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最強パーティーの雑用係〜おっさんは、異世界で休暇の日々を過ごすようです。〜  作者: 凡仙狼のpeco


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17/27

おっさんたちは、蒼将と話し合うようです。

 

 数日後。


 不審な龍影を確認、という報が入った時、クトーはちょうどアルゴと一緒にいた。


「……来たか?」

「行こう」


 オールバックの髪に軽く指を通して、片頬を上げるアルゴに声を掛け、クトーは白い外套の裾を翻しながらきびすを返した。


 その途中、庭で鍛錬かじゃれ合いか、どちらとも取れる騒がしさで遊んでいたレヴィとウルズ、それを見守っていたスイキも連れて、外壁の上部へと登る。


 細い、見張り塔への足場に立ったクトーが空を見上げると、そこに巨大な蒼龍が舞っていた。


「……色龍しきりゅうか」


 その美しくも威圧的な姿から、クトーはそれが上位龍であることを察する。


 色龍とは、鮮やかな単一色を持つ属性龍を指す言葉で、クトーが以前倒した黒龍もこれに該当する。


 おそらく宙に浮かぶ龍は、Sランクに相当する存在だろう。

 その背に砂色の髪と長い槍を持つ青年の姿を視認し、クトーは目を細める。


「魔獣を使役する者……魔族か?」


 人に似た骨格を持つ龍族は、細い蛇型に近い竜族と違い、基本的には気性が荒く人類に敵対的な存在だ。

 ワイバーンなどの翼竜とも違い、人に馴れることはほぼない、魔王の眷属だと目されている。

 

 クトーの疑問に、両手を腰に当てて同じように龍を見ていたアルゴがこちらに目を向けた。


「人に見えるが」

「アルゴは、魔族を見たことがないのか」

「ない。魔族の国があるというのは聞いたことがあるが」

「ああ」


 クトーの知る限り、正確には、国というよりも魔族の住む島があっただけだが。

 些細な話ではある。


 そこで、額に手を添えて陽の光を遮りながら蒼龍を見ていたレヴィが、小首を傾げる。


「でもなんか、乗ってる奴の気配は普通に人っぽいけど。ねぇ、むーちゃん」

『ぷにぃ!』


 肩に乗る、毛玉のような二等身の小竜が、彼女の言葉に元気に答えた。


「あれは……! 遠目からも分かる、ちょっと胡散臭い系のイケメン……!!! ドラゴンもめちゃくちゃ美しいですねぇ!!!」


 続いて上がってきたウルズは、どうやら相手の姿が見えているらしい。


 相変わらずな様子で、テンション高めに器用に狭い壁の上をぴょんぴょんと跳ねる彼女の、さらに後から上がってきたスイキが、龍を見上げて軽く目を見開いた。


「ランジュ……?」

「知り合いか?」


 口にしたのが名前のように感じられたので尋ねると、少女は頷いた。


「はい。……この先にあるミショナの街の領主であり、帝国の将でもある〝蒼将〟アレクの乗龍です」

「ほぉ」


 スイキの言葉に、アルゴが笑みを深める。


「話が通じそうな奴が来た、と思っていいか?」

「それは分かりません。この場に現れた目的次第です」

「では、話しかけてみよう」


 クトーは、作るのに馴れるために様々に作っていた符の一枚をかざす。


「〝運べ〟」 


 呪言に反応したのは、風の符である。

 精霊に呼びかけ、人の声を遠くに運ぶその符が声の届く範囲を広げた。


「俺はクトー・オロチ。蒼き龍を従えし者に問う。何者だ?」


 クトーの呼びかけに、少し間が空いた後に返答があった。


『従えし、というのは少し語弊があるね。僕とランジュは友だよ』


 距離が離れているので表情は読めないが、どこか軽い声音にはおかしそうな色が含まれている。


「笑ってるわね」


 目の良いレヴィには相手の表情が見えているようで、警戒するような色がありありと浮かんでいた。


「なんかこう、サマルエみたいな胡散臭さがある感じ」

「余計に怪しく見える評価だな」


 龍と共にあって魔王の如き性格をしているというのなら、それはやはり魔族ではないのだろうか。


 そんな風に思いつつも、レヴィが『魔族ではないだろう』と最初に言った以上、おそらくその評価は正しい。

 元々感覚的に鋭い彼女の直観は、現在、勇者に匹敵するほどの能力に裏打ちされているからだ。


 もし魔族であれば、その気配を察せないということはほぼあり得ない。


「何の用でここに来た?」


 スイキが口にした龍の名と、彼が口にした名が一致したので、おそらくあの背の上に居るのが蒼将アレクであることは間違いないだろう。


 軍や街を預かる者が単騎で……しかも、相手からすれば正体不明の街へ訪れるのは……不用意極まる行動のように思える。


 が、自分の腕に自信のある為政者で同じような行動を取る者を数人知っているので、そこに関してはあり得ないとまでは言い切れない。


『僕はアレク。うちのお姫様を迎えに来た、と言ったら、通じるかな?』

「何の話か分からんな。具体的に述べろ」


 お互いに探り合っている状態で、相手の質問に馬鹿正直に答えてやる義理はない。


『おや、強硬な姿勢だね。君の横にいる、朱い髪の少女の話だよ。……僕の声は、君にも聞こえているんだろう? スイキ』

「はい」

『君が襲われていた、という話を聞いてね。なんでこんなところにいるのかな、と思って見に来たんだよ。謎の街にも興味があったしね』

「気にかけていただき、ありがとうございます」


 全く緊張を感じない声音に、淡々とスイキが答える。

 それを聴きながら、クトーはアゴを指で挟んだ。


 ーーーおそらく、話が通じる相手だな。敵対の意思もなさそうだが。


 レヴィの言う通り、それだけではない感覚はある。

 そもそも敵対するつもりがあるのなら、報が入ってからいくらでも攻撃を始めるタイミングはあっただろう。


「少し、口を挟んでもいいか?」


 スイキが気を許さない様子ながらも、敵と看做みなしているわけでもない、というのをアルゴも感じ取ったのか、口を挟む。

 

 彼女の事情からすれば、アレクは実際に敵ではないだろうことも、話を聞いて知っていた。


『どうぞ。君は誰かな?』

「このペンタメローネ王都で、冒険者ギルド総長を勤めているアルゴ・リズムだ。王より、ある程度交渉権を委任されている」


 豪胆で冷静な男は、戦闘能力のない彼自身を一撃で吹き飛ばせる龍を前に全く臆さず、淡々と述べる。


『冒険者ギルドに、王都……? 聞いたことがないな。どういう事かな?』

「理由を知りたければ、話し合う準備がこちらにはある。アレク殿にその意思があれば、情報交換の場を設けたい」

『ふーん……』


 アレクは、担いだ槍を動かして肩を軽くトントン、と叩いた。


『そうだね、街の謎も気になるし、君たちとの関係をどうするかに関しては、話をした後で決めても良いけど。スイキの身柄に関する話を、先にしたいかな』

「俺たちに彼女を拘束する意思はない。そちらと知り合いなら、出ていく分には止めないが」


 チラリとスイキに目を向けたアルゴは、さらに言葉を重ねた。



「ーーーそれは、彼女自身が決めることだ。違うか?」



 アルゴの口にした言葉に何を思ったのか、スイキが軽く肩を震わせて、アルゴを見る。


『おっしゃる通りではあるね。なら、スイキに聞こう。どうするの?』

「ここにいる事情は、お話します。ですが、今のところミショナに戻るつもりはないです」

『理由は?』

「……救世ぐぜの定めに関わる行動である、とだけ」

『なるほど、なるほど……』


 アレクは納得した風な仕草を見せた後……突然、強烈な戦意を発した。


「!?」

「にゃ!?」


 レヴィが身構え、ウルズが銀の尾を逆立てて即座に反応し、アルゴはクトーと同様に特に何の反応も示さなかった。


「どういう意図があっての、威圧だ?」


 クトーが問うと、アレクは戦意を引っ込めないまま、ゆっくりと槍を肩から離す。


『結構簡単な話ではあるんだけど。スイキの意思は尊重するし、君たちとの交渉のテーブルにつく気もある。その上で、僕からすると、君たちがスイキを預けるに足る人物かどうか、見極める必要があるんだよね』


 ーーー必要がある?


 自分の意思ではなく、他の誰かに対する含みを持たせているような声色だ。


『そうだよ。スイキは大切な存在で、同様に彼女の存在を大切に思っている者たちがいる。自分の思惑のためだったり、あるいは僕の従姉妹いとこのように、スイキ自身を好ましく思っている仲間だったり、事情は様々だけど』


 そこで、蒼龍ランジュが大きく広げた翼を軽く羽ばたかせて、ゆっくりと近づいてくる。


『僕自身は、君たちが信用出来そうに感じている。でも直感だけで理屈なくスイキを預けたら、これは彼らに僕自身の申し訳が立たない。……だから、個人的な理由で悪いとは思うけど』


 近づいてきた蒼龍は、近づくとさらに巨大さが実感できる。


『スイキを預けるに足るかどうか、君たちの実力の方も知りたいんだよね。だから、僕とやり合える程度の実力があることを、証明して欲しいんだ』


 その首の裏あたりに立つアレクは、砂色の髪と服の裾を風にはためかせながら、涼しげな笑みを浮かべていた。

 肉声の届く距離に近づいてきた彼は、槍の穂先をこちらに向ける。



「ーーー下に降りて来なよ。掛かって来るのは、全員まとめてでも良いからさ」


 

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[良い点] 殴り合って友情を深める 昭和の良き風習ですなw
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