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EP:19-The person who inherits the soul. 〜④〜

彼の中の、罪の記憶。

問題は山積みらしく。

「重ね重ね、ありがとうございます...。」

「悪いことは言わねぇ、ゆったりローンにしてやるから困った時は依頼してくれ...何なら初回サービスにしてやる。」

「すみません、そこまでは...」

「いや、やらせてくれ。」

気が気でない。

自分では認めようとしないが実はお人好し気質のブレード。

ちょっと見ただけなのに心配になって来ている。

それをどことなく微笑まし気に見守るソニア。

彼の本当の優しさをわかっているからか。

結局、自分の事だって無償で助けてくれた訳だし。

「貴方にしては、殊勝な心掛けですわね。」

「やっぱこの馬鹿にツケで。」

「ちょっと!?」

何だかんだ、彼らはこの関係が安定している。

コーニッシュにも友人らしき関係ができた事に喜びを覚えるトレム。

自分は育ての親であり、兄貴分のつもりで見守って来た。

何だか感慨深いモノがある。

けれど...






 

あれから、ブレード達の歓迎会もあり。

遅くなったので、一晩止まることになったブレードとソニア。

ソニアは既に子供達と共に就寝済み。

ブレードは1人、神父を呼び出しリビングに。

ずっと気になっていた事をぶつける為に。

「初対面の時から俺の顔を見てやけにビクビクしてたな...え、神父さんよ?」

「別にそういう訳では...いや。」

トレムは、一息置いて。

「貴方を見てというよりは、貴方の名前を聞いて昔のな...知り合いを思い出してしましまして。」

「へぇ...仲間だったのか?」

ブレードは聞き逃さなかった。

彼が言い淀んだ言葉を。

「...鋭い、というか耳が良いのかな。」

「職業柄な...さて。」

ブレードは紐と黒いハンカチを取り出し、顔を隠すヴェールを簡易的に作り出す。

何をしているのかいまいちピンと来なかったが、直ぐに答えは語られる。

「汝の懺悔を聞き届けましょう。」

「...ふふ、懺悔室のつもりですか?」

「今回限定のサービスだぜ、好きに吐きな。」

「...懺悔します、私はある人を死なせてしまったのです。」







ーーーーーーーーーーーーー






14歳の頃、自分はスラムの盗賊団に属していた。

両親は自分を捨てて蒸発し、行き場が無かったのもある。

ゴミ箱の残飯を漁り、街をふらつく中。

1人の男に拾われた。

その男の名は...マハトゥマ・ホプキンス、通称マハ。

一攫千金を狙う、経歴不詳の自称義賊を唱える盗賊団の首領であり、光の魔法使い。

義賊と謳う様に、詐欺や強奪、暴行を行ったりと所謂"悪い金持ち"から物品やお金を盗む。

しかし、一攫千金を狙うだなんて言う割には、自分達の取り分は少なめ。

余程のお人好しなのか、その金持ちの被害者達にほとんど返し。

その残りカスの様なモノをみんなで分け合う。

主に食費に消えるが。

自分はそんな彼がとても高潔で綺麗なモノに見えた。

しかし、そんな彼に不満を抱く者は決して少なくは無かった。

独断で一般人から金品を巻き上げようとする者がいたが、腕っぷしも滅法強かったマハは片っ端からぶっ飛ばしていった。

そんな彼が新入りを連れて来た。

自分よりも幼い、これと言って特徴の無い黒髪の少年。

名を、ブレードといった。

純朴であったが無口だった彼は好かれもすれば、嫌われもした。

けどひたむきに、一生懸命に仕事を手伝う彼をトレムは気に入っていた。

戦闘になった時も、小さく華奢な身体からは考えられない程に強くて頼もしくて。

そんな彼を特に気に入ってたのはマハだった。

「お前は俺の弟だ!!」

なんて、唐突に叫ぶくらいには可愛がっていた。

ブレードも嫌がってる様子はなく、照れ臭そうに受け入れた。

楽しかった。

物騒な世界なのに、平穏を感じるこの瞬間が。

けれど、終わりが訪れるのは一瞬で。

ある日、ある資産家を襲うという計画が出た。

ゴーレン・ガー・ペルトリュス。

聞くとそいつはスラムそのモノ処か、他の富裕層すら脅かす程に極悪らしい。

マハと数人は別件でいないので、代わりに副団長...トッドという男が率いる事に。

自分はアジトで待機だった。

余りにも危険な仕事らしいから、心配だった。

それに、あのブレードも連れて行ったのだ。

腕が立つと言っても最年少、心配に変わりない。

なんて思う矢先に、数刻経ってトッドと他の者達がまとめて戻ってきた。

けれど、そこにブレードの姿はいない。

丁度そこにマハも戻って来て、ブレードはどこか聞いて来た。

するとブレードはトッド達を逃がす為に1人で標的の屋敷に残ったらしい。

なんと、その仕事を聞かされてもいなかったらしいマハは勝手に動いたトッドを殴り飛ばし。

今すぐにブレードを助けに行くと言うのだ。

自分もついて行きたかったが、マハは敢えて身軽な様に1人で行くと言い出した。

けど、その時無理矢理にでもついて行くべきだったのだろう。


これは全て、トッド主犯の計画であり。


マハとブレード以外がグルの計画だったのだから。

マハに任せていたらいつかジリ貧になる。

というより、堂々と贅沢な生活が送りたいと思い始めた彼らは邪魔者であるマハを消そうと画策。

彼が可愛がっているブレードをわざと危険な状態で囮にし、置き去りにした。

当然、そんな彼を助けに向かうであろうマハだがいくら凄腕魔法使いの彼でも助かり様の無い警備を揃えていた。

その警備...警察やランカー等で固められ、しかもそれを標的が依頼する様に仕向けたのはトッドの仲間である。

それを聞いて助けに向かいたいが、囲まれ。

武器を突き付けられていた。

情けなくも、怖くて動けずにいた。

このまま2人を見殺しにする以外、選べなかった。

自分の保身の為に。

やがて、標的の護衛達は討伐が完了したらしい。

それからアジト内は。

ブレードはおまけとして、マハが死んだという事でお祭りムードだった。

その中、1人気が沈んだままのトレム。

周りが楽天気に話しかけるが答えない、それもそうだ。

慕って、気に入っていた人間を2人も失ったのだ。

できれば彼らに代わって。

この場にいる奴ら全てに復讐してやりたいが、自分にはそんな力が無い。

悔しい...生きてきた中で、一番悔しかった。

悟られない様に酒を煽り、便所へ向かった。

用を足して、裏から外に出た。

近くの河原に向かい、草むらをクッションにする様に座り込んだ。

1人になりたかった...スラムから見上げる月は、こんな悲しい時でも綺麗だった。

短い間だったけど、彼らを思い出し、1人で泣いていた。

今、アジト内でどんちゃん騒ぎしているだろう、彼らも好きだったのに。

どうしてこうなってしまったのか。

そして自分はどう生きていけばいいのか。

...余りアジトを離れていると怪しまれるかも知れない。

戻る...が。

戻った時、アジトには盗賊団の人間が大体20人程いた筈だ。


その全員が殺されていた。


アジトの中央に佇む少年の手によって。

否、1人だけ生き残りがいた。

その少年...ブレードを可愛がっていた内の1人、ミズリーという女性だ。

けど、彼女も裏切り者だった...当然ブレードもその事はわかっているので。


殺した。


命乞いしながら泣き叫ぶ彼女を。

無残に、ズタズタに。

トレムは怯えながらそれを見るしかできなかった。

自分に気づかなかったのか、直ぐその場を後にした彼の行方はわからない。


この島で行われた、少年最初の罪。

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