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ゲームのレア職業を当てましたが、「洗濯屋」ってなにをするんですか?  作者: 倉永さな
《三十一日目》土曜日

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第二百八話*《三十一日目》ダンジョンに行ってみよう!

 本日は土曜日ですよ、と。

 今日は朝から頑張る予定です!

 学校は休みだし、お仕事がお休みって人も多いみたいで、久しぶりにログインのカウントを見た。


 思ったより早かったけど、今の技術でログインを待たされるってどうなんだろう。


 ……と考えていたら、いつものようにむぎゅっと抱きしめられた。

 私より先にログインをしていたからすでに来ていると思っていたから油断した。


「キースさんっ!」

「なんだ?」

「毎回言いますけど、なにもゲーム内でも密着しなくてもよくないですか?」

「ゲーム内だからこそ、だ」

「…………」


 言っても聞いてくれないのなら、仕方がないと諦めるしかない。

 ため息を吐いて、ベッドから降りる。


「今日は狩りができればいいな」

「そうですね」


 そんなことを言いながら部屋を出て、扉の前へ。


「ニール荒野、ですかね?」

「そうだな」


 鍵を開けてニール荒野へ行こうとしたんだけど。


『ニール荒野へは行けません』


 と無機質な声で扉に告げられた。


「えっ、どうしてっ?」

『本日も「ココ、使ってます」をしているので、他の狩り場をオススメします』


 扉は「ココ、使ってます」のところはだれかの口調を真似したのか、とっても嫌みったらしかった。


「それなら、今まで行っていないダンジョンに行ってみるか?」

「ダンジョン?」


 そういえばそんなものがあると聞いていたけど、どこにあるのだろうか。


「どこから行くのですか?」

「村にいるダンジョン管理NPCからだ」

「ダンジョン管理NPC?」


 そんな人、いたの?


「この村からだと、レベル三十九まで入れるダンジョンに行ける」

「へー!」


 てっきりフィールドのどこかに洞窟などがあるのかと思っていたのだけど、どうやら違うようだ。


「ダンジョンにも種類があって、ダンジョンといいつつも広いワンフロアで一時間、ひたすら沸いてくるモンスターを倒すだけ、というのもある。もちろん、通常の迷宮(ダンジョン)もあるぞ」


 さらにキースが細かく説明をしてくれたのだけど、私が不得意な迷路になっているダンジョンはどうやら地面の下にあるらしい。

 そしてそこは地上のフィールドと同じようにプレイヤーで共有になっているようだ。


「もうひとつは、パーティメンバーのみ入れる空間を一時的に生成されるというものだ。こちらはダンジョンというより、腕試し的なものになるな」

「腕試し?」

「行くと分かるが、モンスターを倒した数によってランクがつけられて、そのランクに合った報酬がもらえる」

「へー。腕試し、かぁ。……キースさん、そっちにしましょう!」

「ぉ、ぉぅ」


 私が思った以上に乗り気なことにキースが引いている。


「もっと先になると、色の魔術師の塔に登って最上階にいる魔術師と対決できるらしいぞ」

「そんなこともできるのですね」


 だけどなぁ、別に力比べがしたいわけでもないし……。


「まだ先だから、そういうのがある、という程度でいいからな」

「はいにゃ」


 ということで、私たちはどうあっても邪魔が入らない腕試しをすることにした。

 ……まではよかったのですよ。


 どうして考えつかなかったのだろうか。

 ダンジョン管理NPCの前には長蛇の列。

 なぜかって聞くのが野暮な状況だ。


『これ、「ココ、使ってます」の影響ですよね』

『明らかにそうだな』


 あいつら、どれだけ占領しているのよ。


『……あいつらが占領している狩り場のモンスターが全部十倍強くなって逆襲して欲しいわ』

『十倍なんて生温いですよ。万倍くらいにして、絶望を味遭わせましょう』


 とはオルド。


『モブモンスターはしゃべりませんが、今回だけしゃべらせて心を折らせましょう』


 とはアイ。


『あいつらのせいでリィナリティの肩が居心地悪い。早いところ排除して欲しい』


 みんな、言いたい放題である。


『この状況を考えるとやれるのならやってほしいのだが……。なんというか、それって()()だよな?』

『ズル、Deathね』

『殺すな。……やはりまたあそこで対戦して勝ってこちらの言い分を受け入れてもらおう』

『聞くと思います?』

『思わない』

『ぇっ? な、なんで、それでは』

『今回は運営に立ち会ってもらう』

『運営が立ち会えば、約束を違えた場合になんらかのペナルティを与えられる、と』

『そうだ。この様子を見ると、ベルム血盟員以外に影響が出ている。さすがにやり過ぎだ』


 まったく、どれだけ手間を掛けさせるのか。


 ということで、運営に連絡を取ろうとしたら、向こうから先に連絡が来た。

 正確にいえば、私たちに、ではなく、プレイヤー全員に対してだった。


 タイトルは『注意喚起』。

 内容は狩り場の独占は規約的に問題ないが、さすがに複数の狩り場を独占するのはやり過ぎだということ。

 複数のプレイヤーが注意をしたのにも関わらず、聞かないどころか力で排除した。

 そのことを巡って対決をして負けたのにも関わらず、さらに占領する狩り場を増やしていること。

 モラル以前の問題である、と珍しくかなりきつめの文章で書かれている。

 さらには、特定の団体のためだけにサービスを提供しているわけではないこと、まだ続けるようなら公平性の観点から該当者にログイン規制等の措置を執るとあった。


『強気に出てますね』

『よほどの数の苦情が寄せられたのだろう』


 これはご愁傷さまとしかいいようがない。

 基本は規約に違反していなければ運営からは注意がし難い。

 それなのにここまで強くいってくるということは、かなりヤバいと思う。


『すぐには対応しない可能性があるから、とりあえず一時間ほど腕試しといくか』


 運営からの勧告メールが来たものの、行列から抜ける人はいなかったので、そのまま大人しく並んでいた。

 待っている間、キースと話をしていたのだけど、アイやオルド、フェリス、イロンが次々とツッコミをしてくるので、私はずっとお腹を抱えて笑いっぱなしだった。


 そしてようやく番が来た。

 キースが選んでくれて、フッと目の前が暗くなって浮遊感。すぐに明るくなって草原のようなところが目の前に広がっていた。


『一定の時間ごとにモンスターと場所が変わるようにした』

『そんなことできるのですか?』

『一時間、同じモンスター、同じ風景だと飽きるからな』


 なにもなかった空間に一瞬でモンスターが沸いてきた。

 向こうが気がついて攻撃される前にと慌てて強化魔法を掛けた。


『わっ! いきなり! 『アイロン充て』っ! 『アイロン補強』っ! 『癒しの雨』っ!』


 この三つは戦闘するのに必須だ。特に『癒しの雨』はなくてはならない強化魔法。これに『アイロン補強』と『アイロン充て』があれば同レベルのモンスターには引けを取らない。


 イロンを掴んで、モンスターに向かって、


『『乾燥』っ!』


 モンスターたちは広い空間にまばらにいるため、さすがに一撃で一掃とはいかなかった。


『むぅ』


 運営も分かっていて(ばら)けさせてるのだろうけど、集めてドカンとやりたい。


『前に来たときは思わなかったが、バラバラだと攻撃がしにくいな』

『Deathよねっ!』

『…………。殺すのはモンスターだけにしてくれないか』

『キースさん、付き合いがいいですね』


 思わず肩を揺らして笑ってしまう。


『ボケてツッコまれないのは淋しいからな』


 あー……、うん、そうですね。


 一度に倒しきれなかったモンスターはキースがすべて処理してくれた。

 次に沸くのに時間が空くので、珍しく話ながらでも狩りが出来てしまう。


『沸き方にパターンがあると思うから、様子を見てどう狩りをするのが効率が良いのか考えよう』

『効率厨……なんですね』

『昔、フーマにも同じことを言われたな』


 ということは昔からなのか……。


『時間は限られているからな』

『そうなんですけど』

『オレのことはだいたい分かってきたと思うが、レベル上げなんてただの作業になりがちだからこそ、効率を求める』


 言いたいことは分かる。


『とても同意しますが、たまに思うのですよ。レベル上げのないRPGってアクションゲームに近いなって』

『言われてみるとそうだな。プレイヤーの腕が試される』

『そうなのですよ! 私はそちらはあまり得意ではないので、今の形がいいなぁ、と』

『それではますますオレの分析力が試されるということか』


 不敵に笑うキースにドキッとしたのは内緒だ。

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