EP:07-So far Distance. 〜③〜
これでもまだ簡潔にソフトリー。
「それで、続きは!?」
気が付けば仕事も放棄して聞き入っていたジュリアス。
壮年は楽しそうに。
「そうだな...続きは...」
続けようとすると。
「無事、クレアヴォーヤンスに辿り着いたそのガキは結局一文無しで死にかけた。」
別の声が代わりに紡いだ。
よく聞く声だ、この店のオーナーの。
「兄貴!?」
「よぉトム、与太話なんか聞かされて災難だな。」
「ううん、めっちゃ気になる話だよ!!」
「だ、そうだ...何ならお前が続きを語ってみるか?」
と、にやけた面を向ける壮年だが対してブレードはジト目で。
「その前に、元の姿に戻れよリヴ。」
「へ?」
「何だ...結構気に入ってるのに。」
何の事かと混乱するジュリアスを他所に、壮年の肌が見る見る若返っていく。
次第にブレードと同い年ぐらいの見た目に。
片手にはしわしわに枯れかけの木の珠が握られている。
「こいつはオリヴァー・ガンドレッド...地属性の魔法を使い、栄養の依り代さえ手にしていれば見た目年齢の操作もできる。」
「話はこいつから聞いてるぞトム。」
「あぁ...はは...どうも...。」
何が何だかと混乱も上がり上がり。
しかし、流れ的に。
「ねぇ...ひょっとしてさっきの話って実話?」
「まぁな。」
「そうなるなぁ...嘘に聞こえたか?」
「だとしたらお前の胡散臭い見た目のせいだぜリヴ。」
「渋かっこいいだろうが、B.E。」
「寝言は寝て言えよ、兄弟。」
すっかり2人の世界だ。
しかし、聞き捨てならない単語が聞こえた。
「兄弟?」
「さっきの話聞いてたろ、苦楽を共にしたガキとガキが殺っちまった男の倅...長き時間を持って互いを兄弟と呼ぶようになったんだよ。」
「いやそこまで聞いてないし...って、さっきまでの話って兄貴達の話!?」
『わからなかったのか、トム?』
「普通はわからないよ!!」
「おいおい、その程度もわからずに俺の弟分を名乗れんのか?」
「気を付けろよ、こいつの弟分を名乗るのは骨がいるぞ。」
「はぁ...忠告どうも...」
もう何が何やらである。
「まぁ、続きは話してやる...ただし、気に食わなかったら途中で聞くのやめていい。」
ーーーーーーーーーーー
少年はクレアヴォーヤンスに辿り着いた。
辿り着いたと同時に憲兵に見つかった。
それも乗った港の者も混ざっていたものだからお構いなしだ。
殺しはしなかったが、眼球やらどこかを手酷く傷つけてその場を逃亡。
やがて見失ったのか、少年を追う足が途絶えた。
途絶えた頃、少年はスラム街でギリギリの生を強いられていた。
ゴミ漁りもやれば、落ちた食い物を拾ったり。
それでも限界を感じた彼は、ある日同じ様にスラムを生きる盗賊団に誘われた。
リーダーに気に入られながら、そこで厳しくも明るい生活を送っていたが、ある日そこの副リーダーに声を掛けられた。
強盗の計画にだ。
生死を賭けると他に道も無く、それに乗った少年。
蓋を開けてみれば、少年が囮の全てを請け負うという無茶苦茶な話で。
それがわかったのは少年が嵌められた後だった。
警備兵に囲まれた少年は何とか逃げ出そうとするが、捕まえるでもなく容赦なく彼を害しようとする者がいた。
彼に片目を奪われた者だった。
その者は到頭少年を追い詰め、害する一歩手前まで行った。
しかし、彼の同僚がそれを一歩手前で止めた。
けれども男はそれが気に食わず、私怨の為に同僚を殺害し、再度少年を害しようとした。
次に庇ったのは、助けに来たリーダーだった。
彼は致命傷を負って後に死に…少年は怒り心頭の状態で男を惨ったらしく害した。
首から上を、男に殺害された同僚が持っていたナイフで斬り割くことで。
そのまま少年は男達の持っていた銃器も拾い、自分を嵌めた者達の元へ戻った。
そして持ち前の技術、拾った道具を全て駆使して皆殺しにしてのけた。
何も考えず、恨みだけで行動し、今度こそ何もかも失って死の寸前。
そこで目に入ったのは裕福そうな老人。
少年はその老人から金品を強奪しようと、最早使えるかもわからない程に刃がボロボロになっていたナイフを構え、突進するが。
途中、何かに遮られ、倒れる。
気が付くと身の上に誰か圧し掛かっていた。
老人の下僕だろうか。
丁度いい、これが終わりなら終わらせてもらおうかと自棄になり、眼を閉じる。
次に目を開くと、綺麗な屋敷の部屋だった。
何が何だかと辺りを見回すと、自分が襲い掛かろうとした老人と。
ここに辿り着く前に生き別れた少年...隣の家の倅が自分を見ていた。
自分と目が会った時、涙が出る訳でもなく。
"生きてたのか"と互いに漏らした。
笑いながら。




