交信?
成っちゃん、やっぱり死んだみたいだよ。
メンバーの中に不安が広がります。
♪ もろ人 こぞりて うたえまつれ~
温泉の銭湯へ来て、ロッカーの中で、携帯が、珍しく鳴った。
大下さんのだ。
「へ~、大下さんの着歌、クリスマスソングなんだ~」
ゴロスケが妙に感心した。
「コウジ、一年中、クリスマスだね」
ゴロスケの好きな曲らしい、顔が笑っている。
♪ 主はきませり~ 主はきませり~
主は~ 主は~ き・ま・せ・り~
当の本人は、悦にいった顔で、湯舟に浸かっている。
「大下さんて、女みたいに長風呂ですね~。ここの湯熱いのに・・・」
「なにせ、源泉から、100メーターの銭湯…だもんね」
その女の雪ネェは、とっくに上がって、腰に手を当て、コーヒー牛乳を飲んでいた。
「大下さん、電話~」
「おう!」
せっかく寛いでいたのに、湯舟から出て、服を着て、電話をしに外で出た。
重要な用件らしく、真顔になって、大下さんが帰ると、みんな風呂からあがらせた。
そして、キャラバン号は、急きょ海辺の道の駅へ向かった。
「最終便に間にあえば・・・」
「ハ?」
「成っちゃん、二人で東京へ行くぞ!」
成っちゃんは、リックを握り締めた。
それで、用意はできた。
「コウジ、財布預けとく、留守にするけど、みんなを頼むぞ」
「何日、行くの」
「分からない」
「え~、これから僕たち何すればいいの~?」
「好きにしろ」
シャトルバスに乗って、最寄りの駅へ向かった。
「え・え~」
「♪そして、僕らは どうすればいいの~♪。」
雪ネェも、替え歌をうたった。
「これから、どうすんのさ~」
と、心配性のスンちゃん。
「寝よう!」
と、雪ネェ。
そりゃ、そうだ。
もう夜だし・・・。
「そうだな、それしかないか・・・」
が、しかし、寝られる訳がない。
それから、30分後にコウジの携帯が鳴った。
「はい、もしもし…」
「あ~、僕だよ、成山だよ。今、電車の中。大変だよ」
「成山って、成っちゃんか?」
「そうだよ、知らなかった?」
「いや、うすうす知ってたけど」
「まぁいいや、そんなことより、春ちゃんがさ~」
泣いていた。
「心中…してたんだって、三人で…七輪…エェッ ウッ ウッ…」
言葉にならない。
「あ、トンネルだ」
の言葉を最後に、成っちゃんの携帯が、不通になった。
「もしも~し」
残された、4人は
「どうなってるのさ」
「どうすんのさ」
で、心配で眠れなくなった。
その時、春ちゃんも内心、驚いていた。
ほんまに?
僕が? 心中するなんてウソだろう。
覚えているのは、おじさんが、森の奥深くまで、進んで、車を止めて、
サイドブレーキを引いた。
静寂の中…。
彼女が咳き込んで、風邪を引いたのかな~? と思っていると前から、
おじさんに薬を渡された。
春ちゃんにも、渡そうとしたので、
「僕は、風邪を引いてないから…」
と、断った。
「そうか、じゃあ」
松井さんはそう言いながら、缶ビールをプシューと開け、しばらくしてから渡した。
「飲め」
少々、威圧的だな~と思ったが、素直に頂いた。
「あんがと」
そんなビールって気分でもないけど、まあいいや。
彼女が、春ちゃんの肩にコトンと頭を乗せよりかかった。
しあわせ~。
多分、春ちゃんが生まれて初めて、この上ない至福を味わった。
春ちゃんが動くと、寝ている彼女を起こしてしまうから、そのままじっとしていた。
それで、記憶は終わり。
ってイッカンの終わり?
突然、超能力に目覚め、体を抜けて、幽体離脱の能力を授かったんだと思いたいけど。
キッカケは、あのビールに何かを入れられたかも知れないで。
そう思いたいのは山々だったけど。
ボクは死んだらしい。
本当に死んだんだ。
ボクは自殺じゃない、あれは、事故だ。
というより、殺人事件だ。
と、叫ぼうにも、後のまつりだった。
「七輪なんて、いつ火をつけたんだろう。気がつかなかったぞ・・・」
成っちゃんが、つぶやいた。
「なんだ、何か言ったか?」
と大下さん。
「・・・」
成っちゃんは、唖然としていた。
「ええ~?」
そして、成っちゃんは、自分で自分のことを、とても驚いていた。
ボクの中に、春ちゃんがいる~。
電車は、トンネルが続いて、すぐ切れた。しかも電車の中は、電話禁止だ。
だから、残された4人は、成ちゃんの電話で事情を呑み込むのと、大下さんが帰るのを、待つしかなかった。
雨の日も、風の日も・・・、
いくら観光地の道の駅の広~い駐車場でも、キャンピングカーがいつまでもあると、目立つ・・・気がする。
地元にほとんどお金を落とさず、ゴミだけを捨てて行く・・・そんな目で睨まれている気がする。
「♪遊んでいるわけじゃないのよ、僕らは~ウォウ オ~
これでも、仕事よ~ ウォウ オ~♪」
雪ネェがギターをつま弾く。替え歌が天才的にうまい!
毎日、優雅なお風呂にも入った。
コーヒー豆が切れそうだ。
食パンも切れて、お米はあってもおかずが無いので、仕方なく毎日外食もした。
インドネシア料理に、お寿司、ご馳走だ。
コウジが会計係で、贅沢をしていては、悪い気がする。
節約すると、ゴロスケがデザートにヤマモモのソフトクリームを欲しがった。
子どもだな~。
よくよく事情の呑み込めないメンバーは、
ことと次第を理解して行きます。
大下さんのいないボクらは、
やって行けるのだろうか?




