チャンス到来! 夢の・仮・実現
床のギシギシは、これで心配なくなる。
他に屋根、今ドキ雨漏りの家に居ること自体が新鮮な体験だった。
「男は黙ってナントカビール」
ってのが、大昔CMであったけど、大下さんは、有言実行の人なのだ。
大下さんはまず、材木商の人を探して、買った。
材木商のつてで、大工さんを見つけて、おおよその見当をつけて貰って、揃えた。
コツも聞いた。大工さんのプロの指示で僕らは動いた。
まず、屋根瓦を一つ一つ剥がして、リレーで運んで片付けた。
腐った板を剥がして行った。
次は、屋根板を載せてトントンカンカン、釘と金槌で固定する。
大きさに合わせて、ノコギリでカットする。
ノコギリは器用な人ならすぐ使えても、カンナまでは使えない。
それに釘が真っ直ぐ打てない。
それどころが、はっきり言って、僕らは使いもんにはならない。
材木を持って、右往左往しているだけだった。
これは、まるで、プロの講師を呼んで、『あなたもできる、家の修繕教室』で、僕たちはその生徒って感じ、はっきり言って。
これじゃ、見習いで入っても使えない。
でも、この使えない僕たちが、便利がられた時代があった。
あっちへちょこっと、こっちへちょこっとと、僕らの何年分もの派遣労働は、キャリアを積むことにならなかった。
派遣されたら、また、一から積み木を積むのだ。
何でもできそうで、実は何にもできない若者を日本はいっぱい作ってきた。
『この道何十年』って重さが大切なのだ。
「プロには、久しくプロの仕事が来ない。会社を維持するには、赤字を避けたい。人を雇ってまで面倒を見られない。ネットワークと言うか、腕に覚えのある何人かが必要なら、同業者を通じてその人数を呼び集める。
競争相手がいっぱい要る中、ゼネコンの下請け仕事を請け負うためには、接待だって必要になる。エゲツないこともやらされた。大手ゼネコンって名前だけで、ピン撥ねして、うちらには、儲けは少ない。だから、NOと言って、会社を辞めちまったよ。で、食えないから、畑でもしてさ。暇しているのさ」
「なん~だ、移住して来た人なの?」
「そうだよ~」
「ある、メーカーの住宅だって、土台をアルバイト、使ってやらせたり、坪いくらって言ってるけど、オプションでこうして欲しいと言うと、追加、追加で、結局高くなる」
「家一軒建てるなら、家を買う人がうんと勉強して、業者を選び、材木を選び、設計図を読み、一々チェックしに、見に来ないといけない。変な家を買わされる。そんな時代に誰がした?」
「少なくても、僕らじゃないよな~」
賃金の安いアルバイトのやっつけ仕事で終わってしまう。後で、不具合が出ても、利益が上がらなくってその会社はもうない。
本当の仕事をやって貰うには、それ相応のギャラを払わねばならない。
二つあって、どっちを選ぶと言ったら、庶民はついつい安い方を選んでしまう。
屋根板を運ぶだけの単純仕事をしながら、コウジは考えた。
「その道で食って行けるほどの、報酬が必要」
「いい報酬を貰った以上、手抜き仕事はしない」
「その報酬が払えるだけの、お給料が貰える仕事をしていることが必要」
「すぐ駄目になる商品を買わない。店頭に並べない。そういうメーカーは、市場から排除させる」
「デザインの流行廃りをなくして、スタンダード型にする。二十年使えるテレビとか」
「デザインのマイナーチェンジ(ちょっとの更新)、あとICの基盤を交換するだけにするとか」
「一流とか、老舗とかに騙されない、ただそのお客さんにとって、本物かどうか?」
僕らが、ここに長居している間に、アメリカ発の大ニュース!
サブプライムローンの破綻で、リーマンの破綻、メリルも、AIGも異変。ゴールドマンも?今度は大銀行の破綻。
アメリカの経済がいよいよおかしくなったと思ったら、(韓国の年金をそれで運用していた。
日本の損失も同じくらいあるらしい)それでも、アメリカの金融破たんで、実質と無関係のお金の流れが止まるなら、大歓迎だった。
日本の三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行が援助の手を差し伸べると発表したのには、驚いた。破綻したアジア部門を買収するとか。
そんな日本を、イギリスから褒められたって、嬉しくはない。
本当に大丈夫なんだろうか?
それも誰かの指図なのか?
日本のお金が消えてしまわないのかな、心配だ。
それに、ゴロスケが言っていた、AS総理が誕生した。
今度は、密室で決まった訳でないけど…。
「日本は、これで良くなるのかな?」
みんなは、首を振った。
日本を再生する為には、まず悪い人を追い出さなければね。
まさか、編集したのかと思ったけど、テレビで、国民にマイクを向けられると、年配の人たちが、K泉元総理を惜しんでいるのだ。
「え~」
屋根の上で作業しているのは、大工さんや、ゴロスケや、大下さん。地面にいるコウジたちは、家の外壁がボロいので、補修するためのコンクリを練った。
大工さんに教わった通り、大きなベニヤ板の上で、スコップを持って、セメント、砂、砂利を混ぜ空練りし、混ざったところで水を少しずつ加えた。
水を加えすぎると『しゃぶコン』になるので、大工さんにチェックして貰った。
「ん~、もうちょっと水」
チョロチョロと流してみる。
「うん、こんなもんだな」
と言って、屋根の上に上がった。
これを練る。ハァ~クタクタだ。
「どれ、貸してみて」
「スンちゃん、いい感じ!」
「そう?」
自然と笑みが出てくる。
「生活保護が110万世帯だって」
突然、スンちゃんがこんな話をした。
「今度、規制緩和で、薬がコンビニで買えるようになって、ドラッグストアは、危機感を強めている。薬剤師がいなくても、薬が買える方向に…」
「ちょっと、スンちゃん、そのニュース口調でしゃべんの 止めてくれる?」
と雪ネェ。
「あ、ごめ~ん」
つまり、一般の国民が政治不信なのは、政府の規制緩和って、今、生きている生活の糧を奪っといて、生活保護者を増やす政策なんだ。
普通に考えれば、国民が元気で明るく働けて、喜んで税金を払って貰って、国民のためにいいことをして貰うために税金を使えばいいのだけど、なぜか、そうはならない。
「ロックフェラーなど一部の金持ち連中が、日本の資産を奪いアメリカの穴埋めに使うために350兆円のお金を狙ったことが多くの国民にやっと知られるようになった」
って、誰かが言っていたけど、まだ、全然知られていない。
「その元K首相を崇拝しているってことは、国民は、悪魔崇拝になるのかしら~?」
本来の雪ネェの元気が戻って来た。
「…間接的には、そうなるな」
コウジが追加で説明した。
「日本の長いことゼロ金利政策が続いて、それって、アメリカの指示(政策誘導)」
によって長期化しているのだ。
『宣戦布告「NO」と言える日本経済』石原慎太郎・著で述べたドル還流装置の維持のためにアメリカは日本の金利をアメリカより低くすることを常に要求してきた。(石原慎太郎のブログより引用)」
日銀の○○総裁って偉そうに響くけど、それもできないのだ。
「なるほどね~。だから、石原さんは、総理にはなれなかったのか。だんだん見えてきた」
雪ネェ。
「派閥が小さいからなれなかったと、ず~と思った」
と、成っちゃん。
「僕は、偉そうにしているからだと思っていたよ。東京人はいいけど、地方のことはバカにしているよな」
「本当は、アメリカを恐れる日本の政治家が彼の出番の邪魔をしたということになるね」
「彼が総理になっていたら、やっぱり恐くて出来なかったかも知れない、蚊帳の外にいたから言えたんだ」
そうとも言える。
「じゃあ、今まで外資で運用をして来なかったから、日本の国民は、損をしたんだと言ってた、T氏はアメリカよりだったのか?」
「うん、分かんないけど。評論化は、自分でやらないじゃん。後出しジャンケンみたいに、結果を見て言うだけに見える。それに、テレビから消えた評論家もいる。そういう人は、日本にとって、本当はいいことをしゃべっていたんだろうね~」
「例えば?」
「M氏」
「ああ、そう言えば居たよな~」
今頃になって、テレビでコメントしている人が、日本の国民思いの評論家か、そうでない評論家かが見えてくる。
いや、どっち派か?はぐらかしているからよく分からない。
要するに国民は、一人一人が自分で政治を考えないといけないんだ。人に考えて貰うんじゃなくてね。
「日本の政府はゼロ金利を長々やって国民のお金が外資に流れるようにワザとしていたってこと?信じられないな、閣僚も誰も止められないの?」
と、成っちゃん。
「優秀な官僚が、どんどん退場している。それは、身から出た錆だから仕方がないけど、昔あった、『ノーパンしゃぶしゃぶ事件』もそうだった」
雪ネェ、が笑いながら言った。あの時、国民は呆れた。
「あ~、はいはい。そんな事件があったね~」
まんまと罠に嵌っちゃってくれちゃって。
「いつか、紙切れになるかも知れない儲け話を銀行が薦めて、庶民が高金利に目が行って買う」
その集めたお金は、優秀な日本の企業の乗っ取り、ハゲタカファンドだったりして。主導権を失った企業は、株主の利益のため、人件費を削る。仕事をしても食えない人が増える」
それで僕たちみたいなのが増えたんだ。
「それに、オレオレ詐欺だとかで、お年よりは、簡単に大金を騙し取られているよね~」
「よくそんな大金があったよね~と、いつも思う。それだけの大金がもしも、正しいことに使われるなら、みんな喜んでそのお金を貸すだろうに」
そう、成っちゃんは、時々、超いいことを言う。
「日本の循環するお金が血液だとしたら、日本は、失血死寸前?」
良心のある人も、嘆くこの世。
「ゼロ金利なら、借りるのもゼロ金利にすればいいのにね~」
そうはならないのが世の中だ。それにしても、もっと金利を安くできないのかな。
「イスラム圏では、そういうのがあるみたいだよ」
そうだろう、理論で行けば、できる筈なんだけど。
「旧約聖書には、利子を取ってはならないって教えがあるらしくて、その流れを汲むイスラム教がやっている」
「ユダヤ資本は、真逆じゃん」
「利子が『時間泥棒の正体だ』と言ったのは、「モモ」を書いた童話作家のミヒャエル・エンデ」
国民が奴隷のように働いて、なお且つ食えないのは、人件費が安いから、でも日本は人件費が高いとやって来る外国人労働者がいる。
ここで住むのは物価が高いから、うんと節約して仕送りしている。
日本の農民が一生懸命作っても農産物が輸入品より高くなってしまうのも、『レート』が違うから。この『レート』っておかしかないかい?
国によって、ランクがあるの?貧しい国の労働者は輸出するほど食糧がないのに…、働いてもガリガリ。
アメリカ人の失業者はどうしてあんなにデブなの?
つまり働かないのに、食えるの?
しかも、アメリカは世界最大の対外債務国だよ!」
雪ネェが力説しているところで、店主がやって来た。
「あの~」
「はい?」
「僕は、両親のいる老人ホームに会いに行くので、もし、店にお客さんが来たら、雪ネェさんお店頼みます」
「…」
僕らは、びっくりした。
「え~、行っちゃうの?」
「ちょっと、待ってよ、う~ん」
雪ネェが考え込んでいる。
雪ネェの企みとしては、じゃあ、好きにしていいのよね? だろ。
「いつも暇だし。そんなに、お客さんも来ないと思いますんで…すぐ戻るつもりです~」
ハア、そんなもんか。
「…じゃあ、行ってきます」
店主は丁寧にお辞儀をした。
「行ってらっしゃい。知らないわよ、お客さんに変なもの出しても!」
雪ネェは、一応、確認のため聞いた。
「ハイ、いいです」
雪ネェは、満足そうに頷いた。
「ああ~、ちょっと待って」
雪ネェは、店の方へ行って、ミーティングに行った。
食料品は、どこに何があるのかの確認だろう。
僕らは、無言で見送った。
店に、二人が消えたところで、
「大丈夫かな? 雪ネェ…」
成っちゃんが心配そうに言った。
「雪ネェなら、度胸があるから、大丈夫だろ」
コウジが言った。
「そうじゃなくって、…店主に嫁さんが来たって思われないかな?」
「…ああ~そっちか」
僕らは、顔を見合わせた。
村人が一人来たら、噂が一気に広まる。しかも、雪ネェは主のような顔をして切り盛りするだろうし。
その日、店主はとうとう帰らなかった。
「マジですか~」
ゴロスケでさえ、驚いた。
僕らは、その日で、モルタルの壁の隙間を修復した。
慣れた手つきで、すべてを片付け、晩ごはんを雪ネェが作って、食べて寝た。
このままでは、外観が悪いからと、マナコ壁用の粉をいっぱい買ってきた。
コテで外壁全体を塗るのだ。
焼き上げ温度が高く、水が浸み込みにくい優れものである。ナマコ壁は、中はモルタル壁でも、漆喰と見紛うしゃれた仕上がりになった。
後は、屋根瓦だ。
ひょんなことから、喫茶店のオーナー気取り・雪ネェはりきる!




