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えるむんど28  作者: ソウメンマン
1/4

驚きのルナシティー!



時は201x年とある青年に襲った悲劇の出来事。

彼の名前はショウタ28歳、某証券会社勤務、中学生の頃から付き合っていた大好きだった彼女が9年前に血液の病気で亡くなってからはその彼女のことを忘れられず独り者、それからは何も信じなくなり天体観測と釣りと酒の日々だ。仕事も鬱病と診断されて月に一度しか行かない、仕事は家でできる仕事の部署に居たからだ。

ある初夏の日曜日、山奥で一人渓流釣りをしていて足を滑らせ滝から落ちた。



「あれっ!ここどこやねん、なんやこの部屋。わけわからん、すいませーん。」


そこはベッドとティッシュ以外何もない真っ白な小さな部屋。

ショウタは小さな扉を開けようとすると。ドアが空いた、自分より少し若そうな桜柄のワンピースを着た茶髪の美女がいた。

「ここどこですか?」

とショウタは尋ねると。


「初めまして、体の調子はいかがですか?ショウタさん担当の相談員のシルビアです、ではさっそくついてきてください。」


「シルビアさん、ちょと待った!どこですここ?」


「月の裏側の地下ルナシティーです。まぁついてきたら分かりますから心配しないでください。」

わけもわからずとりあえずついて行くと病院の廊下みたいなところを通り、もうひとつドアを開けると、人も多いく騒がしいそこは市役所みたいな場所だった。


そして丸テーブルに着くと、

「どうぞ、おかけになって下さい。」

2人対面でパイプ椅子に座ると。

「まだお気づきになってないようなので言いますがここは地球で亡くなられた方の案内所です。」


「えっ俺死んだって事ですか?!まだ28歳ですよ!」

驚いたて目が点になって開いた口が塞がらないまま固まった。

「早死はよくある事ですよ、安心してください、一応天国と地獄とかいろいろなコースがあるのでこうしてあなたに合ったライフスタイルに合わせて案内したり、今後のそこでの生活での支援を行うのが私たち相談員の仕事です。」

そう言いながら書類とパンフレット3枚を机に置いた、1枚はシルビアさんが万年筆で何か書いていた。

「あなたには、このコースをおすすめします。」

と言って、「スピカ星!ようこそ地獄へ毎日生き生きハッピーライフ!」と書かれているテーマパークのようなパンフレットを渡してきた。

「これって悪いことした人が行くところじゃないんですか?」

「みんなそう言われますけど、地獄の皆さん楽しそうにしていますよ、なのでとてもおすすめします。」

じゃあ天国はどんなとこやねんと思い。

「フリル星、ふわふわ低重力!天国へようこそまったり癒しのスローライフ!」と書かれたパンフレットを手に取り目を通した。

「天国じゃダメなんですか?」


「行けますけどあなたにはおすすめしません。」


そういうことか。

そう思い胸に手を当てて過去の悪事を思い出して反省していると。


「そういう事じゃないですよ、あなたには合ってないだけですから、それに天国の方が法律や規則が厳しくてあなたにはおすすめしません。」

自信ありげにそう言っていたので勝手に想像して勝手に納得していた。

「じゃあこの契約書にサインと母印をお願いします。地獄なので禁止事項はとくにありません。」

流されやすいのですぐにサインと母印をした。

「じゃあこれからあなたのパスポートとお金を渡します。」

そう言ってパスポートと数字だけが彫られた無機質な金貨5枚と銀貨30枚を渡してきた。

「今からあなたの家に案内します。」

そう言って転送課という看板のところに着いて行き、部屋に入ると棺桶みたいな箱が並んでるところに来た。そこの部屋にはガタイのいいアフロヘアーの40代ぐらいの男性が工具を持って箱をいじっていた。その人にとりあえず英語で挨拶をしたら。その男性が握手してきた。

「よろしく、君が例の子か、僕は転送課の課長のモーゼェスだ、さっそくこの箱に入ってくれるかな、すぐに送れるから。」


「どうやって送るんですか!それとどうやって月まで僕が来たんですか?」

モーゼェスが待ってましたと言わんばかりにこう言った。


「あなたは一度死にましたよね?そこで肉体から解放されて宇宙に漂い出したあなたの魂の源を量子のもつれを利用してルナシティーに引っ張って来て、それからあなたの体を復元した、ちなみに今までの体を強化している、試しにスクワットでもしたら分かりやすい。」

科学が好きでワクワクしてきたので思いっきりスクワットをしてみた。


「20.21.23.24.」

「あっ疲れないです、凄いな!」

モーゼェスが腕を組みながらうんうんと首を縦にをふっている。

「目も良くなっているだろ。」


「確かにシルビアさんがめっちゃ美人に見えます。透視とかは出来ないんですか?」

とアメリカンジョークのつもりで言うと、シルビアさんが白い目で見てくる。


「頭も良くしてもらわないとな。」

モーゼェスが笑いながら言った。


シルビアさんが呆れた顔で。

「損傷しているところと言語野とか限られたところしか手を加えることが出来ない決まりよ、また最初から体を作るの大変なのよ、それにもう一度死んでもらうわよ!」

もう一度死ぬのが嫌なので首を横に振り。

「ありがとうございます、これでいいです、最高です。」

「ちなみにどうやって送るのですか?」


そう聞くとモーゼェスが宇宙の地図らしい物を出して来て。

「送るときはまた量子もつれを利用して一度量子レベルまで分解してから箱の中で生体情報を解析してスピカ星に置いてある箱まで送り、箱で体を再構築する。そういう仕組みだ、同じ天の川銀河のこの辺だ、ちょうどオリオン座の方のこのスピカって書いてある所だ、これはそのための転送箱だ。」


「まぁしっかり届けるからまずは箱に入ってくれ。」


「一度バラバラになるって事はまた死ぬんじゃないですか?」



「その心配は無用だ光よりも速いスピードなので一瞬だぞ、バラバラになった事にまず気づけない。」


気づく気付かないの問題なのかと思っていると、

モーゼェスが箱のフタを開けてくれた。もっとモーゼェスに聞きたい事があったがシルビアさんが隣の箱に入っていた。つられて自分も入ってみた。

「行き先の詳細はどこだー?」」

とモーゼェスが聞いてきたらシルビアさんが、「スピカ星のエリア15の地獄町の西側の入り口の近くで。」というと。


「さらば青年。」とモーゼェスが言うと。

箱に振動が来て、「ゴォー」という音がした。


すぐに箱が開けられた。するとそこはさっき居た場所とは違う場所にきていた。シルビアさんと二人きり、箱もさっき入った箱と明らかに違う「触るな危険!」と書いてある。雰囲気は今まで生きてきた世界となんら変わらないところに来ていた。街の入り口の横の林の横にいた。少し歩くと町の入り口にハロウィンの時みたいな鬼の仮装をしているおじさんがいた。


「ようこそ通行料銀貨1枚をお払いください。」

さっきポケットに入れた銀貨を一枚渡すとおじさんが嬉しそうに、「良い出会いを祈ります。」っと言い、

「元祖地獄湯巡りツアー50%割引」と書いてあるチラシを渡して街に消えていった。


シルビアさんが。「通行料なんて聞いたことないですよ。あの人は地獄ツーリストの営業ですね。この地獄町の旅行会社ではとても評判良いんですよ。洗礼だと思ってください。」と笑っていた。


さっそく騙された。さすが地獄、サラリーマンが平気で詐欺をする。

さっき貰ったから良いもののあのおじさんには驚いた。

でも元祖地獄湯巡りツアーには行ってみたい。

シルビアさんについて行くとすぐに街に入った。そこは大阪の新世界みたいなところで人で賑わっていた、たくさんの店があり、美味しい匂いが充満して、感覚では半日くらいご飯を食べてなかったのでお腹が鳴った。

それを察してシルビアが

「どこかで食事でもします?おすすめの串カツ屋があるのでどうですか?」


「あー串カツ久しぶりに食べたいな、行きます。」


串カツ赤鬼という看板の店に入るとスタッフは2人共豆まきの時のお面を被っていた。

そしてカウンターに座るとメニューとビールの大ジョッキが出てきた。

地獄のサービスに感心していると「かんぱーい。」とシルビアさんが嬉しそうに言ってきたので、乾杯した。

おそらく夏なんだろう、暑いのでとても美味しかった。それにこんな美味しいビールを飲んだことない!

メニューを見るとセットメニューしか無い、しかもどのコースも銀貨2枚。

彼女は「赤鬼拷問串カツセットで。」

と物騒なものを頼んだが見た感じ普通の繁盛している串カツ屋、まさか拷問されて串カツにされたりしないだろうと思い、「同じのを!」と頼んだ。

ビールを飲み終わるとスタッフがすぐに大ジョッキを持ってきた。


「これってサービスですか?」


「はい!何杯でもどうぞ。」


するとシルビアさんは、「言ったでしょ、地獄は政府や規則や法律がないって、お酒やタバコは地球ではほとんど税金で高いけどね、ここは税金なんて支配者の物価コントロールに都合のいいものないわ、ビールなんて水より安いからね!」


半分聞いていなかったことを言ったでしょと言いながら爪楊枝入れみたいなものからタバコを取って置いてあるマッチに火をつけた。

タバコもただみたいだ。一応店長にタバコ貰っていいですかとたずねてみると。

「どうぞどうぞ、にいちゃん律儀やねーさては地獄町に来てまもないな?」

店長はそう言いながらマッチで火をつけてくれた。


「ありがとうございます!さっき来たところです!あれっなんだこのタバコ?」


「そのタバコはここの名産品の漢方タバコで体にとても良いですよ。」


「はいこれもサービス、人の指串5本セット!」

ショウタの顔は真っ青になった。


横でシルビアさんが腹を抱えて笑っている。


「ウインナー、それウインナーだから、ハハッ、あー面白い、これだからこの街好きなのよ。」


たぶん彼女は酔っている。顔も赤いし、さっきまでの仕事モードじゃ無い。


「へいお待ち赤鬼拷問セット!」

と串カツを出してくれた。

10品くらいの串カツが盛り合わせになっている。

さっそく食べるととても美味しい、ビールによく合う。ふと、となりのシルビアさんをみるとタレに二度付けしてる!

「二度付ありなん?」ときくと。


「あなた頭固いわね!仏の顔も三度までってしらないの!ここは地獄が売りよ、あなたは地獄に堕ちたの!この星では好き勝手自由に生きて良いの。警察も政治家もいないし、もちろん軍隊なんて野蛮な組織ないわ!地球では出来ないあんなことやこんなこともして良いの、若いあなたには理想のところなのよ。この星のチョイスは間違っていないわ。そんなことより食べないと全部私がたべるわよ!ビールおかわりー!」


彼女が本性を表してきたので決意した、彼女を今後さん付けで呼ばないということを。

「わかった。シルビア感謝する、ひとつ気になるんやけどこの銀貨って1枚千円ぐらいの価値やと思って良いよな?」


「そうそう、だいたいそんなもんよ。」


「じゃあこの金貨はどれくらいなんや?」


「銀貨30枚ぐらいよ。両替屋が一応あるからそこで変えてもらうのが一番よ、もちろん造幣局もあったけど金や銀を掘る鉱山の採算が合わなくなり今はないからお金の価値そのものはあまり変化しないからね。仕事はたくさんあるからたまに働いたら博打をしない限り好きなことして暮らせるからね。ビールおかわりー!」


「でもそれだと金貨や銀貨を誰かがたくさん貯めていたら流通量が減ってお金の需要が高まり、お金の価値はあがるよな?だって紙を印刷したお金がないんだろ。」


「そうね、デフレになるって言いたいのね。でもよく考えてみて。この星人口は1億人もいないのよ。」


「そうか!まったく金や銀が取れないわけではないという事はデフレになると同時に貴金属価値も上がりまた鉱山や造幣局の採算が取れてまたお金の流通量が上がりインフレになりお金の価値が下がり、みんなそれを知っているからあまり貯金をしないということか!」


「それだけじゃないわ、警察がないのよ、誰もお金持ちにはなろうとしないわ。食料もふんだんにあるし気候もいい、服さえ着ていりゃなんとでも暮らせるわ。人は明日の不安を感じて貯金するものよ。」


「天国やん!」


「みんなそう言ってるでしょ、病気もしないし、歳もとらないし、怪我なら次の日には大体治っているわ。」


「楽しみだな、乾杯!」


「あっでもひとつ大事なこと、磁場の影響で子供は作りにくいわ!絶対じゃないけどね、まぁここで子孫繁栄されたらいろいろと困るらしいのよ。」」


「まぢかー!」


「あなた契約書にサインするとき読まなかったの、あの下の方にかいてあったでしょ。ここ!」

シルビアがバックから契約書とルーペを出して指をさした。


「なになに、注意事項1 本地獄で子供を作らないでください。1つだけか、もっととんでもないこと書いてあるんか思ったわ。」


「ここは地獄よ、当たり前よ!天国って呼ばれている他の星だったら六法全書並みに注意事項や禁止事項があるわ。なのにあんなに人気なのは理解出来ないわ、所詮は天国地獄なんて個人の考えようよ。」


「俺はもっと理解出来んわ、どんなとこか知らんし。」


「知らない方がいいことも世の中いっぱいあるのよ。ここは違うけどね。」



「じゃあシルビアの本当の歳って何歳なん?」


「ブスッ!」


「痛い!串で刺すなよ!めっちゃ血出てるやんけ。」


「バカショウタ!すぐに治るわ。」


シルビアは串かつの串をショウタの太ももに刺した。赤鬼の面を被った店長があわてて絆創膏をもってきてくれた。「お姉さん飲みすぎ、店の中で危ないことしないでください!あかん全然血止まらんわ。おーいガムテープ持ってきてくれ!」


シルビアはビールを飲みながらブツブツと


「年齢なんてただの数字、女性に歳聞くなんて失礼よ、バチがあたったのよ。変態!」


女性とこんなに話すなんて10年ぶりだ、そんなこと言われても仕方ない。

そして本物の鬼は酔ったシルビアなのではないかと思った。






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