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森のキャラバン  作者: 森のキャラバン
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ウソを信じた正義感が、世界をこわす。

9.11の時に、私は違和感があった。

車の中に、大切なコーランを広げたままにして飛行機に乗るだろうか?

犯人をイスラム過激派だと罪を擦り付けたヤツがいる。


日本人の設計したビルが、跡形もなく壊れた?

あれは、アメリカ式のビルの解体のやり方、爆弾をいっぱい仕掛けて壊したんだ。

森のキャラバン号は、コーヒー豆を買いに、コンビニに向かった。

しかし、コンビニには、インスタントコーヒーしかなかった。

紙コップの一杯ずつ入れるドリップ式もない。


「嘘~っ!」


心で叫んで、ちょっと大きめの郊外型スーパーを見つけることにした。

しかし、山間の道路わきにひなびた感じの喫茶店の看板を発見!目で辿ると上に一軒家があった。


「あれかな?」


「どうする?」


大盤振る舞いの後で、ちょっと、節約モードになっている、大下さん。


「う~ん、パス。ナビで、スーパー、見つからないかな~?」

大雨の中、さまようキャンピングカーを思うと、この辺で手を打ったら?と思う心の声がする。


雪ネェがなごり惜しそうに、

「♪あ~あ~」

少し、非難めいた。音色で歌った。歌って便利だ。


そのひなびた喫茶店の駐車場に一台、いかにもお客さんが来ているぞみたいな車が停まっていた。

店主のだろう。


とうとう、大下さんが、その車の横に、キャンピングカーを停めた。


最近変な雪ネェのことを考えると、ちょっとばかり雪ネェの気持ちを優先したのだ。

みんなで傘を差して小道を登っていった。


カラン  カラーン


ドアにつけた、ベル。客もめったに来なさそう~だからだ。

意外にも、店主がいて、すぐ声をかけてきた。


「いらっしゃい~♪」


それに、先客のカップルがいた。


ニュースが聞こえてきた。


「アフガニスタン東部のジャララバード近郊で日本のNGO(非政府組織)「ペシャワール会」のメンバーで、日本人男性とみられる遺体が発見されました。確認を急いでいます」

「え?解放されたって言うのは、あれ誤報なの?」


思わず、スンちゃんが聞いた。

「うん、そうみたいですよ~♪」


なかなか、愛想のいい人の良さそうな店主だ。ほっそりしている。


必死になって、サンドイッチらしきものを作っていた。普段ちっとも客が来ないのに、大勢客が入ったから、あせりまくっているんだろう。そんな感じだった。


僕たちは、気ままにテーブル席に座った。つまり、六人席がない。三人・三人で座った。

店主は、とうとうテレビをつけてくれて、僕たちはニュースの切れ端を聞き入っていた。


「自作自演のアメリカの9・11テロの報復で、攻撃され、戦争で荒れてしまった罪なき土地でしょ?」


雪ネェが、つぶやいた。


「『アフガニスタンは、麻薬を廃止し農業で生計を立てられる方向に持って行こうとしていた。しかし現在、麻薬の生産量は、前より増えている』と残念そうに言っていたしね」

「スンちゃんの推測だと、じゃあ、黒幕は…麻薬密売組織ってか?」


ガッチャーン


何気にその会話を聞いていた店主が、コップをすべり落とした。


推理で行くと、そうなる。推理で行くと、9・11と根は同じ。


「グルジアにしても、アメリカがしゃしゃり出てきた。これは、危ない!また…戦。あ、全員ホットコーヒーね~」


雪ネェが、せっかちに叫んだ。


「あっ、は~い♪」


「この人、コーヒー中毒だから、禁断症状が出ているんだ、この人のだけ、先に持って来て~」

大下さんが、のどかに付け加えた。

「は~い♪」


ニコニコして答えた。


カップルは、見つめ合ってて、他の客のことなど、眼中にない。それを、ゴロスケが見ている。

「恋愛中って、人はあんなになるのか?信じられな~い」


成っちゃんが、コップの水をお盆で運んで来てくれた。


「わおっ、どうもすいません~♪」

店主が恐縮している。


「おっ、サンキュー」

「農業をさかんにして、子供たちがお腹いっぱい食べれるようにしたいという、立派な志しが、そうはさせたくない何者かによって、消されたのだろうって、簡単に考えられるね」

コウジが言った。


「アフガニスタンの人たちの希望をくじくし、海外のボランティアも追っ払うしね~」


「部族同士の争いとか、いろんなコメンテーターの見解が分かれるけど、ニュースで報道されるテレビをそのまんまを信じる訳には行かないなぁ~」


「いずれ、見られなくなるサイトも多いから、彼の手記をブログに載せたいよね」

「うん」


コウジは、ノートパソコンをわざわざ取りに戻って、詳しく調べ始めた。


「ありゃ、こんなのがあった」


軍用ロボット車両…、フロリダ州オーランド発――ゲリラを捜索し、路傍の爆弾を処理し、アフガニスタンやイラクで洞窟や市街地の廃墟の中を這い回る。

ロボットたちにとって、こうした仕事はほんの手始めにすぎなかった。

米陸軍は現在、新たな「任務」を担うロボット車両部隊の養成にあたっている。

今度は銃を搭載したロボット軍団だ。

 早ければ来年3月か4月には、新たに自動操縦式の兵器を備えた『タロン』(Talon)ロボット18台が、イラクに配備される予定だという。

また陸軍は同時期、負傷兵の救助を行なう新しい無人ロボット車両についても、プロトタイプ第一弾のテストを開始する計画だ。

当地でこのほど、軍用技術の開発関係者たちが、戦場での作業用に開発を進めている次世代ロボットを披露した…。

「ひどいなぁ」

「日本人の発想だと、震災で崩れた瓦礫から、人を救助するロボットだとか、工事現場で危険な所をロボットを使うのだけど、アメリカの場合は、選挙で負けると困るから、いかに自国のアメリカ兵の犠牲を減らすためか…」


「大概の場合、太刀打ちできない…でもだんだん善意が集まっている」


「日本人が汗水たらして、払った税金を、国民に使わないと思ったら、こういう風に間接的に使われていたのかと思うと、悲し~い」


雪ネェ、やっぱり元気がない。


「う~ん」


コウジは、さくさくと手記を探した。

「簡単に見つかったよ『志望動機』が!」

コウジが読み上げた。


「アフガニスタン東部のジャララバード近郊で日本のNGO(非政府組織)「ペシャワール会」(本部・福岡市)ボランティアの伊藤和也さん(31)=静岡県掛川市=が拉致され遺体で発見された事件で、同会事務局は、伊藤さんの『志望動機』全文を公表した。


 (以下、原文のまま)


 ワーカー(現地で働く人)志望の動機

 伊藤和也

 私がワーカーを志望した動機は、アフガニスタンに行き、私ができることをやりたい、そう思ったからです。

 私が、アフガニスタンという国を知ったのは、2001年の9・11同時多発テロに対するアメリカの報復爆撃によってです。


 その時まで、周辺国であるパキスタンやイランといった国は知っているのに、アフガニスタンという国を全く知りませんでした。

 「アフガニスタンは、忘れさられた国である」


 この言葉は、私がペシャワール会を知る前から入会している「カレーズの会」の理事長であり、アフガニスタン人でもある医師のレシャード・カレッド先生が言われたことです。今ならうなずけます。

 私がなぜアフガニスタンに関心を持つようになったのか。

 それは、アフガニスタンの復興に関係するニュースが流れている時に見た農業支援という言葉からです。

 このこと以降、アフガニスタンに対しての興味を持ち、「風の学校」の設立者である中田正一先生の番組、偶然新聞で見つけたカレーズの会の活動、そして、カレーズの会の活動に参加している時に見せてもらったペシャワール会の会報とその活動をテーマにしたマンガ、それらを通して現地にいきたい気持ちが、強くなりました。


 私は、関心がないことには、まったくと言っていいほど反応しない性格です。

 反応したとしても、すぐに、忘れてしまうか、流してしまいます。その反面、関心を持ったことはとことんやってみたい、やらなければ気がすまないといった面があり、今回は、後者です。

 私の現在の力量を判断すると、語学は、はっきりいってダメです。農業の分野に関しても、経験・知識ともに不足していることは否定できません。

ただ私は、現地の人たちと一緒に成長していきたいと考えています。

 私が目指していること、アフガニスタンを本来あるべき緑豊かな国に、戻すことをお手伝いしたいということです。

これは2年や3年で出来ることではありません。


 子どもたちが将来、食料のことで困ることのない環境に少しでも近づけることができるよう、力になれればと考えています。

 甘い考えかもしれないし、行ったとしても現地の厳しい環境に耐えられるのかどうかもわかりません。

 しかし、現地に行かなければ、何も始まらない。

 そう考えて、今回、日本人ワーカーを希望しました。

 2003・6・15          

                       8月28日12時18分配信 産経新聞より」 


僕たちは、全員言葉が出なかった。


僕たちの成果がないのに、日本どころか、あんな遠い地まで行って、井戸を掘ったり、農業指導とかのボランティアをしていた、志しの高い伊藤さんのご冥福を僕たちは祈った。


そう、農業こそが、地球で生きる道なのだ。

ご子息が立派なら、そのお父さんもコメントも立派だった。

「自慢の息子だ」と。


「決してスーパーマンではなかった、等身大の若者が最初の一歩を踏み出すまでの決心が、述べられていたね」


と、コウジの感想。


「ある意味、僕たち凡人にも可能な活動なんだぁ~、とてつもなく大きなことのようだけど…」

成っちゃんが言った。


「命が保証されていたらな」

ゴロスケが言った。


「保証されていたら?」


店主が不思議そうな顔をして、ポットからコーヒーに、お湯を注いでいる。

「うん、もし長生きする寿命が決まっていたら…」

「じゃあ、僕たちがアフガニスタンに行けば、地雷踏んでも大丈夫なのかなぁ?」


キャハハ


日本の政府が、彼の死を最大限に悼むのであれば、スンちゃんの推理は外れ、イラクで銃撃された二人の外交官、奥さんへの対応(割に冷淡~な扱い)のようであれば、スンちゃんの推理は当り。

…どうも当りの気がする。


「お待ちどうさま~」


これで、やっとコーヒーが全員に行き渡った。正直、遅すぎる気もする。


テレビでは、アメリカの民主党の大統領候補に正式に指名されたことが、世紀の大ニュースの如くに流れている。


「キング牧師が、三十九歳で暗殺されたのは、ちょうど四十年前です」とアナウンサーが解説した。


“私は夢みています。

いつの日か、ジョージアの赤い丘の上で、かつて奴隷だった者の子孫たちと、かつて奴隷主だった者の子孫たちとが兄弟愛をもって同じテーブルにつくことができることを…”


                     キング牧師の演説より(訳)鈴木創



「彼の夢は、ある意味、叶うことになりそうだね~」


コウジが言った。

しかし、元大統領の遠い親戚筋ということは、支配階級の人なんだろうけど。


「人間性によって評価されるような国で暮らすことができることを…。は、世界のどの国も、叶っていないけどね」

雪ネェが言った。


「それになんで、大統領選をこんなに何回も、日本で放映するの? 日本のニュースでだと、CM代無料じゃ~ん。事実上、日本が支配下の属州だからなのかしら?」


その言葉に、喫茶店の店主が、ビクンとこちらを見て、とたんに、テレビを消した。


「何だか、最近、ニュースも、娯楽番組もスポンサーの偏りもおかしいですよね~。だから、普段、テレビ観ないんですよ。かと思えば、教養を競わす番組もあったりしてね」


「以前、タケシが“日本人バカ化計画”というのがあったみたいだから、それの対抗策なのかしら?」

雪ネェの辛口な意見に、びっくりしていた。


「そう、だったのか…そうかも知れない」


「もしかしたら、もう日本は買われちゃっていて、アメリカ大陸に壊滅的な天罰が下れば、大金持ちのアメリカ人のセカンドハウスにするつもりなのかと。時々不安になる今日この頃よ。だったとしたら、日本の若者がワーキングプアーでも、年金暮らしのお年寄りが飢えてても、悪魔に魂を売った政治家には、関係ないのかも知れないわね」


『天罰が下る』だの『悪魔に魂を売った』だの、雪ネェの物騒な話で、お店の空気が微妙になって、カップルは、なんだか落ち着かないようで、お勘定を払って出て行った。


「ありがとう~、ございました~」


カランカラ~ン


外はやっぱり、バケツをヒックリ返したような大雨だ。


「だから、冤罪で誰が罪をかぶろうが、国に都合の悪い人には、黙らせる。何の躊躇もなくね…」


少し、ダークな方向に話が進んでいる。でも、問題点を突き詰めなきゃ~、明日の日本はない。


「最高裁判所の任命権は首相にある。だから不当な判決がまかり通る。それに、長い年月かかって、裁判しても、過去の判例で決まるのだったら、データをコンピュータにインプットして検索すればいいんだよ!」


日本の司法は、丸っきり成熟していないよと、嘆くスンちゃん。


「しかも、他人の不運なんか、みんな無関心だし~、明日はわが身かも知れなくても、自分だけは、大丈夫って思っているのよね、なぜか…だから全然よくならない」


さぁて、何しゃべってもOKの空気になって、店主が気楽に話を進めた。


「あの~、日本人とユダヤ人ていう本を以前、読んだんですけど…」

店主が切り出した。


「ユダヤ人のお金持ちが、毎日超一流のホテルのペントハウスだったっけ? に長期滞在していて、一泊がものすごい高いのにだよ。日本人の感覚だと、それだったら高級マンション買っちゃって、住んだ方がいいって思うでしょ?」


「うん」


「“でも、首相も泊まるような超一流ホテルは、警備がしっかりしているから、安全なんだ”って」

ボディガードとかを雇うことを考えれば、その人を信頼できるのかって、ややこしい。徹底的に人を信頼できなくて、お金だけが頼りなんだ。日本と違う文化だ。明治の文明開化から、この国の文化が蝕まれて行く。


最近の雨は、一時間に百ミリのゲリラ豪雨とか、直下型の雷とか、ザラにあるようになった。(1時間雨量が観測史上最多を更新した地点は、静岡県富士市で112・5ミリ)


「自然が怒ってる~」


窓の外を見ながら、成っちゃんがつぶやいた。


「あの~、お客さん、何の車で来られました?」

ふと、気がついたように店主が聞いた。


「え?キャンピングカーだけど」


「それは、危ない、上に避難した方がいいですよ。泥の川がね」


「避難?」


「坂の上に、自分用の駐車場があるんですよ」


店主が、案内をしに傘を差して、外へ出た。

大下さんが、一人降りて行った。


ペシャワール会の中村哲医師は、病人を治すより、水路を作って干からびた土地を緑豊かな大地に変えた。

伊藤さんと同じ理由に思える。

中村哲医師も銃弾に倒れた。


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