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そうさバイアグラ100%

作者: たぬきんぐ


小学生の時家出を繰り返した。

母親はその度に怒り,しかし眠る頃には帰ってきてくれてよかった…とベッドで抱きしめてくれた。

その優しさは涙が出る程嬉しかったが,繰り返すたびに優しさに慣れてしまった。そのうちにこの人がどこまで抱きしめ続けてくれるのか試したくなった。

そして私の愛情をためす実験が始まった。

まず中学校に行かなくなった。だるいからという理由で休む私を母は叱った。誰にも必要とされてない気がする…と言うと,母は首を振り,頭をなででくれた。気分がよくなって学校に通うようになった。

高校に上がってからは,何かと怒り狂うようになった。何にも怒っていないけど,全てを指さして母親のせいにするようになった。意味がわからない,おかしくなったと言われることが増えた。母親は初めのうちは怒っていたが,次第に黙ってそうかもしれないねとうなずくようになった。

大学に行き始めた。表彰されるような成績を修めてから無断で中退した。母親は悲しんだが静かに笑っていた。なんかこの実験には果てがないような気がしてつまらなくなってきた。こうなったのもお前のせいだと叫んでおいた。母親はまた静かに笑っていた。

社会人にはならずにコンビニでアルバイトをして時間を潰すようにした。母親にはもちろん一銭も与えない。廃棄のおにぎりだけを晩ごはんだよと膝に落とす。母はあまり笑わなくなっていた。もう何年も怒られていない。

同じ生活を4年間続けたのち,母親が死んだ。あーあとつぶやいた。

家にひとりになった。母親が遺した手紙を広げた。

「小さい頃何度おうちを飛び出しても自力で帰ってきた○○だから,今は先が見えなくてもきっと自分で道を切り開いていけるよ。」

涙があふれてきた。大好きなお母さん。涙を流しながら,ようやく実験が完了したと思った。こんな自分は狂っている。

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