表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森のキャラバン  作者: 森のキャラバン
42/53

お仕事の予感がする

ここの店主は、まるで森のキャラバンのチームに居てもおかしくない、天然キャラだった。

ってゆうか、土地を持ち、定職を持っているだけ、リッチなのだろう。

「じゃあ、どうすれば地球が元気になるか?・・・だよな」

「縄文時代に戻るといいんじゃね~」


ゴロスケは、あくせく働かなくても、のほほんと生きて行けた、あの時代にあこがれてしまう。

タイムマシンがあれば、迷わず直行しただろう。

しかし、精神学協会を知って、人間の総決算という今、ジタバタして、進歩の跡を見せなければならない。


「森の片隅に人間がありがたくも、住まわせて貰っていると、日々感謝して生きる!」

ゴロスケなりに、優等生の答えを出したつもりだった。


「ところがさ~、縄文時代にも、環境破壊があってね、栗がおいしいからって、栗ばっかり植えて、小規模な自然体系が破壊されて、そこに住めなくなったんだ」


「へぇ~、あの時代から!そうなのか・・・」

人類は、失敗の連続だった。失敗しては、転び、失敗しては、転び、大多数の間違った想念の人間と、極々少数の正しい人間の世界の二極化になり、行き詰まった。

そうして、とうとう僕たちの時代になった。


「アグロフィレストリー」

コウジが一言つぶやいた。


「?」


「何か、聞いたことがあるような~」


成っちゃんが、必死で脳裏の記憶の中を探していた。とっ散らかった部屋の中で、昔の手紙を探すように・・・。


「ヒントを一つちょうだい!」


「素敵な宇宙船地球号だっけ・・・?ブラジル・アマゾンの一番大きな開拓村に、トメアスという土地があって、日本人の開拓団が入植した。一家族あたり25ヘクタールの土地が与えられて、苦労の末、コショウを栽培したんだ。でも、単一作物だったから、ある時、一夜にして全滅しちゃってどん底に落ちた」


「そりゃま~、大変だ~」

ゴロスケが言った。


「農業指導者である、坂口マモルさんがアマゾン川の先住民の暮らしをヒントに、いろんな作物や木を一緒に栽培する『混植』を始めた。一つが駄目になっても、他の作物があれば助かるからね」


「一つが駄目でもか…」


「だって、アマゾンって毎年、東京都の約10倍もの面積の森が焼かれて、酸素の供給源が失われているんだよね~」


「で、何か紙ない?」


店主が、新聞のチラシを持って来た。コウジがそれに、書き込んだ。


森林農業=アグロフォレストリー


①最初に森林を伐採して、焼畑・・・その灰が、土地の肥やしになる

②一~二年は、トウモロコシ、野菜、稲を育てる。

③コショウ、ランブータン、プシュリ(薬用の葉)の混植。六~七年はそれで収入を得られる。ゴムの苗を植えておく。

④ナッツ類、カカオ、ゴム(もちろん樹液を利用している)、アサイー椰子、大きくなったら伐採して、木材に利用する。高木の陰に日陰を好む植物を植えて、共存させる。   大家族のように!

⑤アグロフォレストリー(森林農業)は三十年から四十年かけて輪作し、また、最初から焼畑にする。


「見事な、循環だね~」


「植林は百種近く、トロピカルフルーツも五十種栽培していて、トロピカルフルーツの十五種類のジュースも日系移民たちが作った農協で、流通ルートに乗せられるようになって、見事に自然と経済を両立させたんだ」


「ふ~ん」


それと、ネットで調べて分かったことは、オークビレッジの稲本さんが、ブラジルへ行って、家具作りの指導をやっているんだそうだ。

坂口さんにしろ、中国の砂漠地帯を緑化に尽力した遠山さんにせよ、日本人が海外まで出向き、海外の人たちを指導する話を聞く度、日本人は素晴らしい民族だって胸を張って言える。

アフガニスタンに散った、伊藤さんもそうだったように、日本人はこの地球から、特別な役割を与えられている気がする。

日本人はいい教師で、世界のお手本なんだ。

少なくても僕たちは、この国に生まれて来て、まだ何にもできていないけど、何かをやる為に生まれて来たんだと思うようになった。


「例えばさぁ~、日本で、この山もそんなことができるかな?」


店主が言った。

少なくても、昔は山守がいて、山を管理し、材木が高く売れたけど。

今は輸入材に押されて、いかんせん収入の方が少ない。

自然災害を食い止めてはいるはずだけど、みんなからありがた~く思われているわけではない。

色んな種類の作物を植えて、移り変わらせながら、生活できる。

そのモデルが作られればいい。

山一つあれば、一年中食べて行ける筈なんだ。

日本の昔は、そうだったから。


「春は、タケノコ、山菜。自然薯、秋は、キノコ、椎茸の栽培、あわよくば、サルノコシカケ。栗、柿、アケビ、お茶の葉の栽培、みかんも畑にできるし、竹炭、杉や松の材木、こんなもんしか思い浮かばないけど?」

少し悲壮でもある。


「何で、ブラジルで胡椒が一夜で駄目になったかって言うと、胡椒は日陰を好む植物だったんだ」

炎天下に一面胡椒を植えられてもうまく育たない。

その適材適所に気づいて、うまく世話をやれば、自然はその力を発揮する。

知恵があれば、困難な状況でも切り抜けられる筈なんだ~。


ポッチャン! パッチャン! ビッチャン!


時々、洗面器、バケツ、鍋に雨だれの音色が響く、暗闇の部屋の中。

みんなは、古い家の中で、雑魚寝していた。


僕たちは案の定、ここに泊まったのだ。

大下さんは、店主と交渉した。

ここに泊まらせて貰うのと引き換えに屋根の修理を買って出た…。


「そう言えば、何で、日本の山に杉の木を植えたかと言うと、杉山は、世話しないといけないから、林業やっている人が、職にあぶれないようにするためだったんだって」


「みんながそれに従事して、みんなが食べて行かれる方法…。現在の林業は、海外の安い人件費や、資材、商品で国産が競争力に負けて、駄目になって行く。でも、山梨の増穂町は、林業が地場産業だと言っていた。ちゃんと世話すれば、生活できるんだろう。今の損得で考えるから手を引いちゃうんだ。長い目で子々孫々のことまで、頭に入れれば、何とかなる気がした。消費者も企業も安さを追求すると、生活の糧すらなくなって、食えなくなる。おまけに、このところの工業製品って、人の命にも関わる、重大な製品の欠陥が多すぎて、リコールが多すぎると思わない?二~三十年も経った扇風機だけじゃない、日本の工業製品の優秀さは、どうしちゃったのだろうって思う」


ふ~ん


「あのさ~っ…、思ったんだけどさ~もしもだよ…」

そこで止められると、気になる。


「で、何よ」


雪ネェがじれて言った。


「もし、人工地震の噂が本当ならば、日本の国は、そのデータが一番正確に採れると思わないかい?」


「あっ!」


そう言えば、地層がどうの、被害状況や、犠牲者がどうのって、きっちりと、ニュースで流れる。


どれぐらいのレベルでやると、どのくらいの被害が出るって。

インドネシアとかトルコとか中国の山間部で、大地震が起きても犠牲者何万人と発表して、ウヤムヤで終わってしまう。

今も悲惨な生活しているんだろうけど、ニュースに流れなくなる。

ゴロスケは、言うだけ言うと気が済んだのか、もう寝息をたてている。

しかし、ゴロスケの言葉で、みんな考え込んで、眠れなくなった。

N地震の前にある建設会社の株が、大量に買われている。

後に、その会社は、地震の復興の業者として、指名されていた。信じたくないけど、どういうことなんだ?

そのうち、大下さんとゴロスケのイビキが響き出した。


「何だか、ハモってるよ~」

誰かが言った。


「男だからデュオか?」


朝が来た。雨があがって、眩いばかりの光に、コウジは目を細めた。朝晩の冷え込みは秋の気配が近づいて来た証拠だ。


「おっはよ~っ!」


熟睡したゴロスケが元気そうだ。


「お早う」


みんなどうしたんだろう? て怪訝な顔のゴロスケ。君に罪はないんだけどさ~。

雪ネェは、完璧に寝不足の顔だった。

洗面所の鏡に向かって、顔をパシッパシッ叩いていた。


「あ~、髪の毛ボサボサ~、肌にハリがなくなった~」

その声は、悲鳴にも似て。

さっそく、シャワーを借りていた。


「すいません。朝食は、お客さんが、こんなに入ることを想定してなかったので、トーストを切らしちゃって、残りの人は、ご飯でいいですか?」


「はい、もちろんです!」


店主がおにぎりを握って、味噌汁とお新香と、目玉焼きが出た。


「これからは、パスタや、トーストじゃなくって、ご飯メニューも充実させないとね」


「そうそう、小麦粉が駄目なら、米粉に移行する、商売人は、たくましく生きて行かねばならない」


「しかし、庶民にどう生きろというんだろ~ねぇ」


これからは毎日、屋根に登って、古い瓦を取り、新しい瓦を取り付ける予定だった。

そのためにブルーシートは、用意してあった。

ブルーシートで覆うのでさえ、一人では大変だ。


「あ~あ~、屋根板が腐っているよ」

ゴロスケは、船酔いに強かったけど、高所でも強い。


「と言うことって、どう言うこと?」

下から、雪ネェが聞いた。


「屋根板を剥がして、張り替えて、その上に瓦を載せることになる…」


「そりゃ~、大変だ」


店主のご両親は、揃って老人ホームに移ったらしい。

まあお年だから無理としても、たった一人では、屋根の葺き替えはできない。


「屋根板ってあるのかな?」

店主はしばらく考えた。


「ホームセンター?」

あ~、とんでもなく、助けが要る所に僕たちは来ていた。


木は、乾かさないで加工すると、湿気が抜けてそっくり返る。

杉の木は山いっぱいあるけど、すぐには使えない。

まず、どのくらいの板の大きさが要るのか? 量はどの位がいのか? 見当もつかない。


「それに、断熱材も入れた方がいいよ。冬は寒い」

ゴロスケが無邪気に笑った。


「なぬ?」


大下さんの額に冷や汗がツツツーッと、流れ落ちた。


長雨がピタッと止んで、僕らは色々と働いた。

僕たちの活動が、また始まった。


いや、ボクたちの理想の姿なのかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ