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パンパン

「理解できません。なぜ私があの無礼な女と食事を共にしなければならないのですか」

 ユリアは白金色の眉を大きくひそめた。もとが可憐な美少女なだけに、不機嫌な印象がいっそう強まって、竜仁のグラスハートにボディブローのようなダメージを与える。


「でもせっかく誘ってくれたんだしさ。どうせ暇だろう?」

 さもなければ竜仁の所になど居座るわけがない。そう思ったのだが、ユリアはいたく心外そうだった。

「馬鹿な、やるべきことならば山のようにあります。どれだけ時間があっても足りないほどです」


「じゃあさっさとやればいいじゃないか。僕に遠慮する必要なんてないから」

「分りました。では早速」

 ずずいとユリアが体を寄せた。竜仁は危険を感じて下がろうとした。だが間に合わない。巧妙に床に引き込まれ、すかさず腰の上にまたがられる。


「待ってユリア、駄目だよ、僕まだ心の準備がっ」

「体が熱くなれば心は後からついてきます。大丈夫、私が導いて差し上げますので、我が君は思い切り動いてください」

 少女の引き締まった臀部が、催促するように重さを加えた。


「ほら、ちゃんと腰を突き上げて。そんなふうにへなへなでは、私はいつまでたっても満足できません。それともずっとこうして私の下に敷かれているのがお望みですか?」

「今は休みたいんだ。また夜には君がいいって言うまで頑張るからさ、それでいいだろう?」


「えいっ」

「おふっ」

 ユリアは股に力を込めた。竜仁をぐいぐいと締め付ける。


「私は今してほしいのです。まずは十回でいいです。私のお腹の奥に響くぐらい、力強くパンパンと打ちつけてください……が、もしどうしてもできないというのならやむを得ません。僭越ながらお仕置きをさせていただきます」


 竜仁の背中はぞくぞくと震えた。ユリアは間違いなく本気だ。きっと竜仁が気を失うほど激しく責め立てるだろう。だが苦痛の予感に怯える一方で、どこかでそれを期待している自分もいた。体を虐めることで得られる気持ち良さもある。ユリアと出逢うまでは知らなかった感覚だった。竜仁の身心は、年下の美少女により急速に変えられてしまったらしい。


 だが抱き人形になったわけではない。ずっと受けのままではいられない。竜仁は己の中心を固く強張らせた。力をこめて十分に体を撓め、次の瞬間思い切り跳ね上げた。

 パンッ。


「あっ」

 竜仁の動きが予想外に鋭かったのか、ユリアが切なげな声を洩らした。だがこんなのはまだまだ序の口だ。


 パンッ。

「んっ」

 パンッ。

「んんっ」


 自分の上にある柔らかくも引き締まった肢体を感じながら、竜仁はいきなり回転を上げた。

 パンパンッ。

「ひゃっ!?」


 ユリアが激しく反応する。竜仁と接している部分がずれ、位置を直そうと下半身が小刻みにうごめく。

「に、二連発……いつの間にそんな技を?」

 喘ぐような言葉が、竜仁をさらに煽った。これまでユリアには一方的にやられっぱなしだった。その仕返しとばかりにめちゃくちゃに激しくしても、悦ばせこそすれ恨まれる筋合いはないはずだ。


 パンパンッ。

「ん、またっ」

 パンパンッ、パンパンッ。

「はぁっ、はぁっ」


 パンパンッ、パンパンッ。

「もっとっ、あともう少しっ!」

 パパパンッ。

「あぁっ、それはっ!」


 竜仁は自分に残る全てを放ちきった。そのままくたりと床にへたり込む。鉛でも詰め込まれたみたいに体が怠い。打ち止めだった。もう一発とねだられてももう出せない。

「すごく、よかったです……素敵でした」

 軽く息を切らせたユリアが、竜仁の首筋を優しく撫でてくれた。どうやら期待以上に満足させられたらしい。


 しかし我ながら無茶をした。

 腕立て伏せの体勢から、腕の力でジャンプするように上体を浮かせ、胸の前で手を打ち合わせる。普通に十回やるだけでも大変なのに、少女とはいえ人ひとりを背中に乗せてこなしたのだ。しかも途中からは二連打ち、最後に至っては三連打ちである。少し前の竜仁ではとても考えられない力業だった。さすがに自分の限界を超えていた。当分動けそうにない。


「さすがは我が君です。これなら本来の力を取り戻す時も間近、やがては宿願たる悪しき竜の討滅も叶うでしょう。そのためにも早速次の十回、いや三十回、いやいっそ切りよく百回と参りましょう。さあ、いざ!」

 ユリアは屍のようになった竜仁の身を引き起こし、きらきらとしたまなざしを向けた。

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