EP:10-Shout it's name. 〜①〜
第10話。
クレアヴォーヤンスには様々な属性の人間がいます。
怪盗だったり、ヒーローだったり。
表紙です↓
https://twitter.com/poh_YmikuIMZVQ/status/1385785983015088130?s=19
ジパングの居酒屋での騒動から一週間。
ジパングの中には所謂アングラな場所が存在する。
高天ヶ原。
日本のある文化に心酔している者どもには聖地と呼ばれている。
江戸や大正をモチーフにしていたジパングの表市街とは違い、セントラルの様にビルがそびえ立っている。
しかし結界が貼られている為、その外貌は見えない。
ジパングの目立たない路地裏始め様々な場所に存在するにある鳥居を潜ったり許可証を所持すればあら不思議。
そこはビルやキャピキャピしたキャラの看板、メイドやくノ一、執事等数多の装衣に身を包む者が跋扈する聖地、高天ヶ原。
別に違法という訳ではない、ただの仕様である。
そんな聖地の街角にある人気の無い静かな喫茶店で。
向かい合って座り合う男2人。
ブレードとオリヴァーだ。
「封魔結界が壊されていた...この意味がわかるな、リヴ?」
「あぁ...マズい事になったな。」
この間壊されていた祠の事である。
あれはこの島の治安維持の為に必要不可欠な、古来より存在し続ける重要な物だったのだ。
「間違いねぇ...魔人が来る。」
「マジンー?」
「おう、魔人ってのは簡単に言えば普通の人間とは違って見た目もスペックもバケモンな奴らの事だ。」
「つよい?」
「あぁ、超強い。」
「待て。」
突如乱入してきたほんわかな声音に待ったを掛けるオリヴァー。
声の元を見ると、ケーキを美味しそうに頬張るアニマの姿が。
口元にクリームが少し。
「おい、付いてんぞ。」
「んぶぶっ...」
保護者の如く、ペーパータオルで優しく拭きとって。
「じゃなくて、何故彼女がここにいる?」
彼一人で来たと思っていたのにいつの間に。
確かに彼はケーキを注文していたが自分で食べるのでは無かったのか。
「連れてかねぇとギャン泣きしそうになるからな。」
アニマ...記憶喪失、正体不詳の幼女。
特技は神出鬼没で趣味は人間観察。
現在、立派にマハロのマスコットを務めている。
基本、置いていくと泣き顔になる。
「おおごえで泣いてやるぞ。」
「ハハハ、そしたら俺が泣くからやめろ。」
「...」
重要な話をしに来たのだ。
魔人..."魔"を名に冠するだけあって魔法にも長けており。
戦闘思考の者の場合は町一つ等容易く消せる程に危険。
封魔結界はそんな者をこの島に近づけない為の物であり。
この島中のどこかにまだいくつも存在しているが、少しでも破壊されたとなると結界が弱まり、一体でも入り込んでくる可能性がある。
それが戦闘思考の者だった場合は死闘必須だ。
恐らく、この間ブレードが潰したギルドの連中。
あるいは未だに暗躍を続ける売人の内誰かが祠を破壊したのだろう。
魔人の策略なのか...より一層気を引き締めなければならない。
魔人は自分達の生まれ故郷にも関係ある存在だ。
攻め込んでくれば仲間にも被害が出るだろう、対策を立てねば。
という、重要な話をしに来たのだ。
「わかっているのか?」
「俺は報告するまでだ、そっからあたふたしてもしょうがねぇだろ現状。」
「まぁ...一理あるな。」
「わかったら解散だ、俺はこいつ連れて高天ヶ原巡りと行くぜ。」
「おー、ヴァルハラヴァルハラー。」
「...ハァ。」
何だか馬鹿馬鹿しくなってきたオリヴァーは店を出ていく2人を優しく見守った。
が。
「あいつ...代金払わずに行きやがった。」
ワザとである。
酒は奢る癖にこの間の仕返しである。
ーーーーーーーーーーー
高天ヶ原の中の路地裏にて。
そこは結界が掛けられている訳でもないのに、迷路として入り組みすぎているせいで迷子が続出する魔の地帯。
ソニアは今日、ある用事があってここに赴いている。
そして見知らぬ男性達に囲まれている。
皆息が荒い。
「お、お嬢ちゃん、1人で来たのかい?」
「僕達と一緒に来れば大丈夫だよ!」
と、促されるままついていく。
しかし、表情は曇っていく。
そんな彼女に男達は。
「そんな顔しなくても大丈夫だよ。」
「何も心配する事ないよ!」
と、言葉を掛けていく。
しかしそれでも晴れない。
「あぁ、こいつらの言う通りだぜソニア。」
と、そこに現れたのはブレード。
信頼する彼の言葉に、やっと曇りが晴れる。
そして、彼らに付いて行き。
辿り着いた建物で。
「ほらお嬢ちゃん、これが欲しかったんだろ?」
そう言われ...受け取ったのはロボットのフィギュア。
先程までの心配気な表情も何処へ。
うっとりトロっとした表情で眺める。
しかしハッとなって表情を元に戻す。
仲良くしているブレードは今の自分を見てどう思ったのか、目を向けてみると。
ニヤニヤしてこちらを眺める彼の姿が。
一気に羞恥心が襲い掛かってくるが、そこを我慢し、購入する。
「お買い上げありがとう!」
「お嬢ちゃん通だね!」
「あ、ありがとうございます...」
この男性達はブレードの知り合いであり、ここは市場で中々回らないレア玩具等の専門取扱店。
高天ヶ原は日本の秋葉原をモデルとした場所なのだ。
つまり、オタク文化の聖地。
ジャパニメーション、特撮、ゲーム、マンガ、ラノベと様々なオタカルチャーに溢れている。
表では通常のジパングと同じ大正浪漫めいた風に見えるが。
「しかし、まさかブレードさんの彼女だっただなんて...」
「ひぇっ!?お、恐れ多いです!!」
「まぁ確かにこいつが恋人なら楽しそうだが生憎違う。」
「ぴぃ!?」
『なーんだ。』
そんなことは2人ともわかっている上に、ブレードもその事をわかっていて呆れている訳だが。
「お前ら...てかソニア、さっきから小動物みたいな声出てるな。」
「うぅ...」
「呼んだ?」
『!?』
幼い子供の声。
唐突に聞こえるモノだからその場にいる者総驚き。
この男以外は。
「呼んでねぇぞ、アニマ。」
「なんだ。」
つまらんと言わんばかりに首を傾げる。
実はさっきから喋っていないだけでブレードにずっと同行して来ていた。
すばしっこい上に気配を殺すのが上手いから誰からも認知されなかったが。
優しく頭を撫でてやると、気持ちよさそうに目を細める。
「その子...スサノオさんから聞いたんですけど。」
「おぉ、あの後ついて来たアニマ。」
「アニマはアニマー、よろしくー。」
「よ、よろしくね。」
ぶんぶんと振り回すアニマの腕と握手するソニア。
「ブレードさん、和服ケモ衣装の幼女連れてくるとか業が深いですね...」
「好きだろ?」
『はい!!』
その場にいるほぼ全員が叫んで返事をする。
そんな異様とも言える光景を、ソニアは苦笑いしながら眺めていた。
秋葉原的な場所を聖地扱いしたかった。
主人公がヲタクだから。




