EP:07-So far Distance. 〜②〜
彼が流れ者である証の話。
あれは今より12年程前の話。
閉鎖的な町で。
1人の武家で育った少年がいた。
黒い短髪で、身体はほっそりとした少年だった。
武家として名高い家で生まれた少年の環境は何とも厳しかった。
実質その町はその武家を中心とした一族の物であり、支配力も強大だ。
故に周りも少年を厳しく見る。
意にそぐわなければ叩かれ。
反すれば叩かれ。
とにかく厳しくて、少年の身体は痣だらけ。
いつも泣いていた。
けれども少年は懸命に、懸命に強くなろうと努力した。
次第に泣き声も聞こえなくなっていた。
少年は確実に強くなっていた。
けれどもある日。
少年は家を出て行った。
何があったのか、静かに、怒りを蓄えた表情で。
そんな彼を力づくで止めようとする者がいた。
隣に住む家の主の男性だ。
彼はその武家とも古くから懇意にしていて、武家の主とは親友であり、半部下の様なモノだった。
大怪我をさせてでも少年を逃がすまいと襲い掛かる男性だったが。
実力をつけすぎた少年は男性を殺めてしまったのだ。
感傷に浸るわけでもなく、今度こそ町を出ようとするがまたしても誰かが彼を呼び止める。
男性の倅の少年だった。
仇を討ちに来たかと構える少年だったが、倅は1人では危ないから自分もつれていけと言う。
恨みは無いのかと少年が聞くと。
"無い、寧ろ感謝している。"
彼もまた家に縛られる者だった。
やり方に反感を覚え、どうにかしたかった。
それを結果として行動で示してくれた少年を。
自身の肉親を殺めた少年を恩人と称してついていく事になった。
少年は力こそあれど、生き方を知らなかった。
今どき子供だけでは生きる術を持てない。
特に、何もない、厳しさしかない環境では。
世界に見殺しにされる前に、2人はある場所を目指した。
自由幻想都市クレアヴォーヤンス。
種族も血も肌の色も関係なく受け入れる聡明にして透明で、虹の様に多彩な島国。
けれど行く手段が無かった。
密航しか。
少年たちのいた場所は特に密航に厳しく。
2人揃って憲兵に捕まりかけたが。
倅が1人身代わりとなり、少年は無事クレアヴォーヤンスへ渡る船へと乗った。




