EP:23-Temple of Cocytus - the first half - 〜③〜
ここをキャンプ地とする。
佳奈江、窮地へ。
近くにあった大きな民家らしき建物の民家のドアを蹴破るブレード。
中には何もいない。
その中、彼は先程佳奈江に渡した物とは別の剣を取り出した。
それは燃え上がる様な紅色の短剣。
藁を地面に敷き、"燃えろ"と呟きそこに刺すと、剣を中心に焚火が出来上がった。
焔の魔力を付加された属性剣だ。
「女将から頂いた物が早速役に立ったな。」
「それウチにあった物なのよ!?」
娘ですら知らなかった。
こんな便利な物を置いていたなんて。
「ここをいざという時の拠点とする...程よく暖かいしな。」
意義は無し。
カイロ代わりの札が機能していても中々堪えるモノがある。
が、これはそれと組み合わせれば旅館並みに暖かい。
休憩所にはもってこいだ。
さて、拠点を決めた所で先に進む。
様々な民家を開けて回るが、特に何も見当たらない。
偶に変わらぬ化け物がいたくらいだ。
ある大きな建物...酒場だろうか。
入ってみると、それらしき雰囲気。
器とか、樽とか。
だが、それより気になったのは。
「ひっ...」
「こいつぁ...」
死体、しかも一つでなく幾つも。
それも古くからのではない、最近のだ。
それ以上に気になったのは服装だ。
最近、彼が敵対していたのはクレアヴォーヤンス海軍。
隊服は蒼か白を基調にしている。
だが、目の前の死体は...深緑色。
陸軍のモノだ。
アレクセイの部下の...
顔に渋みが灯ってしまう。
「ブレードさん、どうしたのよ...?」
「知り合いなの?」
「...顔は知らねぇ奴らばかりだが、義父の部下だ。」
「つまり...陸軍なのよ...?」
きな臭く成って来た。
どうして陸軍が?
何を求めてここに?
どうやってここを知った?
どこからこの場所に入ったのかも気になる。
「ハツ、入り口はあそこだけじゃねぇのか?」
「この街をあの氷が覆っている限りはその筈なの。」
「つーことは...どこかの別の出入り口を見つけ出し、入ったのか。」
この街だけでなく、世界と彼女は先程言っていた。
別の場所にも神殿の様な場所があって、そこから侵入した可能性が高い。
だが、何故陸軍が?
このままでは混乱が収まりそうにない。
切り替えよう。
遺体を見ていると、眩く輝くモノを握っているのが一体。
鍵だ、何のかは知らないが。
とりあえず、取っておくに限る。
だが、まだ動揺していたのか。
彼にしては不用心だった、取った瞬間。
死体たちが動き出し、どこからともなく巻き起こった吹雪を身に纏い出す。
余りの勢いに3人は目を覆うが、晴れたそこには。
数体ののっぺらぼう...白い人型が軽装の鎧に身を包んで隊列を組んでいた。
つまり、道中始末して来たあれは...人だった。
何とも胸糞の悪い話だ。
だが、やるしかない。
インペリアルを召喚。
「カナエ、動けるなら自衛しろ...俺が叩く。」
「雪も手伝うの。」
「じゃあ、カナエの援護頼む。」
鍵を持っていた奴が片手剣を振り下ろすが、避けた所で。
その腕を踏んで上半身を斬り飛ばす。
すると宙を舞う片手剣を逆手で掴み、後ろの長身の人型に投擲。
顔面を穿ち、砕いた。
だが、別のモノが襲い掛かる。
アウトローを取り出し、魔力充填。
弾を大きく捻らせるS字ショットを発射。
小柄な2体一気に胸部を貫き、再起不能にする。
しかし、2体足りない。
まさかと思い、後ろの2人の方を見るとそこにいた。
援護に入ろうとするが、地面から白い狼が数体。
足止めのつもりか、だが踏みとどまってはいられない。
魔力を刃に込め、一閃。
だが第2波が生まれて襲い掛かってくる。
おかしい、誰かの意図を感じる。
急がなければ2人が危ないし、先程の一閃を繰り返しても悪戯に魔力を消費する。
それでもやれ。
急げ。
その頃、初雪が2体の内1体...ふくよかな個体を凍らせる。
それは瞬時に砕け散る。
「後は私が!!」
しかし、もう1体...片手剣を持つ手長の個体に向かって佳奈江が襲い掛かる。
「下がるの、小娘!!」
危機を危惧して叫ぶ初雪。
だが、聞こえていない彼女は袈裟に斬りかかる。
しかし、それを片手剣で軽々と受け止め、弾く人型。
「なっ、ぐぅッ!?」
反対の手で彼女の首を掴み、高く持ち上げる。
そのまま強靭な力で絞め上げてきた。
「あっ...がッ...」
「ッ...佳奈江!!」
彼女の危機に初雪が寄ろうとするが、彼女の前に白狼の軍団が現れる。
苛立ちを込めて、吹雪を形成。
「どくの!!」
纏めて動きを止め、砕く。
早くしないと彼女の首がどんどん絞められる。
あるいは化け物の力だ、折られるかもしれない。
足をばたつかせながら藻掻いているが、効果が全くない。
限界が近づいているのか、意識が段々薄れて来た佳奈江。
抵抗の動きも鈍く…
「ハツ、壁を張れ!!」
【Finishing Combat mode - Activity.】
そんな彼女を解放せんと下から飛翔せし刃。
夫婦手裏剣...リュンクスの片割れをキャッチし、魔力チャージ。
今の攻撃で人型腕は裂かれ、彼女は宙へ投げ出され。
それを優しく二の腕で支える様に衝撃を殺し受け止めた彼は。
「しっかり屈め。」
即座にその指示に従い、咽ながらも低く屈む彼女と対照的に両手にリュンクスを広げて回転し始めるブレード。
それは正しく、バレエのグランフェッテ。
両手のリュンクスも共に激しく回転させ。
初雪は氷塊のシェルターを作り、身を護る。
「双刃翔裂風!!」
放たれた夫婦手裏剣は縦横無尽にこの場を巡り余波が激しい鎌鼬を起こす。
ソレはこの場にいる敵を全て細切れに刻み、宙へ舞わせる。
件の人型等最早塵の如く。
やがて全てを片付けた双刃は回転を止めた彼の両手に収まり。
刻まれた痕が纏めて降り注ぐ。
彼らを避ける様に。
リュンクスを粒子化させ、仕舞うと。
「はぁ...はぁ...ありがとうなのよ...へ?」
息を整えている彼女の頭に優しく手刀を落とす。
その表情は、表すなら"無"に近く。
怒りと哀しみを織り交ぜた...そんな表情だった。
「無理して焦んな、取り返しつかなくなる所だぜ。」
「あ...」
死ぬところだった。
そう考えると、今更震えが止まらない。
親にも会えなくなる所だった。
目の前の彼や、初雪にだって。
想えば想うほど涙が流れてくる。
初雪が止まれと言っていたにも関わらず、自分が勝手に動いたせいで。
彼に大きく魔力も使わせてしまい、盛大に足を引っ張った。
邪魔になってしまった。
「悪いな、連れて来たからにはそっちに最低限の被害が行かない様にしなきゃならなかったが、誤った。」
そう言って今度は、優しく掌を乗せる。
正直、怒られるより辛くて、より涙が出てくる。
「ごめんなさい...なのよ...。」
「次から気を付けな、俺も冷静になる。」
動揺している暇は無い。
彼女達を護らねばならない。
その上でちゃんと彼女に力の使い方を教えねばならない。
ここから彼女は学んでいきます。




