EP:22-Hot break. 〜②〜
昨夜はお楽しみでしたね。
朝。
そんな一幕の一部始終の報告を携帯で流し見するブレード。
ふっと笑いながら、誰より早く起きたので暇だ。
一番疲れていた癖に。
まぁ、身体はある程度回復している。
後はゆっくり過ごして回復するとしよう。
先ずは煙草を吸いに中庭へ...
と、思いきや浴衣の裾をガッと掴まれる。
...このタイミング、この場所この状況、他にいない。
「おはよ、にぃ。」
「おはようアニマ、俺煙草吸いに行きてぇんだけど。」
「百害あって一利無しだからダメ。」
若干腹割った瞬間に喋りが前より流暢になった。
心の中でぐぬぬと吠えておきながら冷静な顔を作り。
「おいおい、偶にはいいだろ...至福の時なんだ。」
「代わりにアニマの頭を撫でればいい。」
「はぁ…素晴らしいアイデアだ、全く。」
仕方ない。
優しくなでなでしながら旅館内を散歩する事に。
昨日の喧騒が嘘の様に静かで。
綺麗な中庭が見える。
そして、それを眺める1人の少女の姿。
「巫女服じゃねぇんだな。」
「あ...。」
佳奈江、普通のシャツ姿。
目の前の彼が、昔よく遊んだブレードだと昨夜聞かされたばかりだ。
わからないのも無理ない、昔の彼は黒髪だった。
そして今程乱暴じゃなかった。
何があったのかはわからない。
「昨日は助かった、さんきゅな。」
「あ、いえ...私も何が何だかなのよ...」
「まぁ、わからんよな、髪紅いし。」
「まぁ...正直、全く...」
彼が13まで、ここに来ていた。
よく遊んで、色々教えてくれて。
立派な厨二病に仕立て上げた。
それはもう、癖がついてどこでもそれっぽくポーズを取ってしまうくらいに。
頭の悪い言い方だが、病的な病気...と言うべきか。
...
突如複雑な表情を浮かべ、次にはこちらを睨んできた。
が、それを察する彼。
「言っとくが、それの持続は自己責任だからな。」
「ッ!!?」
読まれているとは思わず、動揺。
彼の足元では追従する様に何度も首を縦に振るアニマの姿、まるでそういう人形の様。
というか、厨二病の意味を知っているのかこの幼女は。
と思うが、ただの幼女ではない。
昨夜の件が示している、自分がずっと突っかかって来た少女もそうだ。
「ブレードさん...」
「あん?」
彼と親しそうだった。
彼なら、何か。
と、聞く前に自分の心情を察したのか。
「何について聞きたい?」
なんて、先手を打ってきた。
そういえば昔から異常に察しが良かった...異常に。
せっかくだから、自分がやたら追いかけていた少女の事を。
彼が来なくなった時も、彼女はこの近辺でいつもあの服を着ながら巡っていた。
まぁ、そんな奇行ばかりなので学校でも友達ができず。
一人遊びするしかなく、森の中とか不思議そうな場所は何度も行き来していた。
特に例の寺院跡はお気に入りの場所だった。
"彼女"がいきなりフッと浮き上がる様に現れるまでは。
「あのゆう...」
「あいつは寺院跡にある祠の付喪神兼この地の土地神だ。」
「...へ?」
速攻で聞きたい事を言われた上に、内容が内容だ。
神様...彼女が?
自分はとんでもない相手に喧嘩を売ってしまっていたのではないか?
その通りである。
尤も、初雪の方は嫌がってもそこまで嫌悪を抱いてないだろうが。
なら、昨夜彼女と力を合わせたそこの彼女は?
…ひょっとすると。
「じゃ、じゃあ...そこの娘は...?」
「知らん。」
さっきと反応違う。
態度180度回転。
「え、でも昨日...」
「知らん、知らんと言ったら知らん。」
「だけど...」
「知らんので今からあの雪の上でプロレスしようぜ。」
「アニマ、レフェリーやるー。」
と言いながら2人で自分を持ち上げて運び始める。
身長差が激しいの激しく斜めに運ばれている。
じゃ な く て。
「ちょ、マズい事聞いてしまったなら謝りますから待って待ってお願い待ってなのよー!!」
その後、盛大なジャイアントスイングを食らった。
うん、昔はここまで暴力乱心じゃなかったのに。
どっちかと言うとクールかっこいい系だったのに。
けれど、久しぶりに会えたのは嬉しい。
こうして遊べたのも...嬉しくある自分もいる。
けどめっちゃ痛い。
複雑な笑顔を浮かべて雪のクッションに沈む佳奈江だった。
うん、やっぱり痛い。
スッと引いたけど。
身体を洗いに行った佳奈江と別れ。
そろそろ戻ろうか...と、思いながら自販機前を通ると人影が2つ。
ジュリアスとカノンだ。
ジュースでも買っているのだろうか。
「あ、おはよう兄貴、アニマちゃん!」
「アニマちゃん、お兄ちゃん、おはよう。」
「おう、おはよう。」
「おはよー。」
「どうしたよ2人で...しっぽりしたのか?」
「へ?」
「な、ななな何言ってるの!!?」
しっぽりの意味がわかる者とわからない者。
そんな反応の違いを見てニヤりとする男1人。
「何だカノン...しっぽりの意味知ってんのか?」
「え、い、いや...その...」
見るからに狼狽えるカノン。
まぁ、知っている。
実はムッツリな彼女はそういう"ウフフ"なサイトも巡回している訳で。
知識だけは豊富...なんて一般的羞恥心を持ち合わせている分には恥ずかしい訳で。
「知ってるの、カノン?」
が、隣の彼は本当に全くわからない様で。
彼とは同年齢だった筈なのだが...
まぁ、"しっぽり"だなんて曖昧な隠語じゃ理解できないのも無理は無い。
「騒がしいのよ...?」
そこに、シャワーを浴びて来たばかりの佳奈江が合流。
ちゃっかり巫女服を着てしまっている辺り、病気の進行度合いは深刻だ。
「なぁに、そこの2人がしっぽりやっただけの話よ。」
「なッ...」
「やってないわよ!?」
というか、佳奈江も意味がわかるらしい。
ムッツリ3号、ブレードは脳内で勝手にそう名付けた。
ちなみに2号は目の前のピンクで、1号はソニアである。
あれはもう...見るからに。
と、想いを馳せる事5秒。
「朝からうるさいの。」
新たな乱入者...初雪の登場。
「この2人がしっぽりetc.」
と、何度目かのジョーク。
うん、自分でもしつこいと感じて来たが敢えて。
幼女に何を言ってるんだって?目の前にいるのは土地神という名のロリババアである。
とか言ったら不思議な力で殺されそうだ。
ともかく、先程の自分の言動に対して彼女は。
「あぁ、セッ〇スしたの。」
なんて予想外のストレートを鬼速球で投げ返してきた。
おかげでブレードは爆笑を抑え込むのに腹が秒で痛くなる。
が、対照的に先程からそのワードを間接的に避けていた女子2人は先程より顔を真っ赤にする。
そこからテンパり過ぎて言語にならない言語をあたふた叫んでしまう訳だが。
対してジュリアスは呑気に。
「あぁ、"しっぽり"ってセッ〇スの事なんだ!!」
なんて笑顔でほざいたので女子2人によるダブルアッパーカットを食らったジュリアスだった。
白目を剥いてそこに倒れ伏すジュリアスを見て初雪。
「やれやれなの。」
と、この一幕も全部冗談だと説明した事で終息。
この男に襲い掛かりたい女子2人だが返り討ちになるのが見えているから何もできない。
対してジュリアスは何も感じていない様子、将来の心配度合いが益々上がる一方だ。
なんて、喧騒に初雪が頭を抱えていると。
鼻腔を擽る良い匂い。
そして自己主張し始める腹の虫。
「お腹空いたの。」
そろそろ皆起きて、朝食の時間だ。
ジュリアスは超ピュアな子です。




