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森のキャラバン  作者: 森のキャラバン
50/53

早いもので、クリスマスの次の師走…。

ポツン、ポツンとある民家、

森のキャラバンのメンバーは、

そこで、想像し得なかった光景を見た。

朝、古民家に行って見ると、何やら大勢が集まっていた。

「やっぱりな~」

コウジの予感が当った。

村中に聞こえる、朝一に防災用の放送で、呼びかけたらしい。

地区の人が総出で集まって、餅つき大会になった。

「若いもんが来てくれたから、久し振りに臼と杵で餅つきが見られるぞ」

と言う訳だ。

「もう、こういう機会もないかも知れないから、しっかり観ときな~」

小さな孫たちに、爺さんが言い聞かせた。お母さんら若い人たちは、どういう訳がいなかった。

「遠くの町まで、車で勤めに出てるからね~」

「ふ~ん」

現金収入があれば、出ることもなかろうね~。

水に一晩浸けて白くなったもち米は、竹のザルにいくつもの山を築いていた。

「これ、全部やれってか?」

大下さんが、悲鳴に近い声をあげた。

「腰が…もつかな?」

シバに火を点け、やがて薪に炎がチロチロと上がった。セイロに木綿の大きな蒸し布を敷き、その中にもち米を見ず知らずのおばさんが入れた。杵も、一晩水につけられていた。いきなりだと割れるんだそうだ。

山のような餅を入れる木の浅い箱が積み上げられ、みんなが喜んでいる。

「こんな若い人たちが、沢山来てくれて餅をついてくれるなんて、嬉しいね~」

お婆ちゃんや、お爺さんに笑顔が広がった。

やがて、蒸しあがり、おばさんが蒸し具合を確かめた。

「よしっ!」

「せ~の~」

おばさんが石臼にもち米を、セイロごとひっくり返して入れた。

「杵を持っている人、ごりごり押して!」

大下さんが、体重をかけて押した。しゃもじでひっくり返して、へばりついているのを真ん中に寄せた。だんだんまとまって来た。

「餅らしくなって来たな~」

それからが、本番だった。

手水をつけたおばさんが、時々餅を触った、それが次第に底の餅をひっくり返し出した。

「はいよ」

ペタン

「はいな」

ペタン

リズムで、餅を搗くのは、さすがに大下さんはうまかった。しかし、すぐへばった。

「おい、スンちゃんやって見ろ」

スンちゃんに代わったとたん、リズムが狂い出した。


ゴチン


「あ~、へりを叩いてしまった~」


ゴチン


「二回叩いたところで、選手交代!」

言いだしっぺの成っちゃんが、杵を持った。

さすが、小さい時に、見ていただけのことがあって、テンポが遅いながらも、コツを掴めていた。しかし、すぐ持ち上がらなくなった。次は、ゴロスケ、危なっかしいが、意外とイケてる。しばらく続けた。

「手水を、次に、コウジやって見ろ」

大下さんの命令で、コウジがやった。

「熱~い」

手が真っ赤だ。慌てて、手水のボールに手をつけた。ウケ狙いの訳でもないけど、大勢の笑いが響いた。この熱さを平気で触れるのは、信じられない。

「拍手で思いっきり、両手を叩いてご覧」

コウジは、バシッ!バシッ!と手を叩いた。

すると、不思議に、熱さが耐えられた。餅は触れても、上からの災難もある。

「おい、手を叩くなよ」

逃げ腰で、餅をひっくり返す。大勢の村人に囲まれて、もう御用納めの役場の人も駆けつけた。地方公務員は、巻町並みに忙しいのか?地方公務員は、サービス業化していた。

「私にも杵を、貸して下さい」

三田さんは、慣れているのかと思ったら、割りに、下手だった。

「すいません、イベントは普通、餅つき機を使いますので~」

ナヌ?そうは思ったけど、機械で搗くより美味しそうだ。何より、こんなに人が集まらなかっただろう。それにしても、小さいお婆ちゃんたちは、みんな十何人揃って一メートル四十センチぐらいしかない。昔の人の栄養状態なんだろうか?

キメが細かい餅肌のようになって、木の長方形の箱に持ち上げて、移した。

すると、今まで傍観者だった、婆ちゃんたちが、共同作業で、餅をちぎる

人、アンコを入れる、粉を敷いて丸めて並べる人になった。

「あうんの呼吸だな~」

最初の半分は、丸餅にして、硬くならないうちに、すぐ大根おろしを入れたボールにつけたり、黄な粉の皿に入れたりして、アンコ餅共々、みんなの口に入った。

次の餅米が蒸しあがるまで、好みの餅をたらふく食べた。

「大根おろしは、胃にもたれないから~」

昔、聞いたタカジアスターゼのことを思い出す。

森のキャラバンのみんなは、全員が順繰りに、力を使った。雪ネェもつく。薪割りもそうだけど、なかなか上手い。まぁ、店主はへなちょこだったと知れたけど。

「雪ネェは、前世で、武士だったの?」

成っちゃんの一言。

「まさか!」

しかし、ポニーテールにして居合い抜きの剣士のようだ。

みんなに雪ネェと呼ばれ、年上の大下さんにも、雪ネェと呼ばれ、まるで、一番の年長者に聞こえてしまう。雪ネェは、それでも平気だ。


セイロのもち米を何回も運んで、それは、永遠に終わらないかのように感じた。

「は~」

息があがっているし。汗びっしょり。

臼でついたのをそのまま木のばんじゅうに伸ばして、ナマコ餅用にするのにしたり、大きな鏡餅用にしたり、ヨモギを入れたヨモギ餅にしたり、アレンジも楽しめる。

「今年は、本もんの杵つきだわなぁ~」

「みんなの汗も、入っとろうがぁ~、いい味出るが~」

少し訛ったほくほく声が漏れて来た。それだけ、毎年、淋しい正月なんだろう。

「じゃあ~、みんな、それぞれに持って帰って下さい」

役場の人が言うと、ばんじゅうを手に手に、軽トラや軽ワゴンに入れた。

「ありがとう~ね」

精一杯の笑顔と、心のこもった言葉で、みんなに感謝された。

「いえ、どういたしまして」

コウジたちみんなも、笑顔が自然に出る。

やがて、車に乗り込み、ドアを閉める音が、バシバシ響くとエンジン音と共に、去って行った。年末は、主婦業は慌ただしいのだ。仕事が残っている。


「あの~、これ感謝の気持ちです~」

役場の人から、お礼の封筒を大下さんが頂いた。

「いや、そんなつもりでは、」

役場の人も、手を引っ込めない。

「それじゃあ、ありがたく頂きます」

我々に残ったのは、鏡餅とそれに乗っけるダイダイと、丸餅、ヨモギ餅、ナマコ餅(少し硬くなって来たら、包丁を入れて四角く切ると切り餅になる。それをもっとスライスして、乾燥させて、炭火で焙ると、かき餅のようになる。油で揚げてもイケる)


「あれっ。ウソだ~」

いつの間にか、杵も石臼もきれいに洗われて、乾かされていた。


「あの台から、石臼を外して洗ったのは、誰なんだろう~ねぇ~?」

僕たちでは、なかった。

誰か火事場のバカ力で、やったのだろうと言うことになった。


「さあ、まさかあの、お婆ちゃんたち?」

みんなが、笑った。


「この当りの大きなスーパーを教えて下さい。おせち料理を作りたいから~」

雪ネェが、突然言い出した。


「え? やんの」

ゴロスケがびっくりした。


「う~、まぁ。本音を言えば面倒臭いけどね~」

声がトーンダウン。

「やっぱ、よそうかな~」

声がもっと、ピアノソモになった。


役場の人が電話で頼んで、さっきのおばさんに頼んで、分けて貰うことにした。

雪ネェは、今年、ずい分頑張ったから…。


年末年始は、どっか温泉にでも出かけることにして、骨休めすることにした。

「これで!」

大下さんが、さっきの白い封筒を掲げた。


「やった~」

みんな、バンザイをして喜んだ。



人生初めての餅つき大会。

すると、どこから人が湧いたのだろうというぐらい、おばあちゃんがいっぱい現れた。

みんな、背が低くて頭の位置が揃っている。

余談だけど、ガリバー旅行記の小人の国のモデルは日本だってさ。

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