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森のキャラバン  作者: 森のキャラバン
32/53

その時、何かが動いた。

話は続いてあらぬ方向へ。

火水伝文 って知ってる?

日本の予言書。

「で~、君たちって一体何者?」


松野さんの素朴な問いに、コウジたちは、戸惑った。


「え~っと、森のキャラバンっていう、メンバーの~、端くれ?」


「その端くれって? 」


「ん~、人格向上委員会みたいな~集団」


「へぇ~、立派だね~、君たちは」


「そうかな?」

人から尊敬の言葉を掛けられるのは、まんざらでもない。


「日本にも、こういう若者がいるんだね~」


「うん、いっぱい居るよ」


「一度、苦難を乗り越えた若者は、人や、環境に優しいんだよ」


アハハ


何だか照れる。

「それはそうと、ネットで見たけど、沖縄の神道家の書いた本を公開してあったけど、日本人って、特に沖縄って古代ユダヤ人って本当らしいな~。過ぎ越しの祭りの風習(年越し・過ぎ越し) 日本では、年末になると大掃除をする習慣がある。


年始には、三段に積んだ餅を(鏡モチ二段の上に みかんを載せる場合有り)飾り、それを後で割っ てから食する。鏡開きと称される。 が残っているところがあったり。ユダヤ: 古来、中近東付近に住むユダヤ人を、ヤマトウ人 と称していたってさ。確か『神の民』っていう意味だったよな。


角笛のサイトには、日本:イザナギ神とイザナミ神が、天の御柱を廻って 結婚するお互いに「あなにやし」と声をかけるけど 『アナニヤシ』とはヘブル・アラム語で『私は結婚する』という意味で~」

スンちゃんの好きそうな話題だ。


「それに、米国は日本が脅威だったから日本と戦ったのではない。日本の脅威をことさらに強調し、それを口実に日本国民と 日本文明の破壊のために日本を戦争に追い込んだらしい」

「つまり、旧約聖書以前に、文明はないってことにしたいのかな? 」


民謡の掛け声や、相撲の『ハッケヨイ』なんかは、古代ユダヤ語だし~、イラク攻撃だって、チグリスユーフラテス文明の痕跡を戦争で壊した。旧約聖書の初めの人間とした、古代ユダヤよりも古い歴史を消すためさ。自分たちアメリカのユダヤ人が旧約聖書にある由緒正しい、選民であることを主張するために、今日こそ確信が持てたぞ!!」


スンちゃんはいささか興奮状態で、しゃべり続けた。


「日本人は早くそのことに気がつかなきゃ、国ごと買い取られちゃうぞ!!」

ネットで流れた情報は、こんなに溢れている。

早く気づけよ日本人って感じだ。


「以前、ユダヤ人のアイデンティティを遺伝子調査の中で明らかにしようとしたが、テルアビブ大学遺伝子研究所のバットシェバ所長によると、『ユダヤ人に特有の遺伝子はない、古代のユダヤ人の遺伝子に一番近い傾向をもっているのはパレスティナ人』だってさ~」

雪ネェもちょっと、オタク並みに詳しい。


「そうして、アメリカの言いなりになっている政治家たちよ、良心が傷まないかい?」


「そうだよね、本当のことがみんなに知れたら、どうするつもりなんだろうね」


スンちゃんの勢いにあっ気に取られたみんなが、やがて気を取り直した。


「告発する方が嘘つき扱いみたいだよな」


「もう少しで、いい時代が来る。それまでワーキングプアーのみなさん!生き延びていい世の中を作ろうぜ!!」

ゴロスケがこう宣言した。カッコイイ~。


「それにネットで、『ムー大陸』を見ると、指にイレズミをしていたらしいんだ。

沖縄のお婆さんの指にもイレズミをする風習が残っていたって。

沖縄ってムー大陸の残り端じゃないかって」

成っちゃんが見つけて言った。


「ほ~かい」

ゴロスケが言った。


「来ると思ったよ~」


「縄文人の末裔が、沖縄やアイヌなら、ムー大陸の末裔だったりして」

雪ネェが、ほほ笑んだ。


「だったら縄文の世界は超ロングセラーだろうってね」

スンちゃんが想像した。


「だから、こういう世の中の時に、農民が強いんだ」

コウジが言った。

山を一つ持っていたら、春には山菜が採れ、秋にはキノコが採れる。燃料は、間伐した木を乾燥させて使えばいい。あと、果物とか、栗とか採りに行って、山の世話をする。


「これからは、小作人キャラバンになったりしてね」

雪ネェが一人で受けて笑った。


松野さんは、話を黙って聞いている。


「君たちは、一体何者? 何かが違う。それをずっと感じていた」

その言葉は、さっきも言った。


「例えば、こういうこともやるよ」

コウジが静かにアグラを組んで、目を閉じた。


わたしは愛の光です。


ぶつぶつと独り言を言って、姿勢が真っ直ぐになって、動かなくなった。

成っちゃんが、それを見ていて、つぶやいた。


「ほら、マトリックスのCGみたいに、空間に陽炎のようなひずみが出来た」

松野さんは、ずっと見ている。


「分かんねぇ」


「あれで、瞑想をやって、光の世界に旅に出るのさ。ちょっとした至聖所みたく場が変わるんだ」

成っちゃんが解説した。


「あれで、心の闇を浄化して行くんだ」


「浄化?」


「うん。僕たち、けっこう自虐的な性格で、自分が悪いからって、思うんだよね。普通の人は人の性にするところだけど。ああ~、なんて自分は駄目なヤツって思っちゃうんだ。習慣でね~」

「そこに、続けざまに、運の悪いことが続くと、バケツのへりを歩いている蟻みたいに、同じことばっかり考えるのさ」


「ウツっぽく、なるよね」


「忙しいと、そう考えなくなるけど、暇だと、考え過ぎてね。だから、作家には、自殺する人が多いんだと思う」


「闇に掴まっちゃってね」

スンちゃんも経験者だ。


「でも、忙しすぎるのも、変になるよね」


成っちゃんも、派遣の時のこき使われたのを思い出して言った。


「自分が心を殺して、ロボットになった気がしてね」


「適度が、いいんだ」


スンちゃんが、しみじみと言った。


「何でも、中道さ~!」

ゴロスケが言うと、信憑性がない。だけど、あれでも苦労はしている。


「兄弟が多かったり、仲間がいっぱいいたり、連帯感が感じられた経験が多ければ、ちょっとした、困難も乗り越えられるけど、一人っきりだったり、頼る人がいなかったり、相談できる、親友がいれば、強いけどね。プロレタリア階級は、たくましゅう生きるしかないかんだよね~」


「でも、心の病も病気の一つだとすると、病気もあることで、急に治ったりするって、聞いたことがあってね。地方に住んでるリュウマチの専門医のところで病気が治るって聞いて、本人が長距離に負けずやって来る場合、そういう積極性のある患者は、治る見込みが多いってさ。自分のことはさて置き、他人のために必死になって動いたりしていると、治ったりするって。環境問題のTさんは、交通事故で、臨死体験をして、神秘体験をして『世のために生きる』決心をしたら、急激に回復したって。一生寝たきりと診断され、指も複雑骨折してピアノも弾けないはずだったのに、もうピアノも弾けている。奇跡が起るものなんだって~」

コウジが言った。


「そういうの、ミコトモチって言うんだろうね~」

成っちゃんが、付け足した。


大下さんは、次第に眠そうな目になって来た。


「この、ひみずでんぶん~」

松野さんが、真剣な目をしている。


「カミツタエフミ」

コウジが失礼のないよう、やんわりと訂正した。


「この言葉の富士は晴れたり 日本晴れってどういう意味?」


「…」

一同引いた。


心配ないのが富士は晴れたり。神になれば、食う事も着る事も住み家も心配なくなるぞ。日本晴れとはその事…。心の声がそう響いた。


「分からない。分からないけど、想像するに~、富士、不二はひとつでしょ? 世の中がガラリと変わるのかな? 」

コウジが、当たり障りなく応えた。


「日本はお土があかる、 外国はお土がさかる。日月神示であったけど、アメリカが海の藻屑に沈んじゃうってことかもね~」

雪ネェが、説明した。


「ふ~ん」


「ノストラダムスの大予言の時は、日本も大ブームで一九九九年に世の終わりが来るって、騒いだけど、今の方がもっとリアリティのある、地球の崩壊が来ているのに、みんな騒がないね」

スンちゃんも頭をかしげた。


「じわじわと来ているからかな~」

コウジが言った。


昨日、アルゼンチンのパタゴニア地方の景勝地ペリト・モレノ氷河が夏でも崩落しているって、動画が出ていたな~。けっこう、でかい音立てて、海に落いていた。みんな、「お~」とか「ほぉ~」とか言いながら、それでも、まだ、地球をわざと災害に見せかけて、破壊し続けているモノの気持ちが分からないでいた。一体何の為にそんなことをするのか?


「俺にも、何かになれるかな?」

松野さんのちょっと奥まった目が輝いた。


「なれるよ!」

ゴロスケが請合った。


「できる人になって、平安を保ちたい…」

眠そうなはずの大下さんが、ブッと吹き出した。

気持ちがよく分かる。


「奥さんは、あれで、料理を作る時は、神がかりになるんだよ…、自分はなる時がないから~」


長雨が続いたけれど、電話が掛かって来て、明日は、山に行って、薪になる木を切って、持って帰る予定だ。

そのワントラック分の奉仕を消防団たちもやってくれることになった。

スンちゃんの話では、松野さんのパソコンの大特訓の成果は上がらないが。


その時、電話が鳴った。


「あんた、出て~!」

台所にいた、奥さんが怒鳴った。


トコトコトコと松野さんが、居間の電話を取ると、ネットを見た、農泊希望のお客さんらしい。みんなが電話口に集まった。

雪ネェが素早く、スピーカーフォンに切り替えた。


「なんか、ホームページもできたばっかりみたいだし~、電話の方が確実かと思って~」

やっぱりな~、分かってるよ、お客さんの方が~。

みんなが聞き耳を立てている。

今度の土日で、家族五人でやってくる…らしい。


「ハイ、ハイ、分かりました。道は、分かりますか?」

「ナビがあるから、大丈夫!」

電話の向こうで断言した。


松野さんが、静か~に、受話機を置いた。


「やった~ぁ」


「バンザ~イ」


みんなが飛び上がって喜んだ。

床が軋んだ。


メンバーは、両手でハイタッチをした。

松野さんは、その乗りに、乗れないでいた。


「あ~っ、しまった! 名前を聞くの忘れた~」

「まあ、いいや~、来た時に書いて貰えば」

「宿帳用意した方がいいよ!」

コウジが言った。


「取りあえず、芳名帳の新しいのがあるけど」

松野さんがポツリと言った。


「パソコンに打ち込めばいい!」


スンちゃんは、フォームに入力すれば済むことだと思った。


「駄目駄目、ちゃんとお客さんに手で書いて貰うの!」

雪ネェは、そういうのが大事だと分かる。


「シーツとか、あるのかな?」


奥さんは、テレビを観ながら、背中を丸めてせんべいをかじってる。

みんなは、奥さんのキャラが、旅館業をぶち壊しにしないか、少し心配だった。


雪ネェが言った。


「松野さん、作務衣とかある?」



その時、何かが変わり始めた。

もちろん、ボクらの性でもないけど。

ネットの時代は、昔じゃ考えられないほどスピード感があるね。

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