偶像
『あなた本当に人間?』
この言葉を聞いた瞬間辺りが無音に変わり
視界が真っ暗になったような感覚がした
僕は
『なんで そんなこと聞くの?』
と動揺気味に 彼女に尋ねた
すると、凪は
『別に、私は昔から鼻が良くて あなたからは
少し 異様な匂いがしただけ。 変なこときいて
申し訳なかったわ。』
と細々と言った
『異様な匂い?』
前に鬼化したことが原因なのか なんなのか
今の僕には検討もつかなかった
凪は
前の事件の詳細を知りたくても 辺りの警察じゃなにも答えてくれないし 子供なんてまず相手にして貰えないと言っていた
沈黙が続く中 凪は口を開き
『この街の古くからの言い伝えなんだけど この街には鬼の末裔がいたとかで 今 天狗が住む天昇山には そのことを示した 塔の核という石碑のようなものがあるらしいわ』
と 言った
あまりに凶暴な天狗には 数人の大人たちでも太刀打ちが出来ず天昇山には近づくものはいなかったという
だが 今の僕には迷って立ちすくんでいる時間もなかった
僕は 天昇山にいき鬼の謎を解き明かすことを決心し 伝えた。
すると凪は表情が変わり
『馬鹿なこと言わないでよ!あなたがどこの誰だか知らないけど 無茶だわ!死にに行くようなものよ』
と言った
呼吸が荒くなっており 血の気が引いたような表情になっていることは見てわかるものだった。
『俺は それでも行かなければいけない
俺は故郷も捨てて 信用も捨てて
今ここに立っているんだ。』
と言い放つと
凪は
『あなた本物の馬鹿ね。あなたがどこの誰だかしらないし あなたの生はどうでもいいけど
私も親友に起きたことをちゃんと自分の目で確かめて寄り添ってあげたい...』
『私も行くわ。』
その言葉を聞いた時僕は 込み上げる嬉しさとは違う 何かを 身体全体で感じていた。