EP:21-Do you want to dance? 〜③〜
初雪が抱えるモノ。
が。
再び湧き上がるドス黒い気配。
そして鋭い風切り音。
反射的に抜刀すると、尻尾が伸びてきていた。
が、斬った筈なのに、再生している。
今も尚、再生していく。
「びっくりしたなぁ...」
爆散した筈なのに、再生している。
「久しぶりにここまでやられちゃったよ...」
「自己再生持ちかよ...。」
久しぶりの再会で知る、知りたくなかった事実。
特にこのタイミングでは。
やっぱり、"黒"...魔人と同等の力をぶつける必要があるのだろうか。
それもまた体力を減らしながら。
わからないが、縋るモノは他にない。
「これでファイナルラウンドにしてくれよ、坊や...俺面倒になって来たから。」
強がりだと見せぬ様に吐きながら、再度対峙する。
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談話室にて。
「むふー。」
投げ渡した鞘が役に立ってご満悦のアニマ。
隣でより濃いドヤ顔を浮かべる織江。
彼女が鞘を取り出したのである。
ブレードの本来の戦闘スタイルが抜刀術だという事を知っている。
本来、ここに旅行に来る際はその鍛錬も兼ねていた為。
が、普段見せていなかったのでスティーヴ以外は驚いている。
「坊ちゃん、本来あの方が強いのですが、A・Wで行うと中々消費が激しいそうで。」
インペリアルは所謂刀身その物に魔力を込めて振るう。
鞘に納めるとそれが即時完全充填された状態で触れるのだが、魔力消費が激しいので。
普通の刀ならまだしも、インペリアルだと短期決着型の戦闘スタイルになるのだ。
尤も、ポロフの自己再生が発動した今、その優位性も消失気味だが。
そして、初雪は別の事も気になった。
自分の姿を見る度に突っかかって来たあの娘...佳奈江の姿が見当たらない。
「あの小娘はどこなの?」
初雪が呼ぶ"小娘"に、直ぐピンと来た織江は。
「あの娘ならあそこですよ。」
指差すのは押入れ。
落ち着いて耳を澄ますと何やらぶつぶつ聞こえる。
何だと疑問を抱くも即座に開ける初雪。
「あんなの無理怖い死にたくない嫌だ怖い怖い怖い…」
そこでは頭を抱えてがくがく震えて縮こまる佳奈江の姿。
純粋に極度の危険が傍にあるのは初めてなので、怯えて泣きじゃくっている。
自分が弱そうに見えたのか、初対面の時から幽霊!幽霊!と突っかかって来た癖に。
けれど初雪が彼女を苦手としているのはそれだけが理由じゃない。
かつて昔、自分に|"初雪"《この名前》を授けた人間と顔立ちがそっくりだからだ。
ずっとずっと昔の話...亡くなったのもずっと昔。
大好きだった、その人が。
その人と重ねてしまい辛いから苦手だったのだ。
けど、そうも言ってられない。
こうして泣いてる顔を見ているとこっちも悲しくなる程に、その人を思い出すからだ。
そこで初雪が思い出したのは、食事の時にブレードから聞いた話。
未知の力への憧れ。
...これしかない。
全てを収束させる為の一手。
「ねぇ。」
「な、わ、ひゃっ...」
口も回っていない。
が、この際どうでもいい。
彼女の腕を強く掴んで。
「お札、見せてなの。」
「え、えっと...」
「見 せ て な の。」
語気を強めて言うとより怯えた様に札を取り出し、差し出す。
出鱈目だ...何の力も無い文字の羅列。
だから、自分の指を強く噛んで。
溢れた血でその文字に少し書き加える。
何をする気か理解できず、混乱がより強まる佳奈江を他所に。
「...アニマ、来てなの。」
「あい。」
呼ばれたアニマは初雪の隣に立ち。
2人揃って両手を札に翳す。
すると札に掛かれた文字が光を纏い、明滅し始める。
「こ、これは...?」
「特別な力、込めてあげたの。」
「え...?」
まだ理解が追い付いてない彼女に続けて言う。
「このままじゃあの男は負けるの...あなたが助けるの。」
「わ、私が!?」
戦いは終局へと。




