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ゲームのレア職業を当てましたが、「洗濯屋」ってなにをするんですか?  作者: 倉永さな
《六日目》火曜日 *リアルとゲーム内半々

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第七十二話*《六日目》これはギブギブ!





※流血表現がありますので苦手な人はご注意を※






 それにしても、とそれまで黙っていたミルムが口を開いた。


「開発の代表として来ましたが、NPCがこんなに個性豊かにしゃべり、反応しているとは」


 ……ん?


「あの、NPCってこんな感じですけど?」

「……なるほど、これがやらかしの女神か」

「?」


 洗浄屋の人たちだけではなく、あのいけ好かない村長も、ここの宿屋のおかみさんもかなり面白かったけど?


「人間となんら変わりなく受け答えしますけど?」

「あぁ、するだろう! そういう風にプログラムしたのだから! ぼくが言いたいのは()()ではなく、プレイヤーをかばうような言動をしたり、いない間でもプレイヤーの益となる行動を取るところだっ!」

「これっておかしいのですか?」

「おかしいに決まっているだろう! どうしてプログラム()の行動を取るっ?」

「AIの学習結果?」

「AI……だとっ」


 あれ、気がついてなかったのかしら?


「こ、これは由々しき案件っ! ぼくは戻ってすぐに対応するっ!」


 そう言って、ぼくっ()のミルムはふっと姿を消した。

 なるほど、端から見るとこんな感じでログアウトになるのか。


「……って、あれ? やっぱりおかしい?」

「なにか?」

「いえ、今、ミルムさんがログアウトしたとき、()()()()()よね?」

「それは当たり前の挙動ですけど」

「それが、ドゥオいわく、私の身体……アバターはここに残っていたようなのですよ」

「……それでは、試しに今、ログアウトしてもらってもよろしいですか?」

「はい」


 ドゥオの言っていることが嘘だとは思ってはないけど、ゲームの挙動的にあり得ないので、運営のフェラムに確認してもらうのが一番と思い、素直に応じた。


 ベッドに横になり、背中をしっかりつけて目を閉じる。

 するとスーッと意識が遠ざかったかのような感じがして、現実に戻ってきた。

 ログアウトしたついでにお手洗いを済ませ、もう一度、ログイン。


 戻ってくると、フェラムはものすごく険しい顔をしていた。


「さ、さすがはやらかしの女神」


 ……おまえもかっ!

 なんだよ、なんだよ! みんなしてやらかしの女神って! 今回のなんて、不可抗力だっ!


「なるほど。システム的にもリィナリティさんには強くなってほしいようですね」

「システム的にも?」

「えぇ。私たちも同じように思っています」


 なぜ?


「あの、なんで、ですか?」

「それは、システムが勝手に作った職がフィニメモ内でどういう役割を果たすのか、そして、運営と開発がより注目しているのは、どういうスキルが増えていくのか、です」

「要するに、好奇心……ですか?」

「まぁ、そんなところですかね」


 好奇心……。

 いえ、それが新しい発見につながることもあるからいいのですけどね?


「ということは、これからも監視されるってことですか?」

「まぁ、そうなりますね」


 運営に見られながらプレイって。

 ……あれ?


「あ、あの!」

「なんでしょうか」

「そのぉ、キースさん」

「あぁ。密着しすぎですね」


 やっぱり見られていたーっ!

 むっちゃ恥ずかしい! 恥ずか死っ!


「なぜ、ハラスメントブロックを使わないのです?」

「んー。なんででしょうかね?」

「……イケメン無罪」

「はい?」

「同じことをブサメンがやったら?」

「相手によるかと。別にキースさんがイケメンでもそうでなくても、中身が大切です」

「あんなに残念なのに?」

「見た目良くて中身も完璧だったら、そばにいたくないですよね?」

「……なるほど。真理(しんり)です」


 フェラムは何度かうなずくと、私に軽く頭をさげてきた。


「それでは、私はこのあたりで失礼します。なにかありましたら、お気軽にフェラムまでご連絡を。あと、シールの件は調査中ですが、分かり次第、リィナリティさんとキースさんにご連絡いたしますゆえ」


 そう言って、フェラムは消えていった。


 な、なんだか濃かった……。


「……時間は、と」


 時計を確認してみると、二十一時半。ログアウトして寝るには少し早い。


「そういえばここの宿屋、一回と言っていたけど、なにを基準に一回と言ってるんだろう?」


 たとえばだけど、休みの日は一日ゲームをすることがあるけど、ログイン、ログアウトで一回なのか、この日は払っているから何度でもなのか。

 ……うん、分からん。


「それより、ドゥオ! 結局、キノコとしか戦ってないから、他のモンスターとも戦いたいです!」

「分かった」


 ということで、夜だけどフィールドに行ってみることに。

 その前に精算が発生していたら払わないとなので、カウンターへ。

 今日も今日とておかみさんがいた。


「こんばんは」

「やぁ、人妻一歩手前さん」

「ひ、ひどい覚えられ方を……」

「名前を知らないからね」

「リィナです」

「人妻一歩手前さんはリィナというのだね」


 人妻一歩手前……。むちゃくちゃパワーワードなんですけど!

 ドゥオさんのやらかしぃ。


「あの、それで、ですね」


 そう言った後、ふと、あれ、今日もここでログアウトでいいんだっけ? と思ったけど、次の村までどれだけかかるのか分からないし、今日もここで泊まるのが一番か、と結論を出した。


「今日も先ほどの部屋をまた利用したいのですが」

「あぁ、いいよ。気に入ったかい?」

「気に入ったというか」

「あの部屋はあんたのために用意した部屋だからね。ログアウトしてもアバターは残るのさっ!」

「や、やらかしの正体はおまえかっ!」

「気に入らなかったのかい?」

「いえ……。下手したら危うくBANされていたかと」

「あっはっはっ、その心配はないよ!」


 BANしようにも()()()()らしいからその心配はないといえばないのだけど、だからといって好き放題していいわけではない。他のプレイヤー以上にいろいろと気をつけないといけない。

 そうしなければ、システムさんが私をやらかしまくるヤツに今まで以上にしてくるからだっ!


「では、今日も泊まるかい?」

「はい」

「では、チケット二枚」

「はい」


 おかみさんに渡すと、手元に残ったのは一枚。


「少し狩りに行ってきます」

「気をつけて行っておいで。帰ってきて、あたしがいなくてもお代はもらってるから、部屋を使って問題ないよ」

「ありがとうございます」


 おかみさんに見送られて、宿屋の外へ。


 宿屋を出た途端にドゥオが手を繋いできたのだけど、飛び出しませんって!


「心配症だなぁ」

「リィナはなにするか分からないから」

「もう! 失礼なっ!」


 わいわいと言い合っていたのだけど、なんだか背中がゾワリとしたので口を閉じて、周りを見回した。

 ここには私とドゥオしか()()()()のに、なぜか気配がある。

 あたりを見回してみたのだけど、見えない。


「リィナ、早く行く」

「うん」


 気になったけど、いつまでもここにいてもと思い、フィールドへと向かった。


 フィールドは夜なので暗かったけど、視界が悪いわけではない。

 マリーを迎えに行くときも世界樹の村から出てフィールドを歩いたけど、あのときも真っ暗ではなかった。

 フィニメモはとてもリアルなのだけど、こういうところはリアルとは違う……。


 ……………………。

 そ、そうだった! 私、夜目を取っていたんだ! それで夜でもこんなにはっきりと見えているのか。納得。


 ドゥオととことことフィールドを歩いて、まだ村は見えているけどそれなりに離れた、モンスターがぽつぽついるところで立ち止まった。


「ここが適正」

「おっす!」

「まだリンクはしないけど、気をつけて」

「らじゃ!」


 あ、御意! がよかった?


「リィナ、そこは御意」

「あ、やっぱり?」


 ドゥオさん、ブレないな!


 さて。

 ここにいるモンスターは人型で灰色ががった黄緑色の皮膚をしたゴブリンだ。手足と身体は枝のように細く、背の高さは私の膝より少し上くらい。

 キノコより表面積が狭いのですが、これ、当てること出来るの?


「リィナは最初、見ておく」

「ぎょ、御意」

「うん、よろしい」


 ドゥオは懐から短剣を取り出すと、逆手に持ち、ゴブリンの真上から真っ直ぐに振り下ろした。

 ゴブリンの頭にドゥオの短剣が突き刺さり血が吹き出し、そのまま倒れた。


 ひいいい、グロいっす!

 フィニメモ、自重っ! こんなにリアルにしなくていいからっ! 自重っ!


「これが一番、効率いい。今日いちにち、狩りした結論」

「ぉ、ぉぅ」


 ドゥオはとくに表情を変えることなく、短剣についた血を振り払うと、次々にゴブリンの頭に短剣を突き刺していった。

 ひぃぃぃ、ドゥオさん、怖いっ!

 端から見たら、超殺戮者! ドゥオさん、アウトっ!


「リィナ、見てないでやる」

「うっ、頭に突き刺すのは無理」

「……そうだった、リィナはノーコンだった」

「ううう、ドゥオさんが容赦なさ過ぎる」


 次に効率がよかったというゴブリンの首を切る、だけど。

 こちらもスプラッタ過ぎた。

 むしろ頭に突き刺すより血が吹き出す。


「なので、頭一発をオススメ」

「……はい」


 ドゥオが返り血を浴びていたので、癒しの雨で流しておいた。


「頭ギリギリに短剣を持っていって、一気に突き立てる」

「う……」


 リィナ、やるのよっ!

 強くなれっていろんな人から言われたでしょう?

 これは強くなるための犠牲なのよ。


「ふぁ、ふぁいとぉ~」


 気合いを入れようとしたけど、声が震えてるし、情けない声しか出ない。


「ほら、刺して」


 腕を動かすことをためらっていたら、ドゥオさんが容赦なく補助してゴブリンの頭に突き刺してくれた。

 ズブッと肉を刺す嫌な感触。

 それからすぐに引き抜かれ、ゴブリンは声を上げることなく事切れた。


「ほら、簡単」


 ぅぅぅ、簡単ではないですよ!

 手に伝う肉を刺す感触っ!

 無駄に感触がっ! 手に伝わってくるのですよ!


「ドゥオさん、ギブギブ!」

「リィナ、早すぎ」


 ドゥオはあきれていたけど、無理なものは無理っ!

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