EP:16-The Case-Book of Dazuma vol.1 〜④〜
決別。
そして新たな道を見つけた彼。
そんな彼に昨夜、正義に固執する理由を聞かれた。
「悪を滅する、その為に身を投じる、それこそが尊敬する方から教わった事だ。」
「そうか、まるでフィクションのヒーローだな。」
「ヒーローか...そう、僕はヒーローになりたいんだ。」
「男なら憧れて当然らしいな。」
「お前は違うのか?」
「似合わねぇのさ。」
そんな事ないと思うが。
そう返す前に。
「テメェは正義の味方でいたいのか、それともヒーローになりたいのか?」
「ッ...」
「わかりやすく教えてやるよ、真面目君..."ヒーロー"ってのは"正義の味方"じゃねぇ。」
言ってる意味がわからない。
だが、何も言えない。
彼の言葉にただ耳を傾ける。
「現実での"正義"ってのはそもそも、"力"の別称みてぇなモンだ。」
続けて彼が言うに、自ら"正義"を振りかざす人間は基本その言葉に酔う。
そして、自分のルールだけが正義だと暴走し、暴れ出す。
「何人も見て来たよ、そんな奴ら。」
「僕もそうなると...言い切れるな。」
初対面で彼に暴力を振ろうとしたのが証拠だ。
正義...定義なんて、正しい事としか捉えていなかった。
そして彼の言う酔った人間の仲間入りしていたのだろう。
「そしてヒーローってのは、誰かを護る存在だと俺は認識している。」
「誰かを...護る...」
なら、彼は。
クラナを護り。
彼女から聞いた話だと、沢山の人を救っているとか。
「ならお前は...」
「俺は奪う人間だ...ヒーローになり得ない。」
そう返す彼の顔はどこか儚げで、自嘲気だった。
それを振り払うように、表情を無に変えて。
いや、鬼の様に鋭い瞳で。
「もう一度聞くぜ、お前は"正義"を護りたいのか...それとも、誰かを護る"ヒーロー"になりたいか?」
- 選べ。 -
ーーーーーーーーーーーーー
選ぶ。
「なら俺は、"正義のヒーロー"でありたい。」
「は?...ッ!?」
油断していたのだろう、コルトの銃を弾き飛ばす。
そのまま両肩を撃ち抜く。
訳ない、彼とバディを組まされてからどれ程射撃訓練で競った事か。
「貴方の息子の様に...誰かを護るというルールを守り続ける。」
「綺麗ごとを...もうあいつは...」
「貴方が殺したんだ。」
「何...?」
「あいつの信念を!父親である貴方が踏みにじって殺したんだ、今!!」
「...」
息子は誰かを護るヒーローだった。
命を堕とすその瞬間まで。
自慢の息子だった。
「貴方はミューセラミスだけじゃなく、あの売人に殺された人々まで巻き込んだ...それを正義の為の犠牲と信じて。」
嗚呼...確かに自分は。
息子を穢してしまったのだ。
「コルト・バーニッシュ...誘拐及び殺人教唆など諸々の罪で逮捕します。」
手錠を掛けた。
抵抗する様子もなく、これで終わりだ。
...だった筈なのに。
轟音と共に揺れる廃工場。
「なッ...!?」
「何、この揺れ!?」
地響きが酷くなっている。
いくら使われていない廃工場だからと言って、何が残っているかわからない。
このままでは爆発の危険も...。
先ずはクラナの手首を縛る紐をナイフで切って自由に。
「ミューセラミス、コルト先輩を頼む...俺は売人を運ぶ。」
「わかった。」
売人を背負い、コルトは意識があるのでクラナと共に歩く。
その中、コルトが口を開く。
「今回の元締めの仕業だろうな...」
「元締め...?」
他にも協力者がいるのか、しかも位が上と見た。
「気を付けな...とんでもねぇビッグネームだぜ。」
「一体...?」
その答えを聞く前に、外に出た。
そこに立っていたのは、洋式の黒装束に身を包み。
白の面で顔を隠した人型...いや、人だ。
「実につまらないショーだったなぁ...お涙頂戴などやってられんよ...」
若い男の声。
何者だろうか。
男は血の様に赤黒く染まった禍々しい剣を掲げる。
次第に黒いオーラが集っていき、漆黒の焔柱。
「採点は0点...殲滅してやる。」
振り下ろされた。
全てを押し潰さんとする絶望の力が地を揺るがす。
そして宿敵の登場。




