おっさんは、水路を作るようです。
「この辺りか」
「はい」
クトーが眼鏡のブリッジを押し上げながら、チラリと手元の札を確認すると、スイキも同じものを手にして無表情に頷いた。
【探水符】と呼ばれるもので、起動すると黒ずんだ光を放ちながら、清浄な水気の強い方向に軽く引っ張るような感覚を与える薄い金属製の呪符である。
水気が強くなると輝きを増す、というスイキの言葉通り、確かに輝きを増して行くのと同時に水音が聞こえ始めた。
少しすると輝きを失い、同時にひどく黒ずんで刻んだ紋が見えなくなり、使いものにならなくなった。
「金属板も貴重だ。後は音を頼りに向かえば良いだろう」
クトーは、周りに散って同じように符を使って水源を探していた面々を呼び集め、しばらくして問題なく水源を見つけた。
特に瘴気の類いに侵されている様子もなく、綺麗な水源である。
スイキの見立てでも、五行の東で陽の地形、ということで、水源になんらかの細工をされない限りは安全であり続ける水だろう、ということだった。
「では、後は水路だな」
方角はきちんと把握している。
現在王都がある位置は山にあるこの水源より下方であり、水を流すのに好都合だった。
紙を取り出したクトーは、【カバン玉】から取り出した机に向かって、地図を書く。
その後、この水源から王都の地図と合わせて水路の位置取りを決めた。
「水路は地下を通す。指示通りの位置に穴を掘ってくれ。一定間隔で、光を放つ符を水路の内部に貼っていく。外に光が届かなくなる位置に、確保しておいた光苔を置いておけば、後は勝手に明るくなるだろう」
クトーは言い、木符に『穴を掘る』紋を刻んだ符をレヴィとイーサ、ウルズにそれぞれ手渡した。
魔力を確保する方法を身につけた彼らなら、問題なく使えるはずだ。
「俺とスイキは、【土遁符】を作る。図柄はこれだ」
「とても用意周到ですね」
「まぁ、クトーだし」
「レヴィさんwww 大体それで済むの本当にヤベェんすよwww」
「ご主人様と同じくらいヤベェですね!!」
それぞれに感想を口にする仲間達に、クトーはメガネのブリッジを押し上げて答えた。
「その為の事前計画だろう」
水源を特定されない為に重要なのは、水路そのものの存在を隠すことである。
まずは水源から水が漏れないように慎重に初期地点を定め、そこから方角を指定して三人に掘っていってもらう。
ある程度進んだ時点で、入り口周りからある程度奥に進んだ場所まで、土を固めておいた。
これで、光苔が入り口の方向に繁殖する事はない。
掘り終わるまで地下から出ることはないため、水を少しでも早く王都に届けるために、段階的に壁を作り、水を穴へと誘導しておく。
そこから、延々、スイキと共に光の符と土遁符を作成し続けて穴掘り三人組に供給。
コンパスを見ながらきちんと位置を修正して、王都に着いたのは掘り始めて三日後のことだった。
「終わった」
慣れない地下生活で疲労困憊になり、眠った他の面々を放っておいて報告に向かったクトーが詳細を伝えると、アルゴは呆れたように溜息を吐いた。
「お前は化け物だな」
「必要な資源を一両日で揃えたお前に、そのまま言葉を返そう」
実際、方法があっても手段がなければ、こんなに早く水源は確保出来なかったのだ。
「他に何か問題は?」
「アレク将軍の方から報告は上がっている。どうやら、奴が警告した皇国の将軍とやらが、こちらを襲撃する為に出方を伺っているようだな」
「どうする?」
その問いかけに、アルゴはニヤリと笑った。
「俺に戦闘能力はない。得意な連中に任せるさ」
「では、二日の休暇を取り、出撃だな。相手の手勢は読めているか?」
「おおよそ200、らしい。報告を信じるなら、だが」
「アレクは、嘘はつかんだろう。共食いを狙うより、彼自身が攻めた方が早い」
「違いない」
この国最大の戦力は、知る限りクトーとレヴィを除けばイーサとウルズ、そしてこの間出会った、エルフィリアと呼ばれる女性だ。
万一に備えて残ってもらったが、アルゴはまだ『ベラ』という名の手札を残しているらしい。
詳しい事情はわからないが、その女性とエルフィリアさえ残っていれば、しばらくは持ち堪えるという話だったので、クトー達は出かけたのだ。
二人は、アレクの母国から来たが敵陣営であるという将軍を潰す為に、計画を練り始めた。
だいぶお待たせしている(ほぼエタっていると言われても文句は言えない)クトーさんのお話ですが、一応続きを書く意思はありまして。
読んでいただいている方も居られるようなので、隙間を見て更新して行きます。
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