EP:20-As the flowing stars guide. 〜②〜
前にも出ましたが、ここでブレードが秘めていた内の力の一部を発動。
そして...1人。
あるモノを探し求める者。
集落の奥にある森の奥深く。
雪が降り積もり、肌を刺す冷たい空気を纏う仲。
滅び朽ちた寺院のそのまた奥にある祠。
否、祠だったモノ。
この地の封魔結界の残骸。
「ダメか...期待はしてなかったがな。」
"まぁ、恐らくこの島のほとんどがダメじゃろうて。"
ブレードは旅行の方がついでだった。
この地の結界を自分なりに調査しに来たのだ。
夢の世界を抜けてから時折語りかけてくる謎の声と共に。
クレアヴォーヤンスにいくつかある結界の壊れ具合で魔人の干渉度合いが変わる。
が、残念ながらここの結界は無残にも...
「近づくななの。」
落胆していると、新たな気配。
声の元へ目を向けると、幼い少女。
青の和装...少し大正の日本学生っぽい。
やけに無気力なジト目を返してくる。
"こ奴は..."
「よぉ、ここの主か?」
「人間に語る事など無いの。」
"当たりじゃよ、お主様。"
見ればわかる。
「暇人の物見遊山なら場所を選ぶの、人間の分際で。」
しかし、初対面でかなり辛辣な物言いだ。
「生憎とここが目的地だ...何時潰れたよこれ?」
「今どきの人間には耳がついてないの...?」
"劣化年数も積もる所最近じゃな、寺院はともかく。"
ならば、最近ガタが来たのか。
否、微かに触れて埃を払うと、足跡。
人災らしい。
が、こんな事して彼女が黙っている訳なく。
「触るななの!!」
強烈な覇気と共に吹雪を放ってきた。
ただでさえ肌寒い空気が槍の如く零度を増して襲い掛かってくる。
が。
"お主様、余り使い過ぎるなよ?"
それに対して彼は、一瞬目を閉じる。
そして刹那で開くと。
拮抗...以上に押し退けるドス黒い覇気が放たれた。
諸に受けた少女は自らの覇気を潜め、固まってしまう。
その表情はまるで、怯えた様に。
が、程なくしてその覇気もやみ、辺りは鎮まる。
「な...」
「落ち着けガキンチョ、危害を加えるつもりは無ぇ。」
「し、信じられないの...」
"やれやれ、頭の固い奴じゃの。"
あるいは人族に対して恨みかトラウマ持ちだろうか。
どうしたもんか、悩み始めた時。
新たに足音...それも複数。
「おいおい...俺らの遊び場で何してんの?」
やって来たのは3人程の男。
「邪魔だからどいてよ...って。」
「おい、こいつ。」
ブレードを見て唐突に飄々としていた態度が変わる。
荒くれた屈強な風貌の男達...何となく察した。
「おい、俺はここに用があっから失せろ。」
「うるせぇ、俺ら海軍の邪魔者め!!」
「仲間の仇だ!!」
やはり、海軍だ。
しかし、ここを遊び場と言ったか?
まさか。
「あれ壊したのてめぇらか?」
指差すのは祠の残骸。
それに対し、一番手前にいる男は鼻で笑い。
「だったらどうしたって...ぐげぇッ!?」
強烈な延髄切りが炸裂した。
あわよくば殺す気の。
「てめっ...がッ!?」
次に右隣に腹パンをかまし。
左の溝にバックステップと共に肘を入れ、頭をロックした直後。
その場にドロップダウン。
"ほぉーよく殺さなかったのう。"
死んではいないが屍累々の現状に目の前の少女、ドン引き。
「おいガキンチョ、さっきの冷気でこいつらを凍らせろ、俺が粉々に砕き殺す。」
「やめて欲しいの。」
「これ以上テメェの安寧の地を荒らされたくねぇなら元凶の処理に協力しな、安心しろ、ここじゃねぇ所で殺すから。」
「先ずその物騒なワードを捨ておくの。」
「チッ...良い子ちゃんが。」
ダズマに連絡、即座にこちらに来るようにした。
休みでも権限はある様で、逮捕できる。
快く引き受け、地元警察も数人連れてきてくれるらしい。
やりやすい様にロープで拘束だけしておく。
「少しばかりうるせぇが、直ぐ静かになる。」
「うるさいのはごめんなの。」
「そうかい。」
短く返して、担ぐ。
いきなり宙に持ち上げられた彼女は当然抵抗の意を示してジタバタ抵抗する。
「放すの!!」
"持っていくのかの、それ?"
見たからには放置は寝覚め悪い。
敵ならともかく。
「良いから行くぞ、人間が"うぜぇ"だけじゃねぇ事を見せてやる。」
そんなもの知った事かと更に暴れるが、間もなくへとへとになってぐったりしている。
が、ブレードは突然彼女を降ろし。
「お前手袋無しかよ...」
「必要ないの...平気。」
「見てるこっちが寒ぃよ。」
彼は粒子化を解いてある物を右手に取り出す。
子供サイズの手袋だ。
アニマが忘れたり失くした時の為に持っていた予備だが。
嵌めてみると中々ぴったり。
「...暖かいの。」
「やっぱやせ我慢じゃねぇか、それ持っとけ。」
「そんなつもりないけど...ありがとなの。」
やっと、少し態度が軟化した。
「気にすんな、安モンだ...お前、名は?」
「...」
だんまり。
まだそこまで心を開けていないと踏んだ。
「言いたくねぇならいい、"ガキンチョ"か"チビ"で。」
と告げると、少女は渋々とした調子で。
「...|初雪《はつゆき...昔、ある人間が雪と会った時に初めてこの地に雪が降り注いだ事からそう呼ばれたの。」
「良い名だ、センスあるな。」
「雪もこの名は気に入ってるの。」
どうやら、根っからの人間嫌いでは無いらしい。
ともかく、少し打ち解けた所で。
「じゃあハツ、美味ぇモン食わしてやるからついてこい。」
完全に誘拐犯のセリフだがさておき。
まだ出会ったばかりの初雪はそこまで心を許す気にはなれず。
「雪か初雪と呼ぶの...大体人族の食べ物になんて興味ないの。」
「美味しいの...」
観光客向けに作られた和食カフェにて。
出来立ての芋羊羹を頬張りながら満面の笑みを浮かべる初雪。
取り繕う事もできない程にご満悦だ。
その反応を見て満足のブレードの隣で凍結しているのは、ジュリアスとカノン。
「兄貴が見知らぬ幼女を連れ歩いてる...」
「お兄ちゃん...誘拐?」
「おいマスコットカップル共、人聞き悪ぃんだよ。」
「間違ってないの、そこの男に拐かされたの。」
「おいハツ、テメェ。」
誘拐では無さそうだ、それを見てホッとする2人。
いや、彼がそんな事を犯すとは思えないが。
というかカップルじゃない。
そう言い返したい2人だが彼の事だ、言い返せばどんな反撃を用意しているか。
そこに1人の乱入者。
というか、元から隅に座っていた者。
いつもの和装とは違ってコート等の防寒着に見を包むものの、獣の被り物や尻尾は健在の...
「ぜんざいおかわり。」
「ッ!?」
アニマ。
自分の近くに座っていたのを気づかなかった初雪は大きく驚いてしまう。
ジュリアスとカノンもそうだ、だがこの男は違う。
「お前、1人でここに?」
「ううん。」
答えて彼女が指さす方には、屍と化して倒れているスティーヴの姿が。
店の外で。
連れ回されて振り回されて体力を切らしたらしい。
「あぁ、あれはそういう理由か。」
「いや兄貴助けようよ!?」
慌てて駆け寄るジュリアス。
そんな光景もどこ吹く風か、この男は葛餅を頬張る。
というか、彼と初雪はそれを無視して入店したのだ。
初雪だけ怯える様に引いてたが。
「あぁハツ、こいつはアニマ...妹みたいなモンだ。」
「よろ。」
「あ、あなた...」
何やら反応がおかしい。
「どうしたよ、知り合いか?」
「え、えっと...どこで...?」
「知り合ったか?ジパングで記憶喪失状態のこいつがついて来たんだよ。」
「あの時、クラナとメアリーが「誘拐だ!」って叫び出して銃口向けてたよね。」
「お、蘇ったか童貞野郎。」
スティーヴ蘇生。
回復だけは早い。
「いやぁ、若さについていくのって大変だね。」
「いや、スティーヴさん兄貴と同い年だよね?」
21歳である、アルコール漬けの。
「個人差だよ、ねぇ相棒。」
「テメェがただ運動不足なだけだぜ相棒。」
何はともあれ、一服。
「さっきの奴ら、ちゃんと仲間がしょっ引いてくれたらしいし、これであそこは安心だぜ。」
「...まだなの。」
「あん?」
あの軍人としての権力剥奪確定集団以外に何が脅威になり得るのだろうか?
と、次の瞬間、店のドアが乱暴に開けられる。
そこにいたのは巫女服に身を包む少女。
高校生くらいだろうか、歳はジュリアスやソニア達と同じと見た。
すると途端に最初に会った時よりも嫌そうにジト目になる初雪。
あれがその脅威らしい。
その少女はキッとこちらを睨みつけ、指差す。
否、初雪を。
「出たのよ、幽霊少女!!」
何か察した、サブカル慣れによる超理解を以て。
中二病の類だろうか、それも空想の敵を作るタイプの。
お札を取り出し、両手を交差する構えを取る。
「ここで会ったが百年目、今ここで除霊してぶふぅっ!!?」
が、決め台詞らしきモノを決める前に豪快なラリアットを食らって沈んだ。
「はい、倒した。」
この男の手によって。
余りに勢いよく決めたせいで失神しているらしい。
が、そんな光景もどこ吹く風。
「さて、そろそろ戻るか...お前も来い、ハツ。」
「何で...」
幼女良いよね幼女...あ、通報はヤメテ。




