何ってたって、必須アイテムをゲット!
大下さんは、まず地元の人に聞いて、
電器の大手量販店に、全員で行ってみることにした。
通路のど真ん中の中ほどに、ヨダレが出そうな、新しいノートパソコンがずらりと並んでいる。
コウジたちは、どんな機能があるか、新製品を物色していた。
大下さんは、人の良さそうな店員をつかまえて、長い時間、説明を聞いていた。
「いいですか~、ノートパソコンでも接続の方法は大きく四種類ありまして、 社内LANや自宅LANでルーターや、モデムとケーブルと接続する方法とか」
「はぁ?」
「ノートパソコンに内蔵の無線LANで接続する方法。でも、どこでもつながる訳ではなく電波を拾えないとダメです。 又、セキュリティの注意も必要です」
「ふむ」
「無線LANがないパソコンに無線LANカードを差して使う方法もありますね」
「まぁ、WI-FIのあるところなら大丈夫ですけど…」
「…」
全然、ついていけてない。
「FOMAカードや携帯電話を使って接続する方法。 これには、契約方法や料金に注意が必要で、百万円以上請求を受けた事例もあるそうですよ~」
「うっ、百万円」
その金額に、怖気づいた大下さんは、
結局、ノートパソコンの無線LAN機能を進められて、
安定&安全のためのFOMAカードも購入していた。
そして、くれぐれも、
「ノートパソコンは振動に弱いですのでお気をつけ下さいねぇ!」
「車の中では、ダメなのか?」
「いえ、そういう訳ではないですけれども…」
店員も笑っているし、大下さんも、愛想いを浮かべた。
大下さんの、様子を見ていると、全然分かっていない風に見える。
大下さんはこの店で、一番頑丈で、壊れにくいのを選んだ。
(やった~、これでこの上なく極上の生活ができるというもんだ~)
コウジは、ゴロスケと二人で顔を見合わせてにんまりした。
成っちゃんが、スンちゃんが、ディスプレイ用パソコンのネットが使えるヤツで、夢中になって食らいついている。
「あった、これだ~」
水を得た、魚のように。
「何、何~」
雪ネェも興味津々。
「大下さ~ん、これ見て!」
いささか、言いなりの
威厳を失った感のある、
大下さんが気のない様子で、覗き込んだ。
みんなが、ノートパソコンを覗き込んだから、
当然、頭をゴツンと勢いよく打った。
「痛てっ!」
「うん、スンちゃんと二人で以前から、覗いてたんだ。なぁ?」
成っちゃんが、少し遠慮がちに言った。
「あの、せっかくインターネットができても、プリントアウトできないと、覗くだけでは、頭にはいんないと、思う~」
「つまり、プリンターも必要ってか?」
「うん、それとウイルス対策のソフト、A4コピー用紙と、
ファイリング数冊、ノートとペンと日本製のCD、DVD、カラープリンターのインクカートリッジ、それと買い置き分。パソコンも2台あればいいよな~」
「あ~、本当にこんなに必要なんか?」
「絶対、必要!」
全員が、断言した。
「それと~、」
雪ネェが言った。
「何だ!」
「これから、全国回るんでしょ?
ナビが必要だと思うんだけど・・・」
「カーナビか? 地図じゃ駄目か」
「うん、ここがどこだか、分かるでしょ! 来る時、地図こっちに広げられて、見ろっていったって、現在地が分からないのよね~。道曲がったら、地図も回さないと~、でも字は逆さまになるし~。私、車に乗ってる時に、こんなの読むと酔うんだわ~」
雪ネェも、女性に多い地図の読めないタイプらしい。
「・・・」
「現在地、さっき調べてたみたいだけど、
GPS付きの、瞬時に更新できるいいのが欲しい~♪」
「ううう」
大下さんが、唸っている。
「地図じゃあだめなのか、地元の人に聞いて~」
「田舎って人家がポツンとあって、人いないんだよね~」
スンちゃんが、シビアな声でボソッと言った。
「あったよ、ネットで調べたもん、ほら~」
ただ単に、店内の展示品を使って、
この近くでカー用品を売っている店を検索して、
地図を出しただけなのに、
「おお~っ」
大下さんは、ネットの便利さに新鮮に、感動したらしかった。
すぐさま、近くのカー用品のチェーン店に行って、ゲットした。
「バックする時もモニターに映るように、バックカメラも買っちゃえば~?」
店員と、雪ネェの口車に乗せられて、また出費。
「そうか~、必要か?」
「こんな、大きい車で、もしも事故が起こったら…」
コウジとゴロスケは、こっそり陰口を叩いた。
「結局、何のかんの言って、女の特権使ってるよ、雪ネェ」
「ああ、自分の女性的なところを排除しようとしている割にはね」
「いいなぁ、女は~。いざという時、女の特権使えばいいからさ~」
ちょっと考え方がヒモっぽい、ゴロスケらしい言葉だ。
大下さんは、女性に甘い。
ってゆうか~、接し方が分からないんじゃないか? コウジはふと思った。
「すげぇ~、海辺の町なのに、山々に囲まれているでしょ。それでもって、生活用品は、何でも揃ってて、店と店がとても近いっス。
これぞ、コンパクトシティだネェ。俺、老後はこんな町に住みたい!」
ゴロスケは、30代でもう老後の話をしていた。
成っちゃんとスンちゃんは、
「都会暮らしも長いから、自然に飢えてて、近くの山を散策して来る」
と言って、スタスタ歩いて行く。
「これぐらいが、丁度いいね~、自然の緑と人口密度の関係…」
とかいいながら…。
振り向きざま、携帯を高く掲げた。
連絡は、携帯でという意味だ。
カー用品店は、混んでいて、取り付けるのにだいぶ時間がかかるというのだ。
コウジたちもこの辺りを、散策することにした。
「お~い、待ってくれ~」
「よし、2時間後にここに集合!」
大下さんが、後ろから大声で叫んでいた。
モチロン、お互いの携帯番号は登録済みだ。