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35・賢者の弟子

 聞けば、フェニックスの皆様が燃やしてしまったのは飼い犬・撫子なでしこだけではありませんでした。


「昨年遺跡に迷い込んできたところを罠を掛けて仕留めた魔物の毛皮もあったな。おれは全身棘で覆われているニードルラットと呼ばれるレア物だったのに。それから、撫子の排泄物も溜めていた。後は……」

「後は?」

「……御令嬢には、大人になるまで縁のないことだ」


 レバニラ様は気まずそうに私から目を逸らします。そんな後悔でいっぱいの顔をなさらなくても、私免疫はございますわ。


「レバニラ様。所蔵されているご愛読書の中に、チョコラティエーヌ・パッフェンという名の作家の作品はございまして?」

「な、なぜ、そんな名を……」


 慌てふためくレバニラ様。どうやら、お母様は男性向けのものもお書きだったようですね。


「んふふ。ルーツポンチの屋敷に戻りましたら実家に連絡して、新作を送ってもらえるよう手配いたしますわ。作者にはちゃんとサインを入れてもらえるようお願いしておきますから、どうかお楽しみになさってくださいまし!」


 レバニラ様は喜んでいいのか悪いのか分からなくなったらしく、目を白黒させています。賢者の癖に弄りがいのあるお方ですわね。ここでの滞在も楽しくなりそうで何よりです。


「って、そんな物はどうでも良くないが、他にも大切な物があったのだ!」

「まだ他にも? 大切なものはあんなところに放置せずに、きちんと片付けておいた方が賢明でしてよ?」

「何を言う。放置し続けてこそ価値が高まるものは世の中にはまだまだあるのだ」


 まだまだあるって、レバニラ様は放置プレイがお好きなのでしょうか。こんなところで変な性癖をチラ見させられても、ノリの良い返しが思いつきませんわ!


「もしかして、薬草ですか? 燃やすと芳しくなった穴があったのです」


 とりあえず私は予想を述べてみました。


「その通りだ! あれはかれこれ十年前から熟成させていたもので、しかも素材はわざわざ森の奥地まで危険を犯して取りに行ったものばかり。後少しで完成するはずだったのに、何てことしてくれたんだ!」


 十年前……まだ私は庭で木登りをして庭師に叱られていた頃ですわ。そして、すでにあの頃にはココアの汗シャツ集めは日常化していましたわね。そういえば、オクラ王子のシャツ、私どこへ仕舞ったかしら。ココアに渡すと話しておいたから、マスタードさんあたりが気を利かせて実家に送ってくれていたら良いのですが。


「こら! 何をぼーっとしておる! ティラミス嬢、いや、もう私の共同研究開発者であり弟子でもあるのだから……ティラミス! よく聞け!」

「は、はいっ!?」


 私、いつの間に賢者の弟子になっていたのですか?! これ以上変な二つ名は要りません。はい、そこ、カプチーノ! すかさず今の言葉をメモらないで!


「このエビチリ遺跡よりもさらに東、パエリアダンジョンという場所がある。そこのボス部屋をクリアするとドロップするのが魔晶石の種だ」

「魔晶石?」

「あぁ。この遺跡にはまだまだ開かずの部屋が数多くある。私はその中に、魔術の根幹となる魔法陣についてのヒントが隠されていると見ているのだ。だが、それらの部屋には鍵がかかっていて、遺跡内で見つけた文献によると鍵は魔晶石で作られたものでなければ開かないそうだ」

「なるほど」

「魔晶石の種は、大量の魔力を注ぎ込むと成長し、魔晶石をたくさん実らせるらしい。これは魔術研究の重大な使命なのだ。できるな?ティラミス!」


 ん? 魔晶石の重要性については理解できましたが、薬草のことと関係無いような気がいたします。


「あの……」

「何だ」

「その私達が燃やしてしまった薬草って、結局何のためのものだったのですか?」

「そ、そんなもの気にするでない! さっさと出発しろ! ちなみに、今回はティラミス一人で行けとメレンゲの姫が言っておったぞ。言う通りにしないとあのハイキックを私が食らうことになるから、ちゃんと一人で行ってくれ!」


 なーんだ。メレンゲ様の差金ですか。つまり、これは私の修行第二弾?! ダンジョンという言葉の正確な意味も分からない私に果たしてクリアできるような課題なのでしょうか?


「レバニラ様、せめてモモちゃんは同行させてください」

「そんなチビ竜だったら、いても居なくても同じだろう。許可する」


 モモちゃんは前足を器用に使ってレバニラ様へあっかんべをしました。


 では、バベキュ様達には申し訳ないけれど、私の不在の間この遺跡の清掃をお願いしておきましょう。では、カプチーノはどうしましょうか?


「カプチーノ、レバニラ様のお食事や身の回りのお世話をお願いね」

「かしこまりました、ティラミス様。できましたら、お帰りの際には腹下しに効きそうな薬草をたくさん摘んでお戻りいただければ幸いです」

「そんなこと、心得ておりましてよ? では、レバニラ様、いってきまーす!」


 モモちゃんと仲良く部屋を出ていくと、後ろからはレバニラ様の「見捨てないでくれー」という悲鳴が聞こえてきました。うふふ。モモちゃんを扱き下ろした仕返しなのです。カプチーノは料理音痴というよりも味音痴ですからね。是非とも、あの悪趣味な味のフルオーケストラをお楽しみいただきたいと存じます。



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