR機器を貸すことはできない。


 そして、無事にβテストの終了をむかえ、本サービスの開始日がアナウンスされるかどうかといったタイミングで、俺は海外勤務が言い渡された。


 正直、フィニメモのことを思えば、拒否したかった。

 だが、これはチャンスではないかと思ったのだ。


 VR機器の海外への持ち出しは禁止されていた。

 だから売却するしかないかと思ったのだが、ふと、これを莉那に譲れば、フィニメモをやってくれるのではないかと。


 そして、莉那が知らないことをいいことに、VR機器を無事に譲渡できた。

 莉那には登録は二人出来ると言ったが、あれは嘘だ。

 そうとでも言わないと、莉那は要らないと言いそうだったから、あえて嘘を吐いた。


 あとはキースに莉那のことを託し……たくなかったのだが、信頼できるのはキースしかいなかったから、仕方がなく、だ。

 あと、莉那ならゲーム内でやらかしまくってくれるはずだから、フォロー役をお願いしたかったのだ。

 そうでもしないと莉那は途中で止めてしまいそうだったから。


 そして初日にして、ログイン直後から様々な伝説を築きあげていたなんて、莉那本人は思ってもいないだろう。


 そもそもがβテストのときに確認ができなかったレア職業を引き当て、さらには用途不明な洗濯屋なんて……。


 ちなみに運営が出したβテストの最終報告書によると、レア職業は正式版よりも百倍の確率に設定してあったそうだ。

 とはいえ、低確率には変わりない。


 それだというのに、莉那は一発で当てていた。


 これからゲームが進むにつれて、運営からはゲーム内の状況報告がされるだろう。

 たぶんだが、最初の報告書はレア職業は一名だけになりそうだ。


 莉那が動画を提供してくれる前提だが、それが報告されてから動画をアップしよう。


 あとは……キースにも報告しておいたほうがいいか?

 いや、これは莉那に聞いてからにしよう。


 俺もキースもフィニメモではそれなりに名前が売れている。

 莉那から、キースが話しかけた後に女性プレイヤーに取り囲まれたと聞いたので、キースには釘を刺しておかなくてはならないようだ。


 まったく、あいつはあいつで莉那とはベクトルの違うマイペースさだからな。

 キースのマイペースは周りを一切見ずに、本当に自分のペースでのみ動くから、フォローする俺や周りが大変なんだ。


 ……あれ、俺、そんなヤツに大切な莉那のことを託してしまったのか!


 これは失敗したかも。


 となると……。


 しばし悩んだのだが、他に思い当たるヤツがいないとか、俺、もしかしてコミュ障だったのか?


 いや、知人は多いし、気の置けない仲間もたくさんいる。

 だけどなぁ……。

 莉那を任せられるほどとなると、残念ながらキース以外に思い当たらない。


 フィニメモで知り合って仲良くなった仲間はいるが、キース以外はリアルの連絡先を知らない。


 こうなったら、しょうがない。

 俺がゲームの外で出来る最善のことをするしかないようだ。


 まったく、早く海外勤務、終わらないかな。


 誤解がないように言っておくが、別に仕事に不満はない。むしろ、楽しくて仕方がない。


 だが、ゲームは別だ!


 ……ところで、洗濯屋ってなにするんだ?

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