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森のキャラバン  作者: 森のキャラバン
22/53

成っちゃんがなぜここを知っていたのか?

へ~成っちゃんて、ここに住んでいたんだ。

でも、都会の子っぽいけどね。

イメージわかないね。

「何かさ~ここで、定住したい気分だな~」


「う~ん、そうやりたいところだけど、アッシたちは渡世人だから~」


「渡世人て?」


「木枯らし紋次郎!あっしには関わりのないことでやんす」


「ござんすじゃなかってっけ?」


「あ~、古いことだから忘れた」


「清水の次郎長も、や~さんだったのよね」


「ああ、そうなんだ」


「でも、後年、公共事業に貢献したんだ。 だから今でも、慕われるんだね」


「今でも、静岡最大の企業グループなんだって~、倉庫業、サッカーチームのスポンサー、物流、ガソリンスタンド、人材派遣」


「人材派遣って聞くだけで、うって、何か悲しくなるよね」


「もう、登録したくないよな~」


「うんうん、忙しい時だけこき使って、あとは知りませんみたいな~」


「はぁ~」


気分が沈んだところで、またキャンピングカーを発進!


パンフレットによると、もう少し、上の道を車で行くと、富士山の見える林道があるらしい。


しかし、そこを訪れる人も少なく、その割には長い道のりなため、軽トラが通れるほどの細い道だった。

車体は大きく傾き、身の危険を感じた。


「ヤバイ、この道幅、落ちそう~」


キャンピングカーでは、限界があった。

三叉路で、停めて大下さんが、向きを変え切り替えした。

みんなはカメラを手に、少し歩いた。


山に分け入り、木の世話をしているらしき人がいた。

枝も落とされ、地面まで光が入り、瑞々しい。


地球は、提供した自然を人間がちゃんと使い、ちゃんと分け合い、ちゃんと世話をするように望んでいるんだ。


「いいとこだね~、ここ」


「でさ、成っちゃんは、ここが故郷?」


「ううん」


「じゃあ、どうしてここを知ってたの?」


「ん~」

言いにくそうに、答えた。

大体、変だった。

成っちゃんは、みんなの群れの中に隠れるように行動していた。

故郷なら、あそこへ行ってとか頼むはずだから、普通は。

「できれば、話したくなかったんだけど~、昔ここにちょっとだけ、住んでいたんだ~]


だいたい、みんな何らかの事情をかかえているから、みんなは聞いたりしない。

「病気の爺ちゃんと婆ちゃんと、家族五人で。でもある日、父さんが出て行ったんだ。 都会にあこがれて、待てど暮らせど、帰って来ない。 とうとう田んぼと畑売って、最後に家も売って、出た。僕が小さい時。 母さんは一人で苦労して、死んだんだけどね。楽させてあげられなかったな~、一度も」


みんなし~んとしてしまった。


「だから、捨てたはずの故郷。

僕を、知ってる人もいないだろうけどね」


時々、成っちゃんは、途方に暮れる。

春ちゃんもそうだった。

人間の芯ってもんが、頼りなげだ。

「こんなきれいな林見ると、春ちゃんを思い出すのよね」


雪ネェが、アカペラで歌う。

普段とは違う、少女のような、きれいな声で・・・。

みんなの頭の中に、ビートルズの♪『ノルウェーの森』が響く。


「春ちゃん、木になって生きろよ!」


「木は木でも、お茶の木だけどね~」


その言葉に、みんな笑った。


「春ちゃんもね、故郷に帰れなかった一人なんだ~」

それは、春ちゃんが言わせたのだろうか。

「小さい時、よその家が火事で全焼して、その時、子供がマッチで遊んでたって。子供の火遊びが原因だって、お前か!って決め付けられちゃって、『違う!』って言っても信用されなくって」

成っちゃんが鼻水をすすりあげた。

「すんごいド田舎で、オカンと二人暮しだったけど、村八分になると暮らして行けなくって、家売って許して下さいって。でも…放火の真犯人があとで見つかったらしいってね。…風の便りで聞いたんだって。…でもね、だからと言って、二度と故郷に帰れなかったんだって。…春ちゃんの故郷はどこだかは言わなかったから知らないけど。…思い出も故郷も捨てたんだって」

「・・・そんな不条理っていくらでもあるよね」

コウジが言った。


都会のドライな部分の気楽さと、田舎の情のある、ウエットな部分。

できれば、大自然の中の、ドライな人間関係が、ちょうどいいのかも・・・。


何の木か分からないけど、若い緑は、太陽の光を求めて、真っ直ぐに伸びている。


自然は、どんな苦労をしてもちゃんと真っ直ぐな人間になれよって、ただそういう姿を見せている。


「日の光を浴びない場所に生えた幼木も、弱々しく生き延びて、やがて、大きな木が伐採されたり、台風で倒れたりすると、一気に葉を広げ大きく成長するんだって」


「まるで、俺たちじゃん!」


ゴロスケがおどけて、一同、笑った。


そう、いつかは役に立つ人間になってやるのだ。


「できた、できた。ほら、アップするぞ」

エンターを押して、


「送信!」


まばたきするぐらいの時間で、画面が変わった。


5月10日 晴れ

え~、エヘン、本日ブログはじめやす!

天気は最高!みんなはゴキゲン!

富士山もこ~んなに見えやす!(^^♪



「う~ん、なんかさぁ~、ネット掲示板の書き込み風だよね。もちっとちゃんとした文章にならない

の?」

雪ネェがダメ出しする。


すると、一旦画面が消えかけた風になって、コメントが現れた。


何、この文章は


「ななに、この短いコメントは、一体誰なんだ~? 名前も匿名だぞ!」


「しかも、超早くねぇ~!」


ゴロスケが、ユウレイにでも遭ったみたいに怯えた。


大下さんは、首をかしげた。


「田園調布のスポンサーか・・・な?」


「たったこれだけの文だと、キツクねぇ~?」


「なんだか、コワ~」


大下さんは、想像した。

気丈と言えども、高齢の女性である。

生まれて初めてパソコン買って、インターネット始めて、ワープロを打つのだって、必死でやっていることだろう。

もしかしたら、用もないのにやたら来ている、弁護士に口述で打たせているんじゃないかい?

それは、あり得る。

一人でニヤニヤしていた。


「誰か、まともな文章書ける人いないのか?」

雪ネェは、視線を感じて、辞退した。


「文才があるなら、オリジナルの作詞で歌ってるわよ」


「スンちゃんは?」


「学術的で、面白くネェ文だって、ケナされながら書く気はしないです!」


スネている。


成っちゃん・・・、時間かかりそうだ。


「大下さんは?」


「何でだ?」


ピシャリと断って、コウジに向いた。


「コウジ、今度からお前がやれ!」


「はい」


と言う訳で、コウジが文の担当になった。



久しぶりに、白ヒゲのおじさんのブログ『私の神話』を見ると、ツリーハウスが、着々と進んでいる。

「結構、進んでいますね!棟上式には、お餅を撒くんですか? コウジ」


短いコメントを入れた。

すると、だいぶしてから、メールが届いた。


みなさんお元気で、ご活躍されていることと存じます。


その後は、いかがお過ごしでしょうか?


私どももやっと、長年の夢であった『ツリーハウス』に取り掛かっています。

まだ、床板が揃いませんので、完成までにはもう少し掛かります。


そうそう、光介君も元気そうですよ。


モテモテも辛いそうですが、なったことがないからその気持ちが判りませんな。(笑)


ブログ開設の折には、お知らせ下さい。


では、ごきげんよう


インディゴ・ブルーのおじさんより



「教えるんだよな? 白ヒゲのおじさんにも」


「どうする? もうちょっと、体制整ってからにするか?」


「でも、田園調布のスポンサーは、アドレスどうやって知ったの?」


「そら、検索でしょう、『森のキャラバン』って」


「どうして、今日アップするって、分かったと思う?」


「そら、毎日調べてたとか~」


「うぐっ!」言葉に詰まった。


「・・・俺たち、うんと活躍しなきゃ~な」


「おい、モテモテってどう辛いんだ?」


「知るか!」


そこへ、雪ネェが、一言いった。

「あのさ、瞑想してんだから、黙ってて!」

「・・・」


みんな、そろりそろりと席について、雪ネェの真似をした。


だいたい瞑想タイムは、四十五分ぐらいだそうだ。成っちゃんが、『新約聖書』の本を開いてひざの上に乗せたままにしていた。


「どうして、そうやってんのさ」

「なんか、こうやる方が上手く行く気がして・・・」

「ふ~ん」

何人かは真似をした。

光の波動って難しいもんだ。 

そこで、考えたことを順番に言うことになった。

 

「どうだった?」


「う~ん、我想う故に我あり。自分が思ったからこそ、自分がいるのかな?」


と、スンちゃん。


「本当に、スンちゃんが、そう思ったの?」

ゴロスケが思わず言った。


「じゃあ、雪ネェ」

「神さまは、芸術家よね~、ありとあらゆる物をデザインして創ったのよね~」


「うん、模範解答だな~、はい次」


「僕はとても偉大なる作家だと感じた」


「コウジ、その心は?」


「だって、本に『すべては物語である』って書いてあるから」


「な~るほど~」


「それに、いろんな人間の運命や、国の運命なんかを編み出しているんだろう?」


「・・・まあ、その筋書きは、人間じゃとてもとても思い浮かばないや」


「そういう、ゴロスケは?」


「う、んまぁ、ちょっと昔話をアレンジしていた」


「どんな?」


「昔、昔あるところにお爺さんとお婆さんが住んでいました。

お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に・・・、」


「そんで?」


「お爺さんは、よそ様の土地に不法に侵入したって、逮捕されました。

お婆さんは、河川の汚染の現行犯で、通報で駆けつけた警察官によって厳重注意されました」


「じゃあ~、終わりじゃん」


「桃はどうした」


大下さんが、面白がって言った。


「そこへ、大きな物が、どんぶらこっこ どんぶらこっこ と流れて来ました」


「・・・」


「しかし、コンクリートの土手にテトラポットで、傷だらけになって、見るかげもありません。

鑑識を呼んで調べました」


「桃ダロウ!」

みんなが、叫んだ。


「あ、ばれちゃったか」

「だいたい、ゴロスケの考えてることは、分かるよ」


何か、瞑想も、ブログも大変そうだけど、大丈夫かなぁ?

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