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森のキャラバン  作者: 森のキャラバン
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これからのこと、もう少し考えないといけない。

大室山の山焼きは圧巻で、こんなイベントに出会えるなんて幸先がいいぞ。

「いいな~、キャンピングカーで、優雅に遊びに来れて~」




一般人の何気ない一言で、みんなはもっとメゲた。




仕事がない人には、遊ぶという言葉が嫌味に聞こえる。


仕事で忙しくなりたいもんだと思う。


そして仕事で、身を粉にして働いて、ヘトヘトになると、今度は、暇が欲しいと願う。何でも、ほどほどがいいのだ。




「雪ネェ、何か歌ってよ~」




「OK。一応、シートベルトして、ギター持つのかなぁ?


何だか、変!」




雪ネェは、山焼き会場に向かう道中、懐メロの『岬めぐり』、森山直太郎の『さくら』、いきものがかりの『SAKURA』一青窈の『ハナミズキ』を、


元気いっぱい歌ってくれた。




「何かさ、大下さんに気ぃ使ってか、フォークが多くね?」


スンちゃんが囁いた。


「うん。でもフォークって、元気が出るよね」


コウジもそう思った。




そしてだんだん、みんなのいつもの調子が出て来ると、場が和んで来て~、朝早かったし、次第に子守唄代わりに響き、みんな寝た。


運転手以外は・・・。






「河津桜を見に来る道路は渋滞にハマって、気の毒なぐらいだった。反対車線のこっちは順調! だった」


とは、大下さんの後日談だ。




山焼きの駐車場は満杯で、赤い鳥居が見えたので、近くまで行って、つまり参道に車を停めた。


それから、テクテク会場へ向かう。




「浅間神社? やっぱり火山系の神さんて、これなんだ~」


スンちゃんが興味深げにつぶやいた。




「祭神は大山祗神の長女のイワナガヒメで、富士山頂の祭紀であるコノハナサクヤヒメの姉に当たるんだよ!」




「ふ~ん」


しかし、みんなはあまり感心を示さない。


普通、こんなもんだろ。




「ひと山全部、ススキだそうだ。真ん中がへこんでいる」




「ウルトラマンの、怪獣ヒドラがここで生まれたんだって~!」


ゴロスケが得意げに言った。


しかし、「という~設定なんだって」と付け加えた。ガキっぽいことを言ってから空気を読んだらしい。




「昔は、茅葺屋根の家が多かったから、そのために栽培されたとか・・・カヤってああゆう草の総称だってさ」




ネット検索で、いくらでも情報が出て来る。




山裾の所々に油を撒いてあるから、十二時、そこに松明で点火する。


その時間までに、車が渋滞で大変だ。


道路の路肩に停めるもの、見たいのは山々だが、後ろがつかえて仕方なしに進むもの。大型バスが、路駐の車の性で、曲がり切れないでいる。


本当に自分のことさえ良ければ、他人のことはお構いなし・・・だなぁ。




黒い煙を上げながら、火が燃え始めた。


パチパチと音がして、燃えたところが黒く色が変わった。


広い面積だけど、風があるから燃え出しと早い。




やがて、上の方まで、全体に火が周ると、コンサートホールの演奏後、大勢の拍手のようなパチパチという音が聞こえた。




「お~」




みんなも、みごとに燃えてパチパチ手を叩く。


遠くの火なのに、顔まで熱い。




黒い竜巻が起こり、二つ三つ風で踊っていた。


燃えた黒い藁のようなゴミがそこら一面に落ちた。




「おお、燃えたか!」




帰ろうとして、振り向いた大下さんが、驚いた声で叫んだ。


「おー、富士山が見えるぞ!」




「え?」


「ウソ本当?」




ちょっと小高くなっているところで、みんなもマネして振り向くと、


遠くの方に真っ白な富士山が頭だけ見えた。




ワーキングプアーの連中は、レジャーなんかできない。


夢のまた夢。


だから、だから、富士山を拝めるなんて、思いもしなかった。




「感激だ~!」


思わずコウジは、拝んでしまった。


日本人だな~と、思う今日この頃・・・。




みんなが帰り始めて、車が空いてから移動することにしたが、キャンピングカーの周りは、ゴミだらけだった。


いいことばっかりではなかった。




「困るね~、観光客はさ~、地元にお金落とさないで、ゴミだけ落としやがんの。マナー悪いしね」


運営している管理人らしき人に、嫌味を言われた。




これ僕らのゴミじゃないんです~。


なんて言ったって始まらない。


だから言わない。


コウジたちは、黙々と拾った。




「大下さん、れっきとした仕事をしているつもりなんだけど、どうしても僕たちは、お気楽レジャーに見られてしまう。このキャンピングカーは、買ったまんまで、何だか平凡。自分たちが、何者で、何をしているのか?


一般の人に知らせるような、何かが欲しいです」


と、コウジが提案した。




「じゃあ、白い車の外装に、『森のキャラバン』のロゴタイプを入れるか? 」


大下さんが言うと、


「した方がいいと思います」


コウジは、答えた。




雪ネェがその後の言葉を継いだ。




「掛川に、宮城まり子さんの『ねむの木こども美術館』ができたの。


2007年オープン。『どんぐり』って言うんだけど、いつか、その絵を見たいと思ってた。もし、そこを通るのであれば、ぜひ、その子たちに車のボディに絵を描いて貰えるよう頼んだらいいんじゃないの?」




「それ、いいと思う。先に、僕たちが、全部白で塗ってから、子供たちにペイントして貰うんだ。そして、『森のキャラバン』って文字を入れる。


そしたら、その看板に責任を持ってハタラク!(ことができるよう・・・願いを込めて)」




自分を追い込む意味でも、いいアイディアだ。


こう言っちゃ失礼かも知れないけど、知恵遅れの子供たちの絵は、純真で癒される。


今、全国展開で、そういう人たちの絵をTシャツにしたり、


イラストレーターとして正統な評価をされ、ギャラを貰えたりし始めていると聞く。


知恵遅れの人の絵としてじゃなく、アーチストとしての絵。自立への道ができるし、その人の生命が輝き出す。


ここは、その先駆けだ。




「そりゃいいけど、ギャラは・・・高くないかな~?」


スンちゃんが、心配そうに言った。






「その時になって、分かることだよ。どうなんだろうか? って心配してもしょうがないじゃん」


雪ネェが言った。




「外観から入るのもいいけど、お金使うばっかりだ、俺たち」


そりゃ~、成果は上がっていない。




「いいよ、分かったよ! そんなお金勿体ないから、自分たちで車体に絵を描けばいいんでしょ!」


むくれる雪ネェ。




「どうせ、芸術にお金なんか、かけるな。生活が大事っていうんでしょ!


でも、ココロにゆとりもないんじゃ~ね・・・つまんない惑星だよ!」


と来た。




「まず、竹薮に戻って、整備だ!整備。竹炭、竹炭!」




そう、僕らは地道な力仕事が待っている。


個性に関係なく、今日から、誰にでもできる仕事が。




「おい、竹薮に、一億円が落ちてたらどうする?」


ゴロスケが話題を変えた。




「残念でした~。よく調べたけど、そんなものは無かった」


雪ネェまだ、ご機嫌ナナメ。




「あの一億円拾った人さ~、こっちの海に落ちて死んだんだって。地元の人が言ってた」


「ひぇ、本当?」




それまでは、正直に生きた人だったと思う。


でも、朝のジョギングまで、テレビカメラに追っかけ回されて、大金を手にして、明らかに運が尽きた。




「ふ~ん。あのお金で、もっといい使い道をすれば、良かったのにね~」


と、雪ネェ。


「もっと、恵まれない子供たちに寄付をするとかね~」




「お金がないから言う訳でもないけど」


成っちゃんが言った。


「だからって、お金がはいったらおかしくなっちゃうかも知れないのは、お金持ちよりも貧乏な人の方らしい」




「それって、俺らのこと?」


ゴロスケのいつものジョーク。




「違うよ。どっかの発展途上国に学校や、井戸を・・・」


根は真面目だから、ジョークは通じない成っちゃん。




「あの、井戸もさ~、考えもんらしいぜ!


それまで大事に使ってた水源を簡単に引き出せるようになって、たちまち枯渇させてしまうってことだってあり得るんだぜ。


だから、援助も長い目で見ないとな。高木善之さんの講演なんか聞くと・・・」


「もう、あ~言えば、こう言う! スンちゃん」


不愉快になった。




「本当、マジな話。ODAで日本がダム造って、環境が悪化したから、自然をもとに戻せって訴えられてるんだぜ!」




「そのくらい、誰だって、知ってるよ~!」

知識のひけらしは、少しむかつく。



「つまり、大金は、大手ゼネコンに! 払うのは国民の税金。環境悪化で暮らせなくなる現地の人に残るのは、莫大な借金。巨大な建造物って必要ないってことだよ」




昔の巨大遺跡が残っているところは、その建造物の建築の性で自然が破壊された。


「だから人が住めなくなって、滅びたんだ」


「じゃあ、カンボジアのアンコールワットはどうよ! ジャングルに飲み込まれてるぜ~」




内心うんざりしていた。


おかしい、言っている方向は、同じなのに、バトル。


敵対しているみたいに聞こえる。




人がしゃべっている話の腰を折るからだ。


すると勝った気になる。


こういう議論は不毛だ。




知の優越感って、生かせてこそ意義がある。


人をやり込めて、何が楽しい?




何だか、このチームワークも怪しくなってきたぞ、とコウジは心配になった。




「世の中、おかしくね~?」




コウジが話題を変えようとした。




「昔の大金持ちは、みんなのためにお金を使ってたって聞いたぜ。だから、政治家なんか私財を投げ打って、民のために尽くしたもんだって」


そんな名家は、もう存在しないから、誰も知らない。




 和歌山の浜口梧陵さんの話は、災害からどうやって助かったか?


何もかも無くした民を、どうやって立ち直らせたか?


 私財を投げ打って、公共事業で防災の土手を築いたという。


過去にこんな素晴らしい日本人が居たのかと思う。




なのに、今の政治家は自分の懐を肥やすことしかしない。


国がウソをいっている。


まっとうに、働けていたものが、食えなくなる。


新しく法律を改正する度、国民は生きる糧を失う。


みんなが、貧乏になってるのに、日本政府がアメリカ国債買うから、


間接的にお金が戦争に使われてしまう。


下手をしたら、アメリカみたいに、貧乏な人は戦争に行かなければいけなくなる。そうして、割を食う僕らみたいなのが生まれる」




「重いよ~。コウジ」


ゴロスケが遮った。




「ごめん・・・」




でも、重くても真実に目をそむけるべきではない。




「だから、夢が必要なんだって! だから芸術なんだって! 分からない?」


雪ネェがつぶやいた。




「思考をワープして夢の国へ旅しなきゃ、生きて行けないじゃない・・・」




僕たちは・・・だてにネット難民になっちゃいない。


アクセスしてどんな情報も手に入る。


ゲームに明け暮れてるだけ、なんかじゃない。


僕たちはちゃんと知っているんだ。『


蟻の町のマリア』の話や、『マザーテレサ』の話、だけど、力がなかったんだ。






竹薮の残りの仕事が、たくさんあった。




不思議なもので、遊んだあとの仕事は楽しい。


食べて寝て、起きて働いて、腕の筋肉が付いて来た・・・気がする。


かれこれ三日、黙々と働いた。


炭焼き炉は・・・、地元の板金屋さんが廃材で作った。




ドラム缶の大きさで、素晴らしく頑丈にできている。


それの三分の一ぐらいに、鉄の柵の棚があった。


「いや~、立派~、立派。想定外ら~」


コウジは「アレッ」と思った。




確か、ネットで調べたのは、オイル缶で、


そんな棚は書いてなかった。


大きな穴を掘ってもらって、ドラム缶の周りを埋めた。


しかし、これは、煙突は抜けない、しっかり溶接されていた。


こうなるとやり方も変わってくる。




煙突の天辺を見上げた。あれに、蓋を被せようか・・・。




「なんか、金属のフタとかないですか~?」




「ああ、あるよ、あっち」


半分、土に埋まったゴミ箱があった。




コウジは、灰色のよくあるタイプのゴミ箱を拾って来た。




「汚いなぁ~」


それには聞こえない振りして、こう言った。




「竹炭になると、それ半分以下になるんだって~」




上段に入る長さにカットした古い竹を入れた。




「四センチ程短めに切るんだよ!」


「ああ、分かったよ」




向こうに持って行くと、チェーンソーの係りのおじさんがいて、一瞬にしてカットしてくれる。


しかし、そんな几帳面に切れる分けがない。


縦によく割れる。




「あれ? 入んないじゃん」




ドラム缶の上の開いた口から、突き出ているのを、引き抜いてカットしてもらう。


随分いい加減だ。




「こんなに割れてて、大丈夫なのかな~?」


スンちゃん。




「いいのよ、どうせ畑に撒くんだから・・・」


アバウトな雪ネェ。




「まぁ、いいっか」


で、どんどん詰め込んだ。




ドラム缶の分が焼けたら、次の分も山積みに用意した。


手伝う人が増えてきて、作業がはかどった。


取り敢えず取り敢えず、竹を詰め込んで火を点けて、土で覆って、


煙突に蓋をかぶせて、2・3時間・・・」


コウジが説明した。




「何言ってるだ、下に薪を入れて燃やすだよ、決まってるだろ」


地元のおじさんが、どんどん一番下から薪を燃やす。


白い煙がいっぱい出てきた。


一応土で囲ってるから、火事にはならない。




ゲホッツ ゲホッツ


コウジは、木の枝で、エントツにゴミ箱を被せてフタをした。


プリントアウトした資料は、どこに行ったのか・・・誰も知らない。


コウジは、天板にも土を盛った。




「何するだ」


「これはこうで、いいんですぅ!」


自信がないが言い切った。




「オシッ これで待てばいい」




地元の小学生も学校が終わって帰ってきた。


人がいるので、何事かと人が集まる。


見物人にぐるりと取り囲まれて、騒がしい。




「何してんの?焚き火?」




「竹炭を作ってる」




「ウソー、本当?」




「賭けるか!」


と、ゴロスケ。


子供に賭けさせてどうする。




「ワ~」


ウケて笑っている。




「確か、次の日、堀り出すんだよ」




「ふ~ん。見に来ていい?」




「ああ、来な」


東京もんらしく、かっこ良く言った。




「じゃあ、またね~、おっちゃん!」




「おっちゃん!」




言われた成っちゃんは、大下さんの方を向いた。


離れて黙々と竹を運んでいた。


サマになってる。


仕事をしているとはああゆうことなんだ。


コウジはハッキリと違いを感じた。


僕らのって、遊び半分、仕事人に見えないのだ。




次の日、ドラム缶を開けると・・・、底に灰がたまっていた。


炭という形のある物体はなかった。




「あう~」




「無い!」




「やっぱりな~、枯れた竹は、焼いても灰になるだけだ・・・知らなかった?」




地元のおじさんが事もなげに言った。




ゲゲッ 


「早く言ってよ~」




「やる前に知っていたら、やらなかった・・・だろうて」


それからは、寡黙な作業が永遠と思うほど、続いた。


腰も痛いし、手もごつくなる。汗もぐっじょりかいた。






「・・・でも、まぁいっか! ここら辺のうっとうしいのが、乗りで片付いたから」




「次のも、灰にしようぜ~!」




焼くのは楽しい。


キャンプファイヤーも大好きだ。




火の周りに人が集まる。


いつの頃からか、縄文時代からかな。




竹薮に、さわやかな風が吹いた。


随分、きれいになったもんだ。




「京都の嵐山の嵯峨野みたいや~」


雪ネェが関西風に言った。




「修善寺みたいら~」


地元のオヤジが、言った。





遊んだあとは、しっかり仕事だ。

やっぱONとOFFって、いいよな。

こうでなきゃ、人生、生きてるって気がしないよね。

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