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33・くださいませ!

このまま地面が抜け落ちたらどういたしましょう?!私は真っ青になって後ずさりしましたが、地震のような振動はすぐに収まり、看板が上にのし上がってきたかと思うとその下に巨大な石筒が現れました。正面には金属の扉らしきものがついていて、頑丈な錠もかけられています。


「何か出てくるかもしれない!」


ジビエが私を守るようにして前へ出ると、扉の前に立ちはだかります。ほぼ全員が息を飲んで、次に起こることを待ち構え始めた三秒後。


「おぉ、よく来た、よく来た。待っておったぞ!」


声がした方を振り向くと、森の奥の方から小柄な人が歩いてきたではありませんか。古の時代の伝説や絵本の世界に出てくる『獣人』のように、頭から手足に至るまで全身毛むくじゃらです。なのに、王都の貴族邸に出入りする商人が仕立てたかのような上質な服を纏っていました。何なの、このアンバランス感!


「もしかして、貴方様がレバニラ様でいらっしゃいますか?」

「いかにも。メレンゲ姫から石板で連絡があった故、まだかまだかと待っておったのだ。ん?それにしても大所帯で来たものだな。なんだ、ソーバのガキまでいるじゃないか」


ソーバをガキ扱いするなんて。私の中で、理由も無くレバニラ様をきちんと大物扱いすることが決定いたしました。ソーバは、フンッと鼻を鳴らして不貞腐れています。どうやら、かなり馴染みがあるらしいですね。


「それにしても、皆顔色が悪い。どうれ、新薬の被験者にでもなってもらおうかの」

「って、ちょっと待て!」


ようやく突っ飲みが入りました。ポークさんです。


「レバニラさんだったか?僕達は看板の通りに六つの穴にチャレンジしたんだ。なのに、なぜどの穴にもあなたは居なかったんだ?!」


その通りです。私なんて、賢者とは地中で生活する多足動物かもしれないと想像していました。もし、日光が苦手だとか言い出しても、決して指を差して笑わないようにしなければ!と心に決めておりましたのに。


「運のある者は会えると書いておっただろうに。そして、あの穴の中に私がいるとは一切書いていない。最近の若者はますます頭が悪くなっているようだな」


レバニラ様は怒りのあまり言葉も出せずに震えている『ジューシー』を気にもせず、ひとしきり高笑い。あまりにも笑いが長いので、バベキュ様が咳払いするとようやく我に返ったようでした。


「話があるのだろう?私からも話があるのだ。ついて来い」








歩いたのは十五分ぐらいでしたでしょうか?か弱い箱入り令嬢である私には少々長い距離でしたので、途中で空飛ぶ絨毯号に乗ろうか乗るまいか迷いつつ、何とかレバニラ様の住処に到着することができました。


そうですね。これは屋敷ではなく、住処すみかなのです。

何しろ、天然記念物ばりに巨大な一枚岩の下方に頑丈な金属扉が取り付けられているというもの。外見の雰囲気は砦や蛮族のねぐらに近いものがあります。


入ると、中は普通の建物になっておりました。よくある貴族の屋敷のように上階まで吹き抜けの広いエントランスホールがあり、天井は王都にある神殿のように半球状になっていて、腕の良い職人による業と思われる細かな装飾がびっしりと刻まれています。ただ、床は絨毯ではなく石なので、歩くとコツコツと音が響きました。窓がない分少し薄暗く、あらゆるところに燭台やカンテラがあるようです。


私達は二階にあったとても広い部屋に通されました。私の仲間達は総勢十三名。これだけの人数が入っても、まだまだ余裕がある程にだだっ広いのです。部屋の中には円筒形の立派な柱が何箇所にもありますから、元は複数の部屋だったのをぶち抜いているのかもしれませんね。


「まぁ、掛けてくれ。と言いたいところだが、客なんて日頃来ないものだから椅子なんて無くてな。だが、ちょうど良さそうなものはたくさんあるだろう?適当に座ってくれ。でも、潰すなよ」


私はキョロキョロ見渡して、椅子代わりになりそうなものを探しました。家の中にも関わらず、ここには植物が乱雑に床から生えていて、その隙間を縫うように岩や木箱、埃の積もった本、妙な形の金属片などが散らばり、要するに汚いのです。


「ティラミス様、どうぞこちらに!」


見るとカプチーノが手招きしていました。椅子ぐらいの高さの岩を見つけて、その上に大きなハンカチを敷いてくれています。珍しく侍女らしい仕事をされると調子が狂いますね。


「ありがとう」


そう言って座ると、部屋の最奥にあった執務机と思われる所にレバニラ様が登っているのが見えました。なんてお行儀が悪いのでしょう!


レバニラ様は机の上のガラクタを押しのけてスペースを作ると、そこにスクっと立ち上がります。


「ようこそ、エビチリ遺跡へ!ここは古代魔法が眠るからくり屋敷であり、今は私の住処である。まずは用向きを聞こうかな?ティラミス嬢」


名前を呼ばれた途端、急に背筋が伸びました。それ程に、レバニラ様の声には凄みがあったのです。私はカプチーノが用意した椅子代わりの岩から腰を上げました。


「まずは改めまして……お初にお目にかかります。私はパーフェ家当主ガトー・フォン・パーフェの娘でティラミスと申します。この度は急なおとないにも関わらず過分なお出迎えをありがとう存じます」


ちょっぴり嫌味を言ってしまいました。


「私ティラミスは、将来パーフェ家を継ぐ当主の候補となりました。当初は長子であるカカオが継ぐ予定でしたが事情がございまして……。そこで、私は父に当主としての器を見せつける必要が出てまいりました」

「だいたいの話はメレンゲの姫から聞いている」

「左様でございますか。では単刀直入にお願い申し上げます」


私は、ぐっと握った拳に力を入れました。いつもならば、低身低頭で依頼するところ。でも今の私は当主の卵としてここに立っているのです。堂々と胸を張って、決して隙を見せることがあってはなりません。例え、相手が毛むくじゃらの大物だとしても!


「レバニラ様。古の魔法を復活させる研究の成果、全てこの私にくださいませ!」



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