EP:08-Drink and dance!Samuraism. 〜③〜
自由人にして暴君。
そしてコーニッシュは実に被害者属性。
現在ブレードはジパングでも有数の温泉施設にてまったり入浴中。
鍛え上げた細マッチョな肉体が艷やかに湯を滴らせる。
あの後シスカからここの優待券をいただいて早速使う事に。
今回の劇も良かったと記憶に浸りながら露天風呂を堪能する。
男湯は貸し切り状態、優雅なものだ。
しかし、突如隣の女湯が姦しくなる。
覗きたいが覗く気はない。
自分が除かれてしまう、メアリーとクラナに"息子"を。
「あれ、スサノオ様いないー。」
「ということはやっぱり男性だったのかなー?」
どうやらスサノオ目当てで来たらしい。
ひょっとすると、今回の劇の共演相手達か。
しかし、正体目当てに覗きに掛かるとはマナーがなっていない。
まぁ、見当たらないという事は入ってなかったのだろう、自分には関係ない。
「ん?」
なんて思ってると、背後に感触。
人肌の。
しかも妙に弾力を感じた。
自分の後ろには竹製の壁と、森。
そしてタオルを数枚顔に被せた不審者。
状況的に...
「スサノオか?」
と、極力見ない様に振り向いて見ると、小声で尋ねるとこっくり頷く。
考えられるとすれば、森を経由してこちらに来たか。
つまりスサノオは女性。
いや、実は彼は知っていた訳だが。
「お前も大変だな。」
スサノオはもう一度頷く。
変声機もないので身振りで会話するしかない。
「落ち着くまでこっちにいな、見ないでおいてやる。」
彼にしては珍しく紳士的だと見た者は目を疑うだろう。
次には目を潰されるだろうが、彼に。
「その代わり、後で俺に付き合ってもらうか。」
その言葉に驚いたように仰け反るが、背に腹は代えられない。
自分の方を向いてない彼の肩を優しく叩き。
振り向いた彼に向かって首を縦に振る。
対して彼はしたり気な顔で。
「後が楽しみだぜ...安心しな、悪いようにはしねぇ。」
ーーーーーーーーーーー
風呂上り、ロビーで待っていると。
「お。」
目深にフードを被った黒いパーカーの何某が。
どうやら律義に"本人"が来たらしい。
"代わりの者"を寄越せば楽だろうに。
「[待たせてすまない。]」
聞こえる声は変声期によるそれ。
口の中に仕込んでいると見た。
「気にすんな、俺も来たところだ。」
「[どこへ行く?]」
「何、この辺を少しな。」
スサノオを連れて、ジパングの繁華街エリアへ。
過去の日本と温泉街をモチーフにした大正ロマン溢れる街並みは実に芸術的だ。
「お前はこの街に来た事あるか?」
「[いや、余り。]」
「俺もだ、お前が出るって話を聞かなけりゃ今日も来なかった。」
「[恐縮だ。]」
「風呂で鉢合わせるのは予想外だったが。」
「[...言わないでくれ。]」
「ハハッ、悪ぃ悪ぃ。」
そうこう言ってる間に辿り着いたのは"居酒屋"と書かれた看板を掲げる木製の倉庫蔵。
「[ここは...]」
「イザカヤ...所謂ジャパニーズレストランバーだ。」
「[その...私は未成年で...。]」
「構わねぇ、飯食うだけだ。」
ブレードはお構いなしに戸を開く。
香ばしい匂いが鼻腔を擽る。
中では和服に身を包んだ女性の店員がこちらに駆け寄り。
「いらっしゃい、空いてる席へどうぞ!」
「ほら行くぞ、スー。」
「[あぁ...スー?]」
「便宜上の呼び名だ、ほらそこ座れって。」
促されるまま座るスサノオ。
ブレードは適当に料理を注文し。
「何を飲む?」
「[オレンジジュースを。]」
「あいよ、オレンジジュースと熱燗。」
「何合にしますか?」
「1でいい。」
「かしこまりました。」
店員は機敏な動きへ奥へ。
残った2人はテーブルに置かれた冷に手を付ける。
互いに一口飲んで、切り出すのはブレード。
「それで、何時頃から演者をやってる?」
「[もう4年にはなるな...]」
「年齢を聞くのは流石にご法度か。」
「[あぁ...申し訳ないが。]」
「いや、こちらこそ。」
「お待たせしました!オレンジジュー...」
談笑してると、先程と違う店員が注文の品を持って来た。
が、何やら固まっている。
というのも顔見知りだからだ...ブロンドのおさげで眼鏡を掛けた。
「な、何であなたがここにっ!?」
「よぉじゃじゃ馬、バイトか?」
「だ・れ・が、じゃじゃ馬ですの!!?」
コーニッシュ・レヴァノン、最近ブレードに振り回されて嘆き狂う女怪盗フロンティーヌの正体である。
「せっかくのバイトの日に貴方の顔を見るだなんて...ついてませんわ...。」
「そう気を落とすなよ、スマイル一丁。」
「ここはそういう店じゃありません!」
「じゃあお触り。」
「エスカレートしてるじゃないですの!!」
哀れだが、ここ最近意図もなく遭遇する。
お陰で彼女の苦労が絶えず、そろそろ胃潰瘍を疑うレベル。
気のせいだが。
「スー、紹介する...こいつはコーニッシュ・レヴァノン、スサノオヲタクを拗らせまくったシュクジョだ。」
「な、何ですのシュクジョって。」
「一人前のレディの事さ、良かったな。」
「ニュアンスがどう聞いてもそう聞こえませんけど。」
「[ハハハ...]」
スサノオもから笑い。
しかし、自分のファンが目の前に2人もいる。
これは素直に嬉しい。
名乗り出る訳にはいかないが。
「全く...」
「おいコニー、呼ばれてんぞ。」
「気安く愛称付けないでください!ごゆっくり!」
丁寧に挨拶して席を離れていった。
「[仲がいいのだな。]」
「なんてことはねぇ、偶然ちょくちょく顔を合わせるだけさ。」
「[私にはそういった間柄がいない...いや...いない。]」
妙に歯切れが悪い。
が、深くは聞かないでおこう。
誰にだって聞かれたくない事はある...自分にだって。
「おいおい何だここはよぉ!?」
突如店内に響く野太いがなり声。
2人揃って音源を辿ると、これまた見るからにガラの悪い男が3人程席を立って吠えている。
足元には蹴られたのか、獣の皮を被った幼い子供が蹲っていた。
「こんな変なガキまでいやがる。」
「到頭ここは動物園に鞍替えしちゃったのかよ!!」
到頭...という言い方に引っかかり。
恐らく、この男達は前々からこの店に嫌がらせを行っていた。
そして今日この時来店したタイミングであの子供が目に移り、嫌がらせに利用と言った所か。
そうこう考察していると、コーニッシュが男達に立ち塞がる。
「レヴァノンさんやめろ!」
「いいえ、言わせてもらいます...毎日毎日何々ですかあなた達は!!」
彼女の発言で確信する、自分の考察の当たり具合を。
「あぁ?何だこの女...」
「ここの店員です!お客様にまで迷惑を掛けて!!」
彼女は蹲る子供を抱える。
心配気な表情を一瞬みせた後、再度怒りを灯して男達を睨みつける。
けれども男達はどこ吹く風。
「そんな怪しい恰好させたガキを入れてんのが悪いんだろ!!」
「そうだ!動物園を動物園と言って何が悪い!?」
と、更にヒートアップ。
「[なんて醜悪な...あれ。]」
そこに近づく一人の影。
まぁ、1人しかいないが。
「あぁ、お前らの言う通りだな。」
何食わぬ顔で参戦するブレード。
その発言が聞き捨てならないのか、コーニッシュの怒りの矛先が彼に変わる。
「貴方...」
が。
「だって今もこうしてチンパンジーが三匹吠えてるもんなぁ。」
その怒りは次に出た言葉で霧散した。
対して男達は馬鹿にされて怒り心頭。
「...それは俺らの事か?」
「自覚ねぇのか...あぁすまん、チンパンジー3匹だけじゃ動物園じゃねぇな、ただの脱走猿共だ。」
「てめぇ!!」
1人が掴み掛ろうとする。
「スー!ドア開けろ!!」
「[あ、あぁ!!]」
スサノオは即座に入り口に赴き、ドアを開ける。
対してブレードは掴み掛ろうとした男を入り口から外へと投げ飛ばす。
見事な事に、周りへの被害はゼロ、神業である。
「続きは表に出ろ。」
実は...彼もお冠。
残りの2人は挑発に乗って表に出るが。
1人は右腕をへし折られ。
もう一人は首を掴まれて頭から地面に叩きつけられる。
腕をへし折られた男の腹に拳を数発叩き込み、脇腹を蹴り飛ばした。
人体かどうか疑うくらいに跳ねて飛んでいく。
そこで最初に投げ飛ばした男が起き上がるが、その顔面に全身全霊のシャイニングウィザードが炸裂。
3人揃って地面に転がされる。
「あの子蹴ったのは誰だ?答えねぇとこのまままとめて殺す。」
ドスの効いた脅しに、素直に手を挙げたのは首を掴まれていた男。
ブレードはその男の顔面を魔力の込めた足でスタンプ。
鳴ってはいけない音がなった気がした。
「殺しはしてねぇ、もう2度と歩けねぇかもだけど。」
半身不随...ろくに治療せねば実現となる。
淡々と言ってくる彼に戦慄を覚える残りの男達だが、そんなもの覚えてる暇はない。
「さっさと失せて2度とここに手ぇ出すな、次は身体をバラバラに刻んで殺してやる。」
今更ですが口が悪いのはデフォです。




