第二百一話*《二十八日目》久しぶりにまったり狩りが出来た日
朝からフィニメモDeathっ!
そういえば、キースとフーマはβテストのとき、ふたりでは無理な狩り場がって話をしていたけど、今のところそんな狩り場に遭遇してない。どこの話なんだろう?
分からないから、聞いてみるか。
「キースさん」
「ん?」
「フーマとふたりでは無理な狩り場ってどこですか?」
「あぁ……」
そう言ってなぜか遠い目をしているのだけど、なぜ?
「ダンジョンだ」
「ダンジョンっ!」
お、なんか急にRPGっぽくなってきたぞ! って、フィールド狩りも充分にRPGなんですけどね。
なんといいますか、ダンジョン=RPG、みたいな刷り込みっていうの? そういうのがなんとなくある。
「マッピングはオレがするから心配するな」
「え? なんの話ですか」
「ダンジョン探索をするとき、マッピングが命だ。だが、リィナ、方向音痴だろう?」
「ぅ。なんで分かったのですか」
「村長の屋敷でそうだろうなと察した」
うぅ……。どうして道はすぐに姿を変えるのでしょうか……。
不思議だ。
「フィールドはソロから二・三人向けの狩り場だ。火力に自信がなければ六人でフィールドでも問題はないが、まあ、人数が増えると美味しさが減る。ダンジョンはフルパーティ向けだな。ただ、火力が高い場合は少人数で潜ることもある」
「そういえばあまり気にしていなかったのですけど、経験値とお金、ドロップってどういう仕組みになってます?」
狩りをするのが楽しくて経験値など気にしてこなかったけれど、少し前にキースが経験値効率が~なんて話をしていたことをふと思い出した。
「モンスターごとに経験値、お金、ドロップ品と設定されている。そして、パーティの人数で割られて分配される、というのがざっくりとした仕組みだ」
「えと、分かりやすくすると、モンスターAの経験値は百で、お金も百って場合、ふたりで狩りをして倒すとそれぞれが五十ずつもらえる、という認識であってます?」
「そうだ」
ただ、とキースが続ける。
「レベル差、パーティボーナスなどで単純計算はできないんだけどな」
「え、レベル差で取得経験値が違ってくるんですかっ?」
「……気がついていなかったのか?」
「気がついてないというか、気にしてなかったです」
「気にしないというより、気がつかないか」
オフラインゲームだとレベルは関係なくて頭割りだったような気がするけれど、そういえばあまりにもレベルに差があったらレベルが低い人には経験値が入らないっていう話だったような。
経験値の計算がなんだか複雑怪奇な状態になっているのだけは分かった。
「計算式、間違ってたら大惨事になる状況なんですね」
「……ちょっと待て。リィナ、検証に行くぞ」
「? あいにゃ?」
あれ、なんか踏んではいけないものを踏んじゃった?
◇
いつものごとく、ニール荒野ですよ、と。
まずはソロで同じモンスターをそれぞれ一匹狩って取得経験値を比べる。
「同じ、ですね」
「そうだな」
それを確認した後、キースとパーティを組んで、先ほどと同じモンスターを一匹だけ倒した。
『……ん~?』
単純計算だと、先ほどのソロで倒して獲得した経験値の半分となるはず。
──のだけど。
『気のせいか、半分以下のような気がする』
『奇遇だな。オレの方がリィナよりレベルが少し上だから半分より多くあるはずが、同じく半分以下だ』
今までまったく気にしてなかったけど、いつからこうなってるの?
もしかしなくても、前から?
『オルド』
『はいっ』
『経験値システム担当に設定の確認をしてもらえる?』
『ラジャっ!』
だから。
なんで私たち、プレイヤーのはずなのにバグ探しなんてしてるの……。
『これ、仕様だったら暴動ものですし、設定ミスでも暴動ですし、どちらに転んでも大事としか思えないのですけど』
『……通常運転だけどな』
ポンコツなのが通常運転って。
ほんと、大丈夫なの、この会社っ!
『お待たせしました。……大変に申し訳ございませんっ!』
あぁ、またやっちまってたのを見つけてしまったのか……。
『本来ならばパーティボーナスを足さなければならないところ、なぜか引いてました』
『えええ……』
どうして引いてるのよ。
『経験値の計算方法ですが、基礎経験値をパーティの人数で割りまして、その後にパーティボーナスを付与するような計算になっているのですが、なぜか引き算になっていたようです。なので、即、修正しました』
試しに一匹だけ倒してみると、先ほどより取得経験値が増えていた。
『運営に報告はしますけど、たぶん黙殺して終わりだと思います』
『ぉ、ぉぅ』
『なので、なにとぞ内密にお願いします』
『プレイヤーには黙っておくってのはどうかと思うが。……まあ、気がついたのがオレたちでよかったな』
それにしても、なんで引いちゃうのよ。
『それまでの積み重ねの、本来ならば得られたはずの経験値は』
『追加で付与するのは現実的ではないですから、今までの不具合と合わせてゲーム内でつかえるお詫びの品を配付して終わりかと』
『まあ、それが一番問題ないな。本来、得るはずだった経験値を割り出して追加する、という作業は想像している以上に複雑だ。断言するっ! 間違いなく間違えるっ!』
『否定どころか大きく首を縦に振って肯定するしかないのが、悔しい……っ!』
『ハハハハ……』
オルドの言葉に、乾いた笑いしか返せなかった。
『これで経験値が少しプラスになるようになったから、貯まりもよくなるだろう』
『最近、飽きてきたのと慣れでダレてましたけど、ちょっとだけ気合が入りますね』
それにしても、システム側から運営に報告って、ドウイウコトなの。
さすが、AI搭載?
……それはともかく。
キースとふたり、黙々とニール荒野のモンスターを倒していった。
なんというか、ようやく静かに狩りが出来るようになったというか。
そういえば、ベルム血盟と戦って勝ったけど、勝ったで終わりなのだろうか。
『キースさん』
『なんだ』
『昨日のベルム血盟とのことですけど、勝ちましたけど、それだけですか?』
『あぁ、それな』
キースは少しだけ攻撃の手を緩めたけれど、狩りを続行した。
私もスキルが使えるようになったらだったので、特に止めることなく続けた。
『話をしようとしたら、速攻で帰還された』
『……それで気がついたらさっぱりいなくなっていたのですね』
なんともまぁ、自分たちに都合が悪くなったら逃げるって、小物過ぎる。
『あと、最後のあたりにフィーアさんに背後の警戒をお願いしていたのは?』
『後ろから襲ってくる可能性を考慮してだったんだが、向こうはそんな余裕はなかったようで助かった』
なるほどね。
『まあ、昨日の対戦は店の前からあいつらを移動させるのが一番の目的だったから、それが成せた時点でオレたちの勝ちだった』
『そういえばそうだった』
すっかり目的が行方不明になってしまったような気がしていたけど、一番の目的はそれだった。
『ベルム血盟……というより主にトニトだな。サニがいきなりBANされて、その理由がなぜかオレたちだと信じ込んだようだな』
『なんというか、言いがかりも甚だしい話ですね』
『まったくな。……ペナルティポイントというのがあると聞いたことがある』
『運転免許のアレと同じようなものですか?』
『あぁ、その例えは分かりやすいな。そう、上限があって、それを超すとアウトってヤツだ』
『私を引っ張ったので上限を超したのですね』
『そういうことだろうな』
いわゆるペナルティポイントってのがどれだけあって、違反をしたらどれだけ貯まるのか知らないけど、BANされるってどれだけあくどいことをしているの。
『驚いたのは、トニトがサニが違反をしていたことを把握してないことだな』
『目の前でしていても、それが違反だと気がついてない可能性がありそうですね』
『ありそうだな』
なんと申しますか、怖すぎる。
『どちらにしろ、今後も絡んでくる可能性は高いからお互い気をつけよう』
『あいにゃ』
ほんと、世の中には色んな種類の人間がいるのだな、と痛感した出来事でした。




