表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森のキャラバン  作者: 森のキャラバン
14/53

きっこう苑とインディゴブルーのおじさんたち

必死の思いで、おじさんの畑へ、

もう一方も大下さんと成っちゃんは、春ちゃんのお骨を引き取りに…

M駅には、十時半頃着いて、ロータリーに駐車した。


「スンちゃん、バッチリじゃん」


「ああ・・・まあね」


スンちゃんはじっとり、汗をかいていた。


しばらくすると、青い四駆の軽乗用車が止まって、

見覚えのある白いヒゲのおじさんがいた。

ブティックの経営者だけに、ハンチング帽を被ってる、おしゃれだ。


「やぁ、あと、I県からね、若い有能な・・・方がね、見えるの」


若い有能なで、雪ネェが上機嫌だ。

悪かったね~僕ら無能で・・・。

しばしそんな雰囲気だった。


ローカル線は、本数がビックリするほど少ない。

待つ間、コウジがおじさんに畑の話を聞いていた。


「なんか、広大な畑じゃ~、なさそう」


気弱に報告した。

僕らを使って貰うには人数が多過ぎ。


「そうだなぁ、海につき出た岬じゃぁ、土地も狭かろう」

それぞれ、バイトでも探さなきゃ。


「改札口から、人が出て来だした。列車が着いたらしいよ~」


そして、彼らしい人が登場した。

本当に、若い。

有能なとは言え、どう見ても学生…に見えた。

雪ネェは押し黙っている。


「紹介しよう~、こちら、治療師でもある光介君」

iPodで音楽を聴いていて、イヤホンを外した。

「初めまして~」


「そして、こちらキャンピングカーで、全国を周っている旅人集団の雪ネェ・・・たち」


「どうぞ、よろしく~」

雪ネェが、愛嬌を振りまく。


「その他大勢です、よろしくお願いしまぁす~♪」

ゴロスケがへこまずに言った。


光介君は、キャンピングカーに釘付けになった。

魅せられたようだ。


「へ~、これで 寝てんの? 」


「けど、背中痛いよ」

ゴロスケが率直に感想を述べた。


「一晩、ここで寝ていい?」


「いいよ~、どうぞ~。入りなよ」


ゴロスケがドアを開けると、光介君が駆け上がった。


「へ~、トイレもシャワーもあるんだ~」


「緊急な時以外、使ってないけどね」


「何で?」


「満タン寸前で、使った者が、洗うルールだから・・・」


「なぁるほど~」

「運転してみる~?」

「え! いいの?」

光介君が喜んだ。


と言うことで、光介君がハンドルを握り、ゴロスケが手でバッチリのポーズを作った。

これで運転手が確保できた。


「それじゃぁ、行きましょうか? 」

白ヒゲのおじさんの車について行く。


急な坂、ヘヤピンカーブを、どんどん走って行き、僕らは余裕で窓からの景色に見入った。

石屋さんが目立った。


海の見える高台、絶景のポイントに畑があった。

それもすごい急斜面。

車を停めて、畑に向かった。

きっこう苑と木の看板が立ててある。


「う~ん、ここじゃ、ペンキが斜めに垂れる」

雪ネェがぶつぶつ独り言を言う。


コンテナを運ぶ、プチモノレールのレールがさび付いていて、農家が、昔は盛んだったみかん作りを手放して、長い時間が過ぎたのだった。


そのレールをまたいで、カラスノエンドウの茂った畑に着いた。


「これはね、湯がいてお浸しにして、食べれるんだよ」


「へぇ~」

雪ネェがちぎって食べてみる。


「ん~、ルッコラに味が似てる~」


「ルッコラって何?」

ゴロスケがコウジに訊く。


「さ~、ハーブの一種か?」


ツボスミレ、タンポポ、ヒヨコ草、土筆、ぺんぺん草、フキ、

オオイヌフグリ、それになぜか、アップルミント。


「雨水をここに貯めて」

と古いユニットバスを指した。


「中に金魚を飼って、ボウフラがわいたら食べて貰う・・・、毒が入ったら金魚が死ぬから分かるしね」

お茶を飲むのは、ペットボトル入りの水を買って来て、ガスコンロで沸かすらしい。


「ふ~ん」

雪ネェが感心している。


スチール製の物置を開けて、座布団を出してイスの上に敷いてくれた。


スンちゃんは、光介君を見た。

さっきからずっと、眩しげに海を眺めている。

色白で黒曜石のような真っ黒い瞳だ。


「君は、畑には、興味はないの?」


光介君は、肩をすくめた。


「僕はド田舎に住んでるんだぜ、畑と田んぼばっかりさ」


「そっか!」


「でも、海は珍しい。海なし県だからさ。きれいな青だな」


スンちゃんも、海を眺めた。


「同感!」


そうっと、聞いてみた、

「さっき何の音楽聴いてたの?」


「ああ、これ?」


イヤホンを貸してくれたので、聞いてみた。


「ああ、これ?懐かしいな~一時期、流行っもんね。『ジンギスカン』・・・」


スンちゃんが笑顔になった。



白ヒゲのおじさんが、向こうでしゃべってる。


「まだ、みかんが成っているんだよ。あっ、鳥が食ってる。これも駄目か、ああこれはいける。無農薬だから、この前来た娘が、八朔の皮を刻んで、漬物の彩りに入れてるって。みかんは、実が少なくなってきたから、味が濃いんだよ~」


確かに、潮風に当たる場所のみかんは甘くて美味しいのだ。


高枝バサミを持ってきて、高い木のみかんを切った。

みかんは、ポトンと落ちて、斜面をバウンドして、転がり落ちた。


「あ~あ、行っちゃった。じゃあ~僕が坂の下で受け止めるよ」

ゴロスケが下に回った。


斜面のみかん畑での、みかん狩りは、何と二人掛かりだ。

一人が木に登って、左手でつかまって、右手でハサミで切る。もう一人が、下で待ち構えてキャッチしてカゴに入れる。


「昔の人は、木のソリみたいな『 木馬(きんま) 』で駆け下りて運んだ。

そう、それでみんなが、農業で食べて行けた時代にはね~」


そうして、食えなくなって、放置した。

その土地に、興味を持った、都会から来た人が素人的にやってみた。プロの農家は農薬を使う。

隣に農薬を使っていると、こちらにも農薬が掛かる。


こちらが農薬を使わないでいると、虫がわくと言われるので、仕方なく使う。

隣接していると、わずらわしい。

ここは、放置されていたから、農薬を使わないグループばっかりの4人ほどがやっている。


「あと一人欲しいな~手が回らないよ」


いえ、いえ一人と言わず、何人でも・・・。


「農薬って、本当は、薬じゃないよね。消毒っていうけど、消すんじゃなくって、撒く毒だよね~。字で誤魔化されてる気がするなぁ~。九州の水俣病は、窒素の肥料を作るのになんで、そんなに体に悪いものが出るのだろうと不思議だったなぁ~」

雪ネェが言った。


窒素、カリウム、リンこの三つで植物を育てる養分はまかなえると教えられた。

しかし、いろいろと不具合が生まれた。

病気や、害虫が発生し、消毒薬を撒いた。

すると、それに耐えうる害虫が生まれた。


農家は自分たち家族が食べる野菜は農薬をあまり使わず、出荷用の野菜には、農薬を結構使う。

消費者が、本当にいい物を作る農家を支えて、賢い選択して行くという変革がの時代だ。


新しく農業をやりたい人は、リタイヤ組みがほとんどだ。

オープンエアーの手作りの応接セットがあり、テーブルを囲んで、畑仲間と語らい、ビールを飲み、バーベキューパーティーもできる。『こころまい広場』と看板があった。


夏は、はるか向こうの花火大会が見える。


「昔は、ハンモックも吊って寝たりしたんだけど、蚊にいっぱい刺されてね~」

おじさんが言った。


「女性陣は、寒いから畑に出て来ないんだよ。今はホッタラカシ状態だな」

だから、アップルミントがあるんだ。


白ヒゲのおじさんは、斜面を指差して言った。


「畑の上の方にジャガイモを植えたんだ」

「へぇ~」

雪ネェがドンドン登って行く。


「土がふっか ふか~」

何度も踏みしめた。


「あっ、そこにジャガイモ植えたんだ」


「ひゃぁ~」


雪ネェは、慌てて、飛びのいた。


ゴロスケが、その上を指差した。


「すっげぇ~、荒れ野だなぁ~」


「あの荒地、開拓しませんか?」

コウジが切り出した。


「ああ、あれはね~、自然農ジネンノウといって、無耕作農法を実験的にやってるんだ。何年か放っとくと、いい土になる。これでもれっきとした畑なんだよ」


「へぇ~! あれが、畑」

よく見ると、境界線に自然農と書いた木の札があった。


「じゃぁ、僕らは用なしだね」

コウジは、雪ネェに言った。


「ここじゃ、ペイントは無理だし。第一、平行線が引けない」


雪ネェは、軽く笑った。


「じゃぁ畑は、この辺にして、パノラマでも見ましょうか?」


僕らは、畑を後にして、また移動した。



☆☆☆




一方は、世間体を気にし、散骨にしたい家族。

もう一方は、仲間から心を込めて見送られようとする散骨。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ