成っちゃんがなぜここを知っていたのか?
へ~成っちゃんて、ここに住んでいたんだ。
でも、都会の子っぽいけどね。
イメージわかないね。
「何かさ~ここで、定住したい気分だな~」
「う~ん、そうやりたいところだけど、アッシたちは渡世人だから~」
「渡世人て?」
「木枯らし紋次郎!あっしには関わりのないことでやんす」
「ござんすじゃなかってっけ?」
「あ~、古いことだから忘れた」
「清水の次郎長も、や~さんだったのよね」
「ああ、そうなんだ」
「でも、後年、公共事業に貢献したんだ。 だから今でも、慕われるんだね」
「今でも、静岡最大の企業グループなんだって~、倉庫業、サッカーチームのスポンサー、物流、ガソリンスタンド、人材派遣」
「人材派遣って聞くだけで、うって、何か悲しくなるよね」
「もう、登録したくないよな~」
「うんうん、忙しい時だけこき使って、あとは知りませんみたいな~」
「はぁ~」
気分が沈んだところで、またキャンピングカーを発進!
パンフレットによると、もう少し、上の道を車で行くと、富士山の見える林道があるらしい。
しかし、そこを訪れる人も少なく、その割には長い道のりなため、軽トラが通れるほどの細い道だった。
車体は大きく傾き、身の危険を感じた。
「ヤバイ、この道幅、落ちそう~」
キャンピングカーでは、限界があった。
三叉路で、停めて大下さんが、向きを変え切り替えした。
みんなはカメラを手に、少し歩いた。
山に分け入り、木の世話をしているらしき人がいた。
枝も落とされ、地面まで光が入り、瑞々しい。
地球は、提供した自然を人間がちゃんと使い、ちゃんと分け合い、ちゃんと世話をするように望んでいるんだ。
「いいとこだね~、ここ」
「でさ、成っちゃんは、ここが故郷?」
「ううん」
「じゃあ、どうしてここを知ってたの?」
「ん~」
言いにくそうに、答えた。
大体、変だった。
成っちゃんは、みんなの群れの中に隠れるように行動していた。
故郷なら、あそこへ行ってとか頼むはずだから、普通は。
「できれば、話したくなかったんだけど~、昔ここにちょっとだけ、住んでいたんだ~]
だいたい、みんな何らかの事情をかかえているから、みんなは聞いたりしない。
「病気の爺ちゃんと婆ちゃんと、家族五人で。でもある日、父さんが出て行ったんだ。 都会にあこがれて、待てど暮らせど、帰って来ない。 とうとう田んぼと畑売って、最後に家も売って、出た。僕が小さい時。 母さんは一人で苦労して、死んだんだけどね。楽させてあげられなかったな~、一度も」
みんなし~んとしてしまった。
「だから、捨てたはずの故郷。
僕を、知ってる人もいないだろうけどね」
時々、成っちゃんは、途方に暮れる。
春ちゃんもそうだった。
人間の芯ってもんが、頼りなげだ。
「こんなきれいな林見ると、春ちゃんを思い出すのよね」
雪ネェが、アカペラで歌う。
普段とは違う、少女のような、きれいな声で・・・。
みんなの頭の中に、ビートルズの♪『ノルウェーの森』が響く。
「春ちゃん、木になって生きろよ!」
「木は木でも、お茶の木だけどね~」
その言葉に、みんな笑った。
「春ちゃんもね、故郷に帰れなかった一人なんだ~」
それは、春ちゃんが言わせたのだろうか。
「小さい時、よその家が火事で全焼して、その時、子供がマッチで遊んでたって。子供の火遊びが原因だって、お前か!って決め付けられちゃって、『違う!』って言っても信用されなくって」
成っちゃんが鼻水をすすりあげた。
「すんごいド田舎で、オカンと二人暮しだったけど、村八分になると暮らして行けなくって、家売って許して下さいって。でも…放火の真犯人があとで見つかったらしいってね。…風の便りで聞いたんだって。…でもね、だからと言って、二度と故郷に帰れなかったんだって。…春ちゃんの故郷はどこだかは言わなかったから知らないけど。…思い出も故郷も捨てたんだって」
「・・・そんな不条理っていくらでもあるよね」
コウジが言った。
都会のドライな部分の気楽さと、田舎の情のある、ウエットな部分。
できれば、大自然の中の、ドライな人間関係が、ちょうどいいのかも・・・。
何の木か分からないけど、若い緑は、太陽の光を求めて、真っ直ぐに伸びている。
自然は、どんな苦労をしてもちゃんと真っ直ぐな人間になれよって、ただそういう姿を見せている。
「日の光を浴びない場所に生えた幼木も、弱々しく生き延びて、やがて、大きな木が伐採されたり、台風で倒れたりすると、一気に葉を広げ大きく成長するんだって」
「まるで、俺たちじゃん!」
ゴロスケがおどけて、一同、笑った。
そう、いつかは役に立つ人間になってやるのだ。
「できた、できた。ほら、アップするぞ」
エンターを押して、
「送信!」
まばたきするぐらいの時間で、画面が変わった。
5月10日 晴れ
え~、エヘン、本日ブログはじめやす!
天気は最高!みんなはゴキゲン!
富士山もこ~んなに見えやす!(^^♪
「う~ん、なんかさぁ~、ネット掲示板の書き込み風だよね。もちっとちゃんとした文章にならない
の?」
雪ネェがダメ出しする。
すると、一旦画面が消えかけた風になって、コメントが現れた。
何、この文章は
「ななに、この短いコメントは、一体誰なんだ~? 名前も匿名だぞ!」
「しかも、超早くねぇ~!」
ゴロスケが、ユウレイにでも遭ったみたいに怯えた。
大下さんは、首をかしげた。
「田園調布のスポンサーか・・・な?」
「たったこれだけの文だと、キツクねぇ~?」
「なんだか、コワ~」
大下さんは、想像した。
気丈と言えども、高齢の女性である。
生まれて初めてパソコン買って、インターネット始めて、ワープロを打つのだって、必死でやっていることだろう。
もしかしたら、用もないのにやたら来ている、弁護士に口述で打たせているんじゃないかい?
それは、あり得る。
一人でニヤニヤしていた。
「誰か、まともな文章書ける人いないのか?」
雪ネェは、視線を感じて、辞退した。
「文才があるなら、オリジナルの作詞で歌ってるわよ」
「スンちゃんは?」
「学術的で、面白くネェ文だって、ケナされながら書く気はしないです!」
スネている。
成っちゃん・・・、時間かかりそうだ。
「大下さんは?」
「何でだ?」
ピシャリと断って、コウジに向いた。
「コウジ、今度からお前がやれ!」
「はい」
と言う訳で、コウジが文の担当になった。
久しぶりに、白ヒゲのおじさんのブログ『私の神話』を見ると、ツリーハウスが、着々と進んでいる。
「結構、進んでいますね!棟上式には、お餅を撒くんですか? コウジ」
短いコメントを入れた。
すると、だいぶしてから、メールが届いた。
みなさんお元気で、ご活躍されていることと存じます。
その後は、いかがお過ごしでしょうか?
私どももやっと、長年の夢であった『ツリーハウス』に取り掛かっています。
まだ、床板が揃いませんので、完成までにはもう少し掛かります。
そうそう、光介君も元気そうですよ。
モテモテも辛いそうですが、なったことがないからその気持ちが判りませんな。(笑)
ブログ開設の折には、お知らせ下さい。
では、ごきげんよう
インディゴ・ブルーのおじさんより
「教えるんだよな? 白ヒゲのおじさんにも」
「どうする? もうちょっと、体制整ってからにするか?」
「でも、田園調布のスポンサーは、アドレスどうやって知ったの?」
「そら、検索でしょう、『森のキャラバン』って」
「どうして、今日アップするって、分かったと思う?」
「そら、毎日調べてたとか~」
「うぐっ!」言葉に詰まった。
「・・・俺たち、うんと活躍しなきゃ~な」
「おい、モテモテってどう辛いんだ?」
「知るか!」
そこへ、雪ネェが、一言いった。
「あのさ、瞑想してんだから、黙ってて!」
「・・・」
みんな、そろりそろりと席について、雪ネェの真似をした。
だいたい瞑想タイムは、四十五分ぐらいだそうだ。成っちゃんが、『新約聖書』の本を開いてひざの上に乗せたままにしていた。
「どうして、そうやってんのさ」
「なんか、こうやる方が上手く行く気がして・・・」
「ふ~ん」
何人かは真似をした。
光の波動って難しいもんだ。
そこで、考えたことを順番に言うことになった。
「どうだった?」
「う~ん、我想う故に我あり。自分が思ったからこそ、自分がいるのかな?」
と、スンちゃん。
「本当に、スンちゃんが、そう思ったの?」
ゴロスケが思わず言った。
「じゃあ、雪ネェ」
「神さまは、芸術家よね~、ありとあらゆる物をデザインして創ったのよね~」
「うん、模範解答だな~、はい次」
「僕はとても偉大なる作家だと感じた」
「コウジ、その心は?」
「だって、本に『すべては物語である』って書いてあるから」
「な~るほど~」
「それに、いろんな人間の運命や、国の運命なんかを編み出しているんだろう?」
「・・・まあ、その筋書きは、人間じゃとてもとても思い浮かばないや」
「そういう、ゴロスケは?」
「う、んまぁ、ちょっと昔話をアレンジしていた」
「どんな?」
「昔、昔あるところにお爺さんとお婆さんが住んでいました。
お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に・・・、」
「そんで?」
「お爺さんは、よそ様の土地に不法に侵入したって、逮捕されました。
お婆さんは、河川の汚染の現行犯で、通報で駆けつけた警察官によって厳重注意されました」
「じゃあ~、終わりじゃん」
「桃はどうした」
大下さんが、面白がって言った。
「そこへ、大きな物が、どんぶらこっこ どんぶらこっこ と流れて来ました」
「・・・」
「しかし、コンクリートの土手にテトラポットで、傷だらけになって、見るかげもありません。
鑑識を呼んで調べました」
「桃ダロウ!」
みんなが、叫んだ。
「あ、ばれちゃったか」
「だいたい、ゴロスケの考えてることは、分かるよ」
何か、瞑想も、ブログも大変そうだけど、大丈夫かなぁ?




