世界の片隅で日本の未来を叫ぶ!
みんなが許しあえる仲間なら、どんな話でもしたくなる。
胸に秘めた些細な事を。
みんなが語らない、小さな疑問、もったいぶってしゃべれない日本の事を!
「駐車場の警備員のおじさんとか、ずっと立っている仕事って信じられないな~」
「でも、農業も爺ちゃん婆ちゃんたちも、炎天下でキツイ仕事をやっているんだよな~」
「本当! 根性なしと言われてもいい、命が大事!」
二時間もすれば、不甲斐なく「も~う 限界!」と言って、バテバテで中止した。
畑の帰りに、茗荷とナスとキュウリとトマトとトウモロコシを収穫し、苦労して重いスイカを持って帰った。
炎天下の昼間、日本家屋に帰って来ると、目が慣れぬ前は、家の中が、真っ暗に見える。
昼寝にちょうどいい暗さだ。
スイカの大玉は、コウジが井戸端へ運んだ。
雪ネェが、アイスコーヒーを入れて持って来てくれた。
「ご苦労様、家の中でいても、つい、寝てしまうほどだわ~」
「寝てたんかい?」
「暑いから、生き返るぅ。ありがとう!」
「松野さんの奥さんが、トウモロコシは採る前に、鍋用意しとけ! って言うくらい鮮度が命で、甘くておいしいんだって~!知らなかったな~。じゃあ、スーパーで売っているのは何? って感じだよね~♪」
雪ネェはトウモロコシを受け取ると、茹でに行った。トウモロコシは熱々を塩で擦り込む。それをやって、持って来ると、みんなはもう疲れて寝ていた。
「あらら…」
一時間もすると、起きて来た。
冷えた麦茶を飲んで、トウモロコシを食べた。
「そう言えば日本がアメリカに頭が上がんないのは、皇陛下を日本人が押し頂いているからって。昭和天皇って、マッカーサーより格下みたいな写真があったね」
成っちゃんが言った。
「へぇ~、そうだったのか。そう言われてみれば、確かに視覚的にそうだよな」
新野さんが、感心して言った。
「それ何かの、結界みたいなものかしらね~?」
と、雪ネェ。
「徳川慶喜の大政奉還みたいに、国民のトップを返上するという象徴的なパフォーマンスをやれば、日本の呪いも解けるのかな?」
と、スンちゃん。
「それでいうなら、明治天皇は摩り替わったっていう噂とか?」
成っちゃん。
「今の皇室は意味がないよって神は、主張しているのよね。今より遥か前、中山ミキに神が降りて『天皇陛下は韓国人』って」
雪ネェ。
「へ~、聞いたことあるな~、昔のアイドル歌手?」
ゴロスケは若い。
「そりゃ~、平山みき!♪真夏の出来事でしょ?あれは中山ミキ、天理教の開祖よ。“たかあまのてんのはしらがからびとや”ってね!たかあまのしんのはしらが、天皇陛下っていう意味で、昔のもっと天皇陛下が神のように崇拝されていた時代に、そら本人もびびったでしょうね~」
雪ネェは、元歌手だけに昔の歌も詳しい。
「じゃあ、日本人が世代交代して、天皇陛下バンザ~イっていう人たちがいなくなったらかい?」
ゴロスケが少々ゴキゲンナナメになって言った。
「そんな流暢なことをやる前に、アメリカが没落するんじゃな~い?」
雪ネェは、アンチアメリカだ。
「でも、トヨタがGMや、フォードに勝ったっていうのも、ある意味そうだよね」
コウジが言った。
「ああ、WTO(世界貿易機関)の会議でもあったね、中国とインドが猛反対して会議が決裂したってことを見ても、アメリカの権力も落ちたなと」
スンちゃんが言った。
農民票が多いはずの選挙で、これだけ農民を窮地に立たせる政策をしているのは、農民がおとなしいからなんだろうか?
「アメリカの主張はおかしいのに、まだ日本は追従してるよね。あの場合、中国やインドの言うことの方が正しいと思うよ。
イタリアも、決裂してから「良かった~」って、思わず本音を漏らしたとか。
おかしいことは、おかしいって勇気を持って言えないんだね」
新野さんがまたこんなことを言った。
「日本中の農業する人が食えなくて、一部の大手企業だけが生き残っても、しょうがないじゃん。せっかく、日本は雨が多くて水が豊富にあるのに、それも大事な資源だよね。そういうことに目を向けないで、規制緩和とか自由化とかグローバル市場とか言って、国民の職を奪うことしかしない。あの八年間で、急激に日本は駄目になった」
「同感!」
みんなもそう叫んだ。
フランスのエビアン水が、日本の自動販売機で、日本の水と同じ値段で売られている。
ガソリン代が値上がっているのに、中小企業が疲弊しているのに、輸入品はどうどうと庶民の所まで届いている。
テレビで観たけど、原材料費が上がって、バネを作る工場が、値上げせざるを得ないのに、取引先からは、値下げを要求されている。
経営が成り立たない。
そうして、コスト削減で、安い輸入品に替えるそうだ。
その耐久性は、どうなんだろう?
最近電気製品の不具合が多くなっているけど、すぐ壊れる部品を使っているからじゃないの?
もう死んでしまったけど、ダイエーの中内さんは、気骨のある人だった。
体制に立ち向かって、消費者に安いものを提供して、成長を遂げた。
しかし、最後に残ったものは、今の時代はそうじゃないと批判され、会長の座も奪われ、財産も失った。
あの流通が海外でなく、国内の産直であれば、とてもいいシステムだったと思う。
確かに、商社が外国産の農産物を輸入して、スーパーの店頭にサンキストのマークのレモンが登場した。
しかし、輸入品にはたっぷりOPPや、TBZの防カビ剤が使われていた。
発ガン性物質だ。
コウジは、そのロゴマークの入ったレモンを喫茶店で、スライスして紅茶にレモンティーを出していたのを覚えている。
二十年前、生協では、敢えて「発ガン性物質のOPPや、TBZを使っていません」と言う POPを出して対抗していた。
だって長い船旅で、カビが生えるのが当たり前だからだ。そうして、国産レモンが一時廃れた。
アメリカは貿易赤字とかで、日本に自国の農産物を押し付ける。
消費者は、ただ安いもののみの追求で、
「安かろう、悪かろう物を掴まされている訳だ。アメリカは、自国の農民には、高い補助金を出している。もしもアメリカの経済がどうにもこうにも行き詰ると、補助金どころじゃなくなる訳だ。発展途上国の貧しい地域は、多国籍企業の支配下にあるから、生活が苦しいままだ」
中国産のうなぎや、野菜や、冷凍餃子は、事件があって流れが変わって来たけど、日本では、中小企業の倒産、自営業の廃業で生活苦になるから、節約しなければ生きていけない人も出てくる。働きに出るから、疲れていて忙しくて、既製品を買ってしまう。
その材料は、国産の物であるはずもない。安く売るからコスト削減で輸入物に決まっているだろう。
ちょっと前、株の持ち合いは悪いことにように、テレビでは批判していた。
それが日本の企業を叩く。
「会社は株主のものだ」
とMファンドの社長は公言してはばからなかった。
その時は、よく分からなかったけど、今なら言える、
会社は、従業員と一体なんだ。
どうして分からなかったんだろう。
人の性にしちゃ、悪いのかも知れないけど、コメンテーターが、ああだのこうだのと言って、余計分からなくさせているんじゃないのかな?
「長い文だね~それ、ブログなの?」
新野さんが、コウジのワープロの文を覗き込んだ。
「あ、ハイ。まとまらないけど、つい書きたくなって」
「いっそのこと、自国で簡単に作れる農産物は輸入しません! って宣言すればいいのにね」
「そしたら、肉もちょっとは高くなるでしょうけど、少なくても生産者は生きられるね」
「一昔前に戻って、農産物の鎖国時代になればいいんだ。自動車なんて売れなくてもいいじゃない。それよりも大多数の農産物だよ、穀物だよ。地球温暖化を叫ぶなら、海外の運送量を極端に落とせばいい」
「フードマイレージですよね」
「いや、温故知新で地産池消、自給自足だ」
二人で笑った。意見の合ったところで、誰から訪ねてきた。
「あ 僕、ちょっと、出てきます」
どうやったら、日本の高齢化の農家の主役が報われる日がくるのだろうね。
ゆったりと流れる時間の中で、コウジたちは考えていたんだ。




